軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

23.悪役令嬢は舞台を見る

クラウディアは奥にあるものを見て、目を丸くした。

――舞台があったのだ。

文字どおりの舞台で、ステージがあり、赤い幕が引き上げられている。

「おもろっ」

早速リーウェイが駆け寄る。

クラウディアたちもあとに続いた。

先に着いたリーウェイは、許可を取ることもなくステージに上がり、舞台袖などを検めていく。

「うーん、さすがに人はおらんか」

メインの緞帳の他に、サイド幕など色んな幕が設置されていた。

客席のほうから死角になるところを確認していたようだ。

クラウディアは、ステージの下から見上げる。

天井付近には格子状のぶどう棚があり、そこから舞台装置が吊り下げられていた。端に設置された小型の滑車は幕を引き上げるためのものだ。

残念ながらステージには、ほこりが積もっている。

「ここは使われているのですか?」

いいえ、と騎士は首を横に振った。

「国王が空いてる空間を利用しようと二十年ほど前に建設したのですが、数回使われただけで、それ以降は放置されています」

主館自体、利便性から催し以外では滞在されないくらいだ。

舞台は、宝の持ち腐れになってしまっていた。

リーウェイがコンコンと、ブーツの先でステージをつつく。

「ステージの下は入れんの?」

「ステージへ上がる階段を動かせば入れます」

五段ほどある木造の階段は、留め具を外すと移動させられた。

リーウェイが覗き込んでみるが。

「真っ暗やね」

騎士からランタンを借りてかざしても、奥までは見通せなかった。

「ちょっと入って見てくるわ」

「えっ!?」

驚いたのは騎士である。

行くなら自分が、と声に出したときには、リーウェイは闇に呑まれていた。

おろおろと騎士が動向を見守る。

「なんもないわー」

と、くぐもった声がステージの下から聞こえてきた。

しばらくして煤けたリーウェイが出てくる。年数が経過して黒くなったホコリが付着し、一見すると煤に見えるのだ。

ヘレンがハンカチを差し出す。

「おお、助かるわ。使ってないんやったら、財宝が隠されてるかもって思ったんやけどなぁ」

確かに、好き好んで入ろうとする人間はいない。

それにしてもリーウェイの行動力には驚かされる。その力の源が、財宝探しであっても。

舞台を見上げながらシルヴェスターがこぼす。

「空間を持て余しているとは、贅沢な話だ」

「王都では考えられませんものね」

ハーランド王国の王都は、人口過多だ。

郊外ならまだしも、中心部となると、平民は一軒家を持てなかった。

居住スペースが確保できず、アパート暮らしが関の山である。それでも賃料は高い。

貴族の屋敷も、今ある土地を活用するしかなく、拡張は法律で禁じられていた。

「可能な限り採鉱して建材に利用するため、主館の地下は階層ごとに空間が設けられたという話です」

「なるほど、元々採石場だったな」

城塞が建っている元岩山で採れた石は、全て建材になっていた。

それでも足らずは、方々から集められた。

他に見るところはなさそうなので、地下三階へ足を伸ばす。

地下三階も引き続き空間が広がっており、こちらは物置になっていた。隅のほうでは、舞台で使ったと思われる大道具も眠っていた。

立てかけられた手押し車には蜘蛛の巣が張っている始末。

長らく放置されているのが窺える。

クラウディアは近付く気もおきないが、リーウェイは果敢に挑戦を試みた。

「うえっ、綿埃が口に入ってしもうた」

「ホコリが積もっている時点で、人の出入りはないだろうに」

シルヴェスターがもっともなことを指摘すると、予想外のことに反論があった。

「偽装されたホコリかもしれへんよ?」

この人は何を言っているんだ。

一瞬空いた間が、全員の気持ちを代弁していた。

「さっきの舞台を見てひらめいたんや。舞台やと綿で雪を降らしたりするやろ? 確かトウモロコシの粉で土汚れを表現できたなって」

「人が入っていないように見せかけるため、出入り後に偽装を計っている可能性があると?」

「そう思ってんけど、違ったようやわ。このホコリは本物です」

着眼点は面白かった。

(教会の調査も入っていませんでしたものね)

積もったホコリや蜘蛛の巣を見て、クラウディアたちと同じくないと判断されていた。

事実なかったのだが。

「あ、蜘蛛の巣が」

どこで引っかけてきたのか、リーウェイの髪にあるのをヘレンが見付ける。

「さすがに一度戻ったほうが良さそうだ」

「そうですわね。わたくしも舞ったホコリを浴びた気がします」

目には見えないが、ほこりっぽさとカビのにおいを感じていた。

新鮮な空気を吸いたいのもあって、広間一階へ戻る。

地下二階と三階を見ただけだが、思いのほか時間が過ぎていたようで、既に昼食の準備がはじまっていた。