作品タイトル不明
02.悪役令嬢はパーティーへ行く
アラカネル連合王国の王太子を迎えるパーティーは、昼の明るい時間に王城の広間でおこなわれた。
主要な貴族はもちろんのこと、バーリ王国から滞在中のラウルとレステーアたちも同席した。
前は迎えられる側だったラウルが、迎える側になった形だ。
学園でいつも集まる面々とクラウディアは一緒にいた。
シルヴェスターはアラカネル連合王国の王太子と共にいるため別行動だ。
ここぞとばかりにラウルがクラウディアの隣を陣取る。
「これからの時期なら、連合王国が一番過ごしやすそうだな」
「避暑地としても人気ですものね」
アラカネル連合王国は、ハーランド王国の北東に位置している。
四季はあるが、気温は相対的に低い。
小さい島々が集まってできた国で、地続きの大陸とは違った文化が根付いているのも観光地として人気の理由だった。
そんな島々を統括しているのがアラカネル王家だ。
アラカネル連合王国の中でも最もハーランド王国に近いのが、アラカネル王家の島――アラカネル島――なのもあって、バーリ王国と並んで国交は盛んである。
バーリ王国でも同様のことが言えた。
「なのに、わざわざスラフィム殿下のほうから訪問か。外交に精力的なのは流石だ」
ラウルは既に面識があるようで、年上の王太子のフットワークの軽さを褒める。
トップセールスにおいて、スラフィムの右に出る者はいないらしい。
「王族が訪問するとシルヴェスターは大変そうだけどな」
「一番心労をかけているのはラウルですけどね」
クラウディアも似たようなことを心の中で思ったが、口に出したのはレステーアだった。
いつも通りの貴公子然とした男装姿で、青髪をさらりと揺らして綺麗な笑みを作る。
周囲の令嬢たちからは黄色い声が上がるけれど、ラウルは皮肉ととって唇を歪めた。
「うるさい。オマエの頭には反省っていう概念がないのか?」
「ぼくの有用性は、既に示しましたよ」
王弟派の令息令嬢を味方に付け、外堀を埋めることでレステーアは元の位置へ返り咲いた。
といっても、ラウルからすれば監視の意味合いが強い。
裏で動かれるよりは、目の届く範囲に置いたほうがマシだと判断したのだ。
そこには前の失敗を繰り返さないという自戒も込められていた。
あまり自由には動けないとレステーアからも報告を受けている。
ラウルはレステーアから視線を外し、再度クラウディアと向き合う。
明かに糖度が増した甘い笑顔は、ブラックコーヒーが飲みたくなるほどだった。
「クラウディアは、夏の長期休暇をどう過ごすんだ?」
学園の長期休暇は、冬と夏で年二回ある。
基本的に長期休暇は領地で過ごすのが貴族のお決まりだ。
しかし冬の長期休暇のように、他国から王族の訪問があれば別だった。
「ラウル様は国に戻られるのでしたわね」
「ああ、クラウディアも一緒にどうだ?」
「謹んでお断りいたしますわ」
「つれないな」
観光目的で行ったとしても、現地でどういった状況に立たされるかわからない。
まずシルヴェスターが訪問を許さないだろうけれど。
「何もなければ領地で過ごすと思います」
「リンジー公爵家の領地は内陸部だったよな」
「はい、北部よりなので夏は過ごしやすいですわ」
「そう言われたら、ぜひ行ってみたくなるな」
「今年は無理ですよ」
ウキウキとラウルは表情を弾ませるが、レステーアに釘を刺される。
王弟派で政治を牛耳ってはいるものの、中心となるラウルの存在は必要不可欠だ。
国民の支持を得て留学していても、定期的に帰国し、元気な姿を見せなければならなかった。
わざわざ言われるまでもないと、ラウルがレステーアを睨む。
剣呑な二人のやり取りも今や慣れたものだ。
同席しているルイーゼやシャーロットも気にしない。
シャーロットは若干おろおろしているが。
目に入った金髪が陽光を思いださせ、夏はどうするのかとクラウディアはルイーゼに訊ねた。
「る、ルーも領地で過ごされるのかしら?」
お互い愛称で呼び合うようになったものの、未だ若干の照れが混じってしまう。
それはルイーゼも同じようで、ルーと呼ばれてはにかむ姿に胸をかき乱された。
(こういう感情をどう表現すればいいのかしら……尊い?)
トリスタンがこの場にいれば共感してもらえる気がする。