軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第96話 著作権があるから

『っ…………どっ、どりゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!』

斧を振り下ろすような動作と共に発せられた恋音の怒声。

そのあまりの大音量に、スタジオにいる他のメンバーたちが慌てて耳を抑えた。

『ひゃ、128デシベル!?』

恋音の出した記録に、MCの人気芸人が仰天する。

『『『えええええええええっ!?』』』

目標だった100デシベルを余裕で超える結果に、騒然とするスタジオ。

『す、すごい声だったな!? これ、普通に大会でも優勝できるレベルじゃない!? 飛行機のエンジン音でも120だっけ? えっ? 世界記録が129デシベル? マジか! 練習とかしたら世界記録を狙えるんじゃないか? 須藤、すごいな! こんな才能があったんだな!』

恋音はハァハァと呼吸を整えながら、

『や、やった……う、うぅぅ……』

『ちょっ、何で泣いてんの?』

なぜかいきなり泣き出した恋音に、人気芸人が苦笑する。

『み、美久先輩にっ……絶対、罰ゲームを……受けさせちゃ、いけないって……うっ、うっ……』

『そうかー、だから頑張ったんだな』

うんうん、と頷く人気芸人。

一方、金本美久は恋音に近づいて、その頭を撫でながら、

『ありがとね、恋音ちゃん。勇気を出して頑張ってくれて』

『美久せんぱぁぁぁぁいっ!!』

大泣きして金本美久に抱き着く恋音。

スタジオは感動の雰囲気に包まれる。

「……うんうん、恋音、よくやったぞ。しっかりインパクトを残せたな……ずずずっ」

思わず貰い泣きしそうになりながら鼻をすする俺。

「よく分からぬが、こやつの姪っ子のお陰で、あの娘が生贄にならずに済んだということかのう?」

「いえ、そんなに大袈裟なものではないかと。単なる戯れであって、きっと命が懸かるような話ではございませんよ」

「戯れ? それなのに泣いておるのか?」

「……やはり……我がいた時代とは……大きく異なる……ようだ……」

番組が終了した後も、俺はしばらくの間、姪っ子の成長を見届けることができた余韻に浸っていた。

するとどうやら次の番組が始まったようで、軽快なオープニング曲が流れ始める。

アニメだ。

それもかわいい女の子たちばかり登場する、いわゆる萌えアニメというやつらしい。

『いらっしゃいませ、ご主人様~っ!』

可愛らしいメイド服に身を包んだ女の子の、甘い声が深夜の部屋に響く。

どうやらタイトルは「メイドきっさ!」らしく、メイド喫茶でアルバイトをしている高校生たちが主人公のアニメのようだ。

「また面妖なものが始まったのう? なんぢゃ、こやつらは? 絵が動いておるのか? しかし喋っておるぞ?」

「あにめ、というもののようです。恐らく絵を動かし、それに人の声を当てているのでしょう」

訝しむ卑弥呼に、北条政子が説明する。

それにしても凄いな……現代歴は三人の英霊たちの中で一番長いといっても、せいぜい一か月くらいだというのにもう色々と理解しているようだ。

「こ……これ、は……」

一方、卑弥呼と同じく初めてアニメを見た安倍晴明は、なぜか声を震わせていた。

「どうしたんだ?」

「……」

俺の問いかけを無視し、珍しく厳しい表情でじっとテレビ画面を注視している安倍晴明。

もしかして何か陰陽道的に問題でもあるのだろうか?

時代が違えば常識も違うし、何が正義で何が悪かも違う。

陰陽道を極めた安倍晴明にとって、こうしたアニメが忌諱に触れるかもしれない。

「悪い、すぐに消そう」

「っ……待て……」

俺がリモコンを操作しようとすると、安倍晴明は慌ててそれを制止し、

「……す、素晴らしい……」

「は?」

「なんだこの動く図画娘たちは……。見事に変転する表情、愛おしさを引き起こす仕草、耳朶をとろけさせる声……しかも驚くべきことに登場する一人ひとりが絶妙に異なるのだ。何よりそんな彼女たちが織り成す掛け合いが心地よい」

急に饒舌になった!?

「いや……尊い、と言うべきか……っ、まさか、この図画娘の五人は、木火土金水の五要素を現しているっ!? それに時折挟まれる静寂の場面は、陽を引き立てる陰のそれ……これはまさしく陰陽五行だ! ああ、ここに陰陽道の神髄がある……」

よく分からないが、このアニメ、どうやら陰陽道的に最高だったらしい。

「あー、俺はそろそろ歯を磨いて寝るけど、最後まで見たいのなら勝手に見ててくれていいぞ」

生憎と俺はアニメにあまり興味がない。

卑弥呼と北条政子も退屈そうにしていたので召喚を解除し、安倍晴明だけを残して就寝することにしたのだった。

翌日。

安倍晴明が生み出す式神たちが、昨晩見たアニメのキャラクターたちになっていた。

「今日から……これで行くことにした……完璧に再現……とまではいかぬが……いずれは……表情や仕草も……本物と同じにするつもりだ……ゆくゆくは……声も……」

どうやら本当に感銘を受けたらしい。

「いやいや、さすがにそれはマズイって!」

「な、なぜだ……?」

喫茶店を舞台にしたキャラたちなので、まさに給仕にはピッタリではあるのだが、絶対に認めてはいけない大きな理由があった。

「著作権があるから!」

「ちょさく、けん……?」

うん、分からないよなぁ。