軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

435 エルフの里 1

「そうだ。人間の街で暮らしている、若い……ロリババァ……エルフの女性達が、一度エルフの里に戻るらしい。定期報告、という名目で……」

「名目? じゃあ、本当の理由は別にあるのですか?」

そんな言い方をされれば、気になるのは当たり前である。なので勿論、素直なメーヴィスがギルドマスターの言葉に食い付いた。

そして……。

「ああ。何でも、お見合いらしい」

「「「「…………」」」」

「エルフの若奥様?」

「まだ、みんな独身だ!!」

マイルのボケに、律儀に突っ込むギルドマスター。

かなり訓練されてきたようである。

そして、前世の海里の両親のコレクションには、そんな本もあったのか……。

「とにかく、人間の街で暮らしているエルフは少ない。それも、未婚の女性となると、ごく僅かだ。

そして知っての通り、長命で温厚で思慮深いエルフ達は我々人間から尊敬されており、ドワーフを含めた『ヒト種』としての大切な同盟種族だ。それが里帰りの途中で、人間の領域内で何かあったとなれば、 大事(おおごと) だ。

……この意味は、分かるな?」

こくこくこく

「というわけだ。この依頼、受けてくれ」

まさか断らないよな、という圧力を掛けながら、そう言って『赤き誓い』を睨み付けるギルドマスター。

この依頼を断られでもしたら大変だと、必死なのであろう……。

「あの、この依頼はギルドマスターさんからの発注ですか?」

しかしそこで、マイルが『素朴な疑問』というような顔で、そう聞いてきた。

「いや、先方からの指名だが? いくら人間全体の 面子(メンツ) と信用が掛かっているとはいっても、どうして一介のギルドマスターが依頼料の負担や責任を負わなければならんのだ? 領主や国王でもあるまいし……」

「「「「ですよね~~!!」」」」

* *

ギルド支部からの帰り道。

「しかし、エルフ達の間にまで、私達『赤き誓い』の名が広まっているなんてね……」

「凄いですよね! この調子でどんどん知名度が上がれば、商会を設立した時に……」

「エルフに名が知られているとなると、騎士に取り立ててもらえる確率が上がるぞ! ありがたいことだ……」

「…………」

エルフからの御指名であると聞いて、喜ぶレーナ、ポーリン、メーヴィスの3人。

勿論、依頼は喜んで受注した。

少し首を捻るマイルはスルーして……。

(どうして、エルフから名指しで……。私達のことを知っていて、独身の、『エルフとしては』若い女性達……、って、あ!)

心当たりが、あった。

……些か、あり過ぎた……。

* *

「私達が、依頼主よ!」

「「「「出た!!」」」」

……そう、出発の日に待ち合わせ場所に現れたのは、勿論……。

「クーレレイア博士と……」

「エートゥルーと、シャラリルです。お久し振りですわね……」

「「「「……やっぱり!!」」」」

そう、『赤き誓い』には、女性エルフの知り合いなど、この3人しかいなかった。

「でも、エートゥルーさん達は、クーレレイア博士とは仲が悪かったのでは? どうして滞在している国から直接戻らずに、わざわざここに寄ってクーレレイア博士と一緒に?」

「「「…………」」」

マイルの疑問に、答える声はなかった。

不思議そうな顔のマイルに、ポーリンがちょいちょいと袖を引っ張って耳元で囁いた。

「……お金の節約じゃないでしょうか。護衛費用、安くはないですから……」

「あ!」

そう、ひとり1日当たり小金貨2枚として、4人で8枚。10日間だと、小金貨80枚。日本のお金で考えると、80万円相当である。貸し馬車や御者の料金も加えると、学者にとっては、決して安い金額ではない。少なくとも、ちっぽけなプライドを優先させる程度の、安い金額では……。

耳が人間より少し大きいことと、森で暮らすため聴覚が優れているエルフの3人には、小声であるつもりのポーリンの声は丸聞こえであった。そして、ぐぬぬ、と無念そうな顔をする3人のエルフ達のことはスルーして、さっさと歩き出すレーナ。

「行くわよ! 話は歩きながらでもできるでしょ」

そう、立ち止まったまま話す時間は、何のお金にもならない『無駄な時間』、『死に時間』である。そんな時間の浪費をするくらいなら、袋貼りの内職でもしていた方が、余程マシであった……。

* *

馬車屋で、予約をしていた馬車に乗り込んだ一行は、エルフの里へと向かった。

2頭立ての馬車を御者込みで雇ったものであり、勿論、支払いはエルフ達である。

これでエルフの里に近い街まで行き、そこからは徒歩で向かう。

別に里の場所が秘密というわけではないらしいが、あまり他の種族が入り込んで森を荒らされるのは好きではないらしく、森の中には馬車が通れるような道が整備されているわけではないらしいのである。

勿論、ハンターが里の近くで狩りや採取を行うことも厳禁らしい。

「……で、里を出て人間の街で暮らすことを禁止はされていないけれど、それをあまり快くは思っていない長老達がうるさいのよ……。そして定期的に里に戻って報告したり、男達との顔合わせをしたりしなきゃならない、って条件を呑まないと駄目で……。

顔合わせって言ったって、人間の街に較べてエルフの里はずっと人数が少ないから、周辺の集落の若い男達とは元々みんな顔見知りだってーの!」

馬車の中で、以前会った時と違って、何だか日本の女子高生のような話し方で今回の里帰りについての説明をするクーレレイア博士。

あの時は、博士の方も『受けた仕事を遂行中の、研究者』としての立場であったが、今はただの『護衛されているだけの、雇い主』なので、砕けた態度なのであろうか……。

しかし、若い少女のような喋り方をするクーレレイア博士の本当の年齢を何となく察している『赤き誓い』の面々は、微妙な顔をしている。

……いや、見た目からは、別に違和感はないのであるが。

見た目からは……。

「だから、研究成果とか真面目に暮らしているとかの報告をして、長老達を納得させたり 父様(とうさま) を安心させたりと、色々と大変なのよ……」

そう言いながら、怪しげな眼でマイルを見るクーレレイア博士。

そして、エートゥルーとシャラリルの眼が、怪しく光る……。

(((あ、コイツら……)))

何となく、今回の護衛が『赤き誓い』への指名依頼となった理由を察したレーナ、メーヴィス、ポーリンの3人。

そう、金銭的な問題の他にも、仲が良くないらしいクーレレイア博士とエートゥルー、シャラリルの3人が組んだ理由を……。

更に、おそらく指名依頼を絶対に断られないようにとギルドに圧力でも掛けたのであろうということも……。

「お父さんを安心させてあげるのは、大事なことですよね!」

そして、冴えている時と鈍い時との落差が極端な、マイルであった……。