軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

罠コンボ

「まずは、見ててくれ」

悠太はそう短く告げると、草原を徘徊する数頭のグレーウルフへと歩み寄った。

彼らが普段、数秒の剣撃で片付ける雑魚敵。大輝たちは「何を今更」と言わんばかりの退屈そうな表情を隠さない。しかし、悠太が説明するようにスッと右手をグレーウルフに向けると、草原の空気が一変した。

飛びかかろうとした足元から、魔素の蔦が噴き出し、その四肢を次々と雁字搦めに縛り上げる。

「これが『スネア』。敵を捕まえる罠だ。有効時間はおよそ一分。……そして」

流れるような動作で、悠太は拘束され転がるグレーウルフを指差す。

「これが『バネ床』」

スネアから数秒後、拘束された地面から、ドォン!ドォン! という重低音とともに、巨大な質量が空中に跳ね上げられる。放り出されたグレーウルフ達は空中で体勢を崩し、スネアに拘束されつつ必死に手足をばたつかせる。

「そして、最後が『落とし穴』」

悠太が指さした着地点には、いつの間にか小さな水溜りが出来上がっていた。

空中に投げ出されたグレーウルフは、重力に従いその水溜りへ、スポスポと吸い込まれていく。音もなく、まるで泥濘に沈むように一瞬で巨躯が地中に消え、同時に水溜りの跡も霧のように霧散した。

あとに残されたのは平坦な草原と、ぽつんと転がる三つの魔石だけ。

「何が起きたんだ?」

剛田が呆然と声を漏らす。

大輝と佐々木も、どうなっているのか理解が追いつかないといった様子で、魔石が転がる地面を凝視していた。索敵から撃破、魔石の回収まで、十秒にも満たない完成された流れるようなコンボ。

敵の行動パターン、罠の位置に威力とタイミング、それらを平然と説明を交えながら淡々と行う。

それはこれまで散々繰り返してきた悠太の経験の賜物であった。

「……へっ! グレーウルフ三匹に、ずいぶん手間かけやがって」

大輝が絞り出すように毒づいた。驚きを隠すための強がりなのは、その頬がわずかに引きつっていることから見て取れた。

「次はこれ。『キューブ』」

悠太は大輝の挑発を無視し、近くにいた三頭のグレーウルフへと石を投げて注意を引いた。唸り声を上げながら突進してくる三頭。悠太は滑らかな動きで事前に設置しておいたポイントへと彼らを誘導する。

ウルフたちが特定のポイントへと到着した瞬間、虚空から透明な立方体が出現した。

三頭とも逃さず、その檻の中に閉じ込める。

逃げる間もなく檻に閉じ込められたウルフたちは、その中で狂ったように暴れるが、十数秒後にはキューブの縮小とともに光の粒子へと変わった。

しかし、最後の一体。

激しく暴れ回っていたその爪が、偶然にもキューブの構造的な弱点――クラックポイントを激しく突いた。パリン、と硝子が割れるような音が響き、びくともしていなかった檻は一瞬で無残にも破裂し、キラキラと霧散していく。

「ガアァッ!」

最後の一体は運良く脱出に成功し、そのまま林の奥へと逃げ去っていった。

「こんな感じで、力の大小に関係なくクラックポイントを突かれると案外脆いのが難点なんだ」

悠太が淡々と解説を付け加えると、それまで黙って見ていた剛田が声を上げた。

「おい、待て! その技……半透明な箱に閉じ込めて消すやつ。たしか第三階層で、俺たちの前を歩いてた謎の探索者が使ってたスキルだ……」

「あ! お前があの時の!?」

佐々木と大輝も、記憶の糸が繋がったように目を見開いた。

以前、自分たちの目の前で見たこともない戦い方をして去っていった凄腕探索者の記憶。

それが自分たちが散々見下してきた悠太の『罠スキル』だったという事実に、三人は衝撃を受けていた。

彼のスキルを理解し認めていた如月だけが、そんな光景を前に静かに微笑んでいた。

「今の連携、スキルの熟練度。キャンプの時に見せてくれた時より何倍も洗練されてる」

唖然とする三人をよそに、悠太は視線を上げ、林の深くを見つめた。

「最後の一つは、最近取得した新スキル。これがガルーダと戦うには一番有効だと思う。ここじゃできないから、場所を移動しよう」

課題となっている遠距離攻撃。

罠スキルの中で最も適しているのはやはり『ウッルの目』だ。

それを見せるための舞台として、悠太は身を隠す遮蔽物の多い、あの林へと彼らを誘った。