軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

リベンジ

第五階層のフロアキーパーを退けた悠太にとって、次なる第六階層は未知の領域だった。

扉を潜った先に広がっていたのは、第五階層と同じような見渡す限りの草原地帯。

しかし、現れる魔物はこれまでの階層の敵が入り混じった「混成群」であり、その密度は一段階上の厳しさを見せていた。

既知の相手であることに変わりはない。悠太は冷静に罠を使い分け、確実に群れを間引いていった。

アイテムドロップ率が少し上がったのか、オークの斧や質の良いウルフの毛皮がいくつか手に入ったので、悠太はそれらを抱え馴染みのショップへと向かった。

「あ、甘露寺さん。いらっしゃいませ、今日もお疲れ様です」

瀬戸はカウンターから柔和な笑みを浮かべて出迎えてくれた。小柄な体格に、おっとりとした垂れ目の癒やし系。

相変わらずの丁寧な敬語はその穏やかな声を聞くだけで探索の緊張が解れるような不思議な安心感があった。

「これ、買い取ってくれるかな。それと、装備の修理も頼みたいんだ」

「はい、いいですよ。……あらあら、装備さんも頑張りましたね。たくさん傷がついて…」

買い取りの手続きを終え、口座残高を確認すると六十万円を超えていた。一般的に見れば大金だが、店に並ぶ最新装備はどれも目玉が飛び出るような価格。今は修理で凌ぐしかない。

瀬戸はボロボロになったリビングアーマー・レプリカと、スーパーネズミシューズを優しく台に並べると、「はぁっっ!」と顔に似合わない野太い掛け声と共に、魔法をかけるような素振りを見せた。

「はい、直りましたよ。怪我を治すように、真心を込めて『リペア』しました。お代は八万円におまけしておきます」

(あの一瞬で八万…か。すごく助かるけど、この仕事のほうが儲かるんじゃ……)

予想以上の金額に驚くも、一瞬で新品同様の輝きを取り戻した装備に、悠太は「いつも助かるよ、瀬戸さん」と礼を言い、店を後にした。

そして、あっという間に三週間が経過した。

決戦の日。

第六階層の最深部、フロアキーパーへと続く巨大な石扉の前。セーフティーゾーンに集まった如月、大輝、剛田、佐々木の四人は、三週間前とは見違えるほど精悍な気配を纏っていた。

「全員、準備はいいわね」

如月の問いに、各々が武器を手に取る。

この三週間、彼らは死に物狂いでガルーダ対策を練り上げてきたようだ。

大輝は空中戦の不利を克服するため、新スキル『跳躍』を取得。空を舞う怪鳥の懐へ飛び込む手段を手に入れた。

剛田は一撃の重みに耐えうるよう、物理防御のステータスを底上げし、文字通り鉄壁の盾へと進化した。

悠太は四人を真っ直ぐに見据え、静かに口を開いた。

「俺もこの三週間、スキルを磨いてきた。でも、前にも言った通り、俺のスキルには味方を巻き込むリスクがある。戦闘が始まったら、俺の動きと合図には注意を払ってほしい。特に『ウッルの目』発動時は絶対に俺を視界に入れないでくれ」

その真剣な声に、四人は表情を引き締めた。

「わかってる。お前の背中は、俺たちが死守してやるよ」

大輝がそう言うと、隣の剛田と共に一歩前へ出た。二人はそのまま、かつての傲慢さを微塵も感じさせない真摯な態度で、悠太に向かって深く頭を下げる。

「悠太、今までの言動を謝らせてくれ。俺たちは自分たちの力を過信して、お前の本質を見ようとしなかった。……お前の力を、俺たちは信じてる」

「俺もだ。からかって本当にすまなかった。……頼むぜ、甘露寺」

かつて悠太のスキルをハズレだと蔑み、ことあるごとに煽り立てていた者たちからの心からの謝罪。悠太は一瞬、眩しいものを見るように目を細めたが、すぐに柔らかい笑みを浮かべた。

「もう、気にしなくていいよ。みんなで勝とうぜ!」

如月、佐々木も力強く頷く。

五人の心が、この時初めて完全に一つに重なった。悠太は静かに一歩を踏み出し、冷たく重厚な石扉に両手をかけた。

「さぁ、行こう」

重低音を響かせ、巨大な扉がゆっくりと左右に開いていく。

その先で待ち構えるのは黄金の翼で空を支配し、侵入者を冷笑する怪鳥『ガルーダ』

孤独な罠使いが仲間と共に挑む運命のリベンジマッチが幕を開けた。