軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第67話 めちゃくちゃ日本語通じた

渋谷にある代々木ダンジョン、地下13階。

黒豚、もといインビジブルオークと呼ばれる、オークの変異種をターゲットに狩りを続けていると、女性の悲鳴が聞こえてきた。

「熊の魔物から逃げていますね」

〈なんか外国人っぽい?〉

〈美しいプラチナブロンドヘアや〉

〈何で日本のダンジョンに?〉

〈いや普通に日本人かもしれんぞ。最近は見た目だけじゃ判断できないからな〉

俺は一気に熊と女性の間に割り込むと、包丁を閃かせ、熊の胴体を輪切りにする。

〈熊を殺すなんて可哀想!〉

〈捕獲して森に帰すだけでよかったのでは?〉

〈熊の生息環境を整えれば人里に出てこないはず〉

〈急に熊愛護団体が湧いてきて草〉

〈ここダンジョンやでwww〉

〈魔物だしなw〉

「もう大丈夫だぞ。……日本語通じるかな?」

「っ……あ、あなたが、助けてくれたんですの?」

〈めちゃくちゃ日本語通じたw〉

〈ってか、すげぇ美女じゃん〉

〈めっちゃ足長くて日本人にはない神スタイル〉

〈なんかニシダの周り美人ばっか集まってきてね?〉

少しだけイントネーションがおかしいものの、日本語を話せるようだ。

「ああ、たまたま見かけてな。……怪我はないか?」

「はい、大丈夫ですの。それより助けていただいてありがとうございますわ。あたくし、エリナと言いますの。見ての通り魔法特化タイプの探索者なのですけれど……転移トラップに引っかかってパートナーと逸れてしまいましたの……」

「そうだったのか。あ、俺はニシダだ。見ての通りダンジョン配信をやっている」

逸れたのは地下11階だったという。

俺のような裏技を使わない限り、転移トラップはランダムに同じ層のどこかの階に飛ばされるのだが、基本は近い階だ。

同じ階ということも割と多く、そのためパートナーが彼女を捜しているとすれば、地下11階から順番に降りてくると考えられる。

「さ、さすがに後衛職のあたくし一人でこのままパートナーとの合流を目指すのは怖くて……お願いですの。一緒に捜していただけないでしょうか?」

「もちろん構わないぞ。すでに十分、目標にしていた食材は収穫できたからな」

とっくにインビジブルオークは目標分を確保できている。

そろそろ戻っても良い頃合いだった。

「すでに映ってしまっているが……配信は切っておいた方がいいよな?」

「いえ、そのままでも大丈夫ですわ」

〈ありがたい〉

〈映ってるだけで目の保養になるからな〉

〈短い間とはいえこんな美女と一緒に探索できるなんてニシダ裏山〉

〈襲うなよー〉

それから俺たちはひとまず上階を目指して歩き出す。

このダンジョンの下層は全体を見渡せる構造になっているため、彼女の仲間を発見するのはそれほど難しくないだろう。

崖に沿うように設けられた道を進みながら、俺は彼女に問う。

「えーと……失礼な質問かもしれないが、外国から来たのか?」

「いいえ、あたくしはこう見えて生まれも育ちも日本ですの」

「そうなのか」

「はい。ただ、両親は二人ともフレンス出身ですの。二十年くらい前に来日して、この国が気に入って帰化したようですわ。その後にあたくしが生まれましたので、生粋の日本国籍ですの。エリナは、『絵』『里』『奈』と書きますわ」

〈その割に若干イントネーション変じゃね?〉

〈両親がネイティブじゃなければこんなもんだろ〉

〈似たような境遇の友達いるけど、もっと自然な日本語だぞ〉

〈人によるんじゃね?〉

〈それにしてもこの白人美女……どっかで見たことあるような気もするんだが……うーん、思い出せん〉

やがて階段に辿り着き、地下12階へ。

と、そのときだった。

突然バチンッ、という音が鳴ったかと思うと、前を飛んでいたドローンが墜落してしまった。

「え? 何が起こった?」

〈急に真っ暗になった!〉

〈音も聞こえなくなったぞ〉

〈カメラ死んだ?〉

〈ダンジョン配信でたまによくある〉

〈魔物に壊されたりすることもあるしな〉

〈ドローンが魔物に喰われて、貴重な井の中の映像を見れたこともあったなw〉

コメント欄の方は生きているが、映像も音もダメなようだ。

「ドローンの故障か……?」

だが今、ほんの微かだが魔力の高まりを感じたような。

しかも後ろの方から――いや、気のせいか?

「少し見せていただけますの? 実はあたくし、こう見えて機械関係は得意ですの」

「そうなのか?」

エリナ氏に提案され、俺は彼女にドローンを渡してみる。

軽く分解をはじめた彼女は、複雑な内部機構を観察しながら、

「なるほど……もしかしたら直せるかもしれませんわ」

「本当か?」

「ええ、もちろん保証はできませんけれど……」

それからしばらくの間、ドローンの内部機構を弄っていたが、やがて満足したように頷き、

「これで行けるはずですの」

ドローンを再起動してみると、いつものように元気よく宙に浮遊した。

「すごい、動き出したぞ」

「ふう。どうやら上手くいったみたいですわね。後は改めてXチューブの方で連携を許可すれば映像が戻ると思いますの」

俺はスマホを操作し、言われた通りにドローンとの再連携を行う。

「おっ、映像が戻ったぞ」

配信画面に自分の姿が映った。

ちゃんと視聴者たちにも見えているようで、コメント欄にも祝福するような声が。

〈復活した〉

〈やった!〉

〈このまま配信終了かと思った〉

〈あれ?〉

〈ちょっ、エリナちゃんどうしたの!?〉

〈消えてる間に何があった!?〉

〈おいおいおいおい〉

〈これはヤバいんじゃね?〉

「……え?」

コメント欄に流れてくる不穏な文章。

慌てて後ろを振り返ると、そこにはいつの間にか服がびりびりに破かれ、白い肌が露出したエリナ氏がいた。

「うっ……ひ、酷いですわっ……」

「は?」

「あたくしっ……この人に乱暴されそうになりましたの……っ!」

〈マジか〉

〈ニシダおわた〉

〈これは重罪〉

〈おまわりさーん〉

〈ピーポーピーポー〉