軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

417 争奪戦 1

「どうもでした~!」

今日は、稀少な薬草の採取と、その途中で狩った小動物だけなので、裏の解体場ではなく、ギルド支部本館の買い取り窓口に納入した『赤き誓い』の4人。

薬草は、稀少なだけではなく、採取した後は急激に劣化するため、マイルの、収納魔法ということにしてあるアイテムボックス(時間経過なし)が使える『赤き誓い』は無敵であった。

一応、『引き揚げる寸前に発見した』、『氷魔法で冷却しながら全速で戻った』ということにしているが、完全に怪しまれている。

……まぁ、ハンターの能力を詮索するような者は、ギルド職員にもハンター仲間にもいるはずがないが。皆、自分の命と信用は大事にしたいであろうから……。

そして、『赤き誓い』が出口のドアへ向かおうとした時……。

かららん

お馴染み、ギルド統一規格のドアベルの音が鳴り……。

「あ!」

「あっ!」

「あああああっっ!」

「「「見つけたああああぁ~~っっ!!」」」

ギルド内に響き渡る、3つの叫び声。

そして……。

「ああっ、マルセラさん、モニカさん、オリアーナさん!!」

……そう、『赤き誓い』を追って東方へと旅立った『ワンダースリー』が、その足跡を追い、東方をぐるりと大回りして、今、戻ってきたのであった……。

* *

「何ですって! じゃあ、私達がここを出発した数日後に、戻ってきたと……。私達の苦難の旅は、いったい何だったのですかああああぁっっ!!」

マイルの話を聞いて、思わず淑女らしからぬ声を上げたマルセラと、がっくりと肩を落とすモニカとオリアーナ。

ハンターとしての様々な経験を積めたので、決して無駄な旅ではなかったことは、本人達にも分かってはいるのであるが、徒労感に襲われるのは仕方あるまい……。

「いえ、アデルさんに責任があるわけではないのは、充分分かっておりますわよ。……ただ、あのままもう数日待っていればせずに済んだ苦労だと思うと、思わず愚痴も溢れようというものですわ」

それは理解できる。なので、うんうんと頷くしかないマイル。

見れば、3人共、かなり薄汚れており、そして汗臭い。髪も、しばらく洗っていないのではないかと思われる。

「……髪も身体も服も、そんなにボロボロになられて……。苦労されたんですねぇ……」

思わずしんみりと、そう溢すマイルであるが……。

「いや、それで普通だろ!」

「旅の女性ハンターとしては、身綺麗にしている方だろう?」

「それでボロボロって言われたら、他の女性ハンターの立場がねぇよ!」

周りの男性ハンター達から、次々に上がる擁護の声。

「え? だって、私達は……、痛っ!」

ごつん、とレーナの 杖(スタッフ) が頭に当たり、言葉を途切らせたマイル。

見ると、レーナが怖い顔で睨んでいた。

「……ナ、ナンデモアリマセン……」

そう、旅や遠出の時にそんなに身綺麗にしていられるのは、『赤き誓い』だけである。

普通のパーティは、携帯式の浴室なんか持ち歩かない。

普通のパーティは、野外での温水シャワーなどという贅沢のために魔術師が魔力を使い果たすというような馬鹿なことはしない。

普通のパーティは、身体や衣服の清浄魔法など使えない。

普通のパーティは、替えの下着一式くらいしか着替えは持っていけない。背負える荷物には限りがあり、予備の武器、野営具、食料、医薬品、その他諸々で、余計なものを持つ余裕などない。

更に、魔術師がいないパーティは水も用意しなければならず、それがかなり荷物を圧迫する。

まだ、主要街道を通り宿屋で宿泊している『ワンダースリー』だから、これで済んでいるのである。お金に余裕がなかったり、狩猟や採取をしながら移動するため、森の中を進み野営する場合には、浮浪者同然の状態になることもある。

「ま、まぁ、続きは宿で……」

ギルドのど真ん中で、大声で話していては、さすがに問題がある。

そういうわけで、みんな揃って、レニーちゃんの宿へと移動するのであった……。

* *

「うむうむ、お客さんを連れてくるとは、なかなか感心ですね! 以後も、その調子で励むように!」

「何、偉そうなこと言ってるのよ!」

調子に乗ったレニーちゃんの言葉に、文句を言うレーナ。

まぁ、レニーちゃんも本気で言っているわけではなく、軽い冗談であろう。

マイルが、そう言ってレーナを宥めていると……。

「え、本気ですよ? 客引き、頑張って下さいよ?」

「本気かいっっ!!」

レニーちゃんの言葉に、さすがにドン引きのマイルであった……。

とにかく、マルセラ達が3人で部屋を取り、そのままみんなでその部屋へ。

「ええっ! ……って、言われてみれば、それもそうかも……」

部屋に入って、最初にレーナから『旅の途中でそんなに清潔にしていられるのは、「 赤き誓い(うち) 」だけだ』と言われ、驚きながらも、考えた末に納得したマイル。

マルセラ達は宿屋に泊まっていたとはいえ、着替えが下着一組しかないし、一日歩けば、埃まみれで汗だく大盛りである。

宿も、風呂があるわけではなく、洗面器の水を使いタオルで身体を拭うだけである。まだ、マルセラ達は魔法でいくらでも水を出せるし、少女なので髭が伸びるわけでもないから、それでも清潔な方なのである。

「そうですわよ! 学園にいた時のようにはいきませんわよ!」

少し顔を赤らめながら、そう言うマルセラ。どうやら、旅の間は『そういうもの』として割切っていたが、マイルに指摘されて、恥ずかしくなったようである。

そう、学園では3日に一度はお風呂に入れたし、水のシャワーであればいつでも使うことができた。

……水を汲む下働きの者に お駄賃(チップ) をかなり弾む必要があり、貧乏な者、つまり奨学金特待生であるオリアーナとかにはかなり厳しい金額であったが、何、そういう者は、自分で汲めば良いのである。井戸と浴室は、すぐ近くなのであるから……。

そういうわけで、マイル(アデル)は、マルセラ達3人には清浄魔法を教えていなかったのである。身体清浄魔法も、衣服清浄魔法も……。

まさか3人がハンターになって旅をするなどとは思ってもいなかったのだから、仕方ない。

「……って、そんなことはどうでもいいですわよ! 私達がここに来た目的を片付けなくては!」

そう、マルセラ達がわざわざ年若い少女達だけで他国まで旅してきたということは、何か余程の用件があるに決まっている。そう考え、真剣な表情でマルセラの言葉を待つ、『赤き誓い』の4人。

そして、マルセラの口から、その用件を伝える言葉が 紡(つむ) がれた。

「アデルさん、私達3人とパーティを組んで、今すぐ東方へ旅立ちますわよ! ここはブランデル王国に近すぎますから、危険ですわ! そして、4人で4~5年くらい、いえ、7~8年くらい、いえいえ、10年くらいは大丈夫ですわよね、それでもまだ、23歳ですから……。

とにかく、4人で人生を謳歌するのですわ! 帰国して、政略結婚をさせられるまでの、私達の短い『本当の、自分の人生』を……。

勿論、一緒に来てくださいますわよね、アデルさん!」

「アデル!」

「アデルちゃん!」

マルセラ達3人に次々に手を重ねられ、感激でうるうると瞳を潤ませるマイル。

「も、勿論……」

「「「ふざけんなああああぁ~~!!」」」

あの、温厚なメーヴィスまでもが、額に青筋を立てての激おこであった……。