軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

418 争奪戦 2

「ふざけたこと抜かしてんじゃないわよ!」

「寝言は、寝て言ってくださいね!」

「マイルは、『 赤き誓い(うち) 』のものだ。部外者は、口出ししないでくれ!」

レーナ達、激おこである。

(こ、これは……)

状況は修羅場であったが、マイルには、ここでみんなにどうしても言わなければならない言葉があった。

そして、意を決して、その言葉を口にするマイル。

「……やめて! みんな、私のために争わないで!!」

(やった! いつか言ってみたい台詞、第3位をこなした!! まさか、こんな 僥倖(ぎょうこう) に巡り合うことができるなんて……)

むふ~、と鼻息を立てて、満足そうな顔のマイル。

「「……」」

「「「「…………」」」」

「「「「「「………………」」」」」」

「「「「「「何、他人事みたいな顔してるのよ!!」」」」」」

……みんなに、思い切り怒られた……。

* *

「とにかく、あんた達は、ただの『昔の、学生時代の友人』であり、私達が『今の、就職先の同僚』よ。たまに会って、昔の話に興じて 親睦(しんぼく) を深めるのはいいけれど、賞味期限の切れたお友達ごっこは程々にしとかないと、みっともないわよ」

「うん、君達は、普通の学生が、マイルの指導で人並みに戦えるようになっただけだろう? 私達のように、元々その道を歩んでいた者がマイルの指導で更に飛躍的に戦闘能力を上げた、というのとはわけが違うよね?

オークやオーガくらいなら戦うことができても、獣人や魔族、 飛竜(ワイバーン) 、そして古竜と正面から戦うことができるかい?

……そう、マイルと一緒に戦うには、君達では力不足なんだよ……」

「子供の頃の、たまたま同じクラスだったというだけの理由で仲良くしていた、というだけの方達にいつまでも纏い付かれては、マイルちゃんにとって迷惑ですよ。マイルちゃんの足手纏いです」

「「「なっ……」」」

あまりにも辛辣な、レーナ、メーヴィス、そしてポーリンの言葉。

温厚であり、他者に対する心遣いを忘れないメーヴィスまでもが、かなり厳しい言葉を 紡(つむ) いでいる。

……しかし、それらは全て本当のことであり、マイルの、そしてマルセラ達の安全と将来を考えれば、相手のことを思い 遣(や) った、誠意ある言葉であった。

マイルからマルセラ達のことを聞いていたレーナ達は、マルセラ達が決して荒事向きで戦いが得意なタイプではないと知っていたし、他の選択肢がないレーナ達と違い、3人はそれぞれ、貴族家への嫁入り、商家への嫁入り、そして公職か貴族家の上級使用人等、そこそこの未来を手にすることができる。わざわざ、命を切り売りする底辺職であるハンターにならねばならぬ理由はない。

そして、『 赤き誓い(じぶんたち) 』より遥かに弱く、遥かに甘いマルセラ達と一緒に行動した場合、敵に情けを掛けすぎて、あるいはマルセラ達を人質に取られて、マイルが簡単に殺されてしまう可能性があった。

レーナ達は、自分が人質に取られて仲間が窮地に陥った場合、仲間達に迷惑を掛けないよう、さっさと自決する覚悟があった。

……しかし、甘ちゃんの貴族家や商家のお嬢様や、普通の村娘に、果たしてそのような覚悟があるのか……。

辛辣な言葉を叩き付けられたマルセラ達は、言葉に詰まった……りすることなく、言い返した。

「「「私達に、簡単に負けたくせに……」」」

「「「うっ……」」」

そう、『赤き誓い』と『ワンダースリー』が初めて会った時、マイルが『赤き誓い』側に加わっての4対3での戦いで、『赤き誓い』は『ワンダースリー』に完敗したのであった……。

いや、あれはエクランド学園の女子寮の室内であり、両隣や下の階の者に気付かれないよう、そして相手に怪我をさせたり室内や調度品を壊したりしないようにという、制約だらけの戦いであり、拘束魔法や肉体言語を用いての、言うなれば『キャットファイト』のようなものであった。

しかしそれでも、互いに条件は同じであり、『全力』ではないものの『本気』ではあったのだ。

それで、人数がひとり多い『赤き誓い』が完敗したのであるから、言い訳はできなかった。

何しろ、自分達はフルタイムの専業Cランクハンターであり、それが、年下である学園の女生徒3人に負けたのである。言い訳すればするほど、自分達の恥を晒すことになるだけであった。

「ぐぬぬ……」

「くっ……」

「うぬぬ……」

そのため、『ワンダースリー』の攻撃に、反論できないレーナ達。

「でも、皆さん、御家族が心配されているのでは……」

マイルが心配そうな顔でそう言ったが……。

「あら、私達は一応、アデルさんの無事を確認するためにモレーナ王女殿下の許可を得て行動しておりますのよ? 王族からの期待を背負うという、これ以上ないほどの名誉な任務中なのですから、家族達は皆、応援してくれておりますわよ? その任務が、なかなか子爵を発見できないために数年間に亘る長期任務になるだけのことですから、何も問題はありませんことよ? ほほほ!」

(((こっ、こいつら……)))

ここに至って、ようやく『ワンダースリー』の企みに気付いた『赤き誓い』の3人。

……もうひとり? マイルは、何も気付いていなかった……。

「それに、私達のことを心配されるなら、良い方法がありますよ? アデルちゃんが私達と一緒に行動し、危険のない簡単な依頼だけを受けるか、ハンターとしての仕事は資格を維持するのに必要な最低限のものだけにして、4人で小さなお店を開くとか……。

私達は、給金が国元の口座に自動的に貯まっていますし、マルセラさんもモニカさんも、御実家が裕福ですから帰国後のためにお金を貯める必要はありませんから、そんなに焦って大金を稼ぐ必要はありません。日々、楽しく暮らせるだけのお金が稼げれば充分なのですよ。

そちらの皆さんは、ランクアップのために、強い魔物相手の依頼とか、アデルちゃんが望まないであろう対人戦とか、そういった『危険な仕事』を受けて、アデルちゃんにもそれらをやらせるおつもりなのでしょう?」

「ぐっ……」

オリアーナの指摘に、これまた反論できない、レーナ達。

どうやら、口論ではマルセラとオリアーナに勝てそうにないと悟ったレーナ達は、最後の手段に出ることにした。

……早すぎである、『最後の手段』の出番が……。

「マイル! はっきり言ってやりなさい、『私は「赤き誓い」の一員として行動します』って!」

「え……」

突然自分に振られ、慌てるマイル。

メーヴィスとポーリンも、当然マイルは自分達を選ぶものと確信している眼で自分を見詰めている。

(あわ。あわわわわわわ……)

大切なお友達の、どちらかを選ぶ。

そんなことが、マイルにできるわけがない。

前世、今世を合わせて、初めての友達である、マルセラ達。

命を預け合った、レーナ達。

どちらも、大切な自分のお友達……。

(ど、どうすれば……)

そして、焦り、悩んだ末、マイルはとうとうひとつの言葉を絞り出した。

「お願い! みんな、私のために争わないで!!」

「「「「「「それは、もういいわよっ!!」」」」」」