軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

火力変更

翌日。

悠太が第五階層へ入ると、装置の近くにちょっとした人だかりができていた。

「はい、オッケーです! 次の方行ってみましょう!」

何気なく覗き込むと、そこには派手な機材を抱えた一団がいた。最近勢いのある『ダンチューバー』の撮影チームだ。どうやら今日は探索の実況ではなく、覚醒者の職業を当てるクイズ企画を撮っているらしい。

「そこのあなた! 腰の剣、かなりの業物ですね? 職業は……『剣士』、それも上位職の『魔剣士』と見た! 正解は?」

「あ、はい、正解です」

剣士や弓使いなど、見た目で分かりやすい探索者が次々と当てられ、「誰でも分かるだろ」などとツッコミを入れながら、動画は盛り上がっている。魔法系に対しても「火か水か実演お願いします!」と派手な演出を求めていた。

そんな中、完全に一観客として端で見ていた悠太に、突如としてカメラとマイクが向けられた。

「おっと、そこの君! 装備はかなりの軽装だけど、そのシューズはネズミ?……ウルフの皮が編み込まれてる? 独特だねえ。君の職業、ズバリ当てちゃいましょう!」

派手な色のジャケットを着たダンチューバーが、マイクを突きつけてくる。

「見た目の身軽さからして、『シーフ』! あるいは敵のヘイトを買って逃げ回る『デコイ役』、もしくは味方を強化する『支援系』だね?」

「……いえ、違います」

デコイとは獲物や敵を誘い出すための囮のこと。一瞬「惜しい」と言いそうになったが、悠太が短く答えると、ダンチューバーは「おっと?」と大げさに目を見開いた。

「外れ? ほう、このプロの目をごまかすとは。じゃあ隠密特化の『アサシン』、あるいは身軽さを活かした『格闘家』……いや待てよ、実は重い武器を隠し持ってる『ウォリアー』とか?」

「いえ、全部違いますね」

「まじか! えー、じゃあなんだろう。 斥候職とか?」

「……特殊系です」

「特殊系か! これはまた、動画的に美味しいのが来ましたね!」

ダンチューバーはグイッとカメラを悠太に寄せさせた。

「特殊系ってことは、何か面白いスキルがあるはずだよね。ぜひ、ここでそのスキルを実演してくれないかな?」

「すみません、敵がいないと発動できないタイプなので。ここでは無理なんです」

悠太がやんわりと断ると、ダンチューバーは「あちゃー、残念!」と大げさに肩を落とし、視聴者に向かって叫んだ。

「皆さん聞きましたか! 敵がいないと見せられない秘奥義。いやあ、気になりますねえ! 残念ながら実演は叶いませんでしたが、今日は非常に珍しい特殊系の覚醒者くんに出会えました! これもダンジョンの醍醐味ですね!」

撮影が締めくくられ、人だかりが散り始めた頃、スタッフらしき男性が悠太に駆け寄ってきた。

「すみません、今のシーン、動画で使わせていただいても大丈夫ですか? 顔出しもオッケーなら、出演料も少しお支払いできますが」

悠太は少し考え、答えた。

「……動画の公開はいいですけど、顔出しはNGでお願いします」

「わかりました。では、首から上にモザイクを入れるか、上手く編集で隠させていただきますね。ご協力ありがとうございました」

(こういう仕事も面白そうだなぁ)

お礼として渡されたグレーウルフの魔石を手に、悠太はいつもの林へと向かった。

如月を見舞った後、悠太の胸には重いプレッシャーが居座っていた。

空の支配者『ガルーダ』

その影を払拭するためには、まず目の前の壁を超えなければならない。

第六階層へ進むための門番、第五階層のフロアキーパー『ジャイアントウルフ』だ。

通常のグレーウルフが体長二メートル前後なのに対し、ジャイアントウルフは四メートルを超える巨躯を誇る。同じタイプゆえに対策の目星は立てやすいが、そのパワー、スピード、耐久力は比較にならないほど跳ね上がる。

悠太はステータス画面を見つめ、現在の自分の状況を確認した。

地道な林でのレベル上げが功を奏し、最大魔素量は1163、スキルポイントは263まで蓄積されていた。

(次に取得するスキルは一択だ。目標の500ポイントまで、あと237。残り半分か)

新調したスーパーネズミシューズのグリップを利かせ、木々の間を縫いながらグレーウルフを翻弄する。

しばらく淡々と事務的な戦いを繰り返していると、またあの瞬間が訪れた。

脳内に響く無機質なシステム音。

『ウッルの目』Lv3

構築時間:150秒 → 120秒

発動時間:210秒 → 240秒

特殊効果:火力変更(NEW)

「火力変更?」

説明によると、火力変更とは設置する際に消費する魔素量に応じて瞳から射出される銃弾の威力を変えられるということのようだ。

現在の消費魔素は対象に関わらず『80』

消費する魔素を160にすれば威力も二倍になる。

「試したいけど、今日はここまでにするか」

魔素も残りわずか、心地よい疲労感と共に悠太は第五階層の転送装置へと戻った。