軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第58話 才能の塊すぎる

井の頭ダンジョン、地下20階。

美久と恋音は、次から次へと現れる深層の魔物にトドメを刺しまくっていた。

〈階段からどんどん深層の魔物が送り込まれてくる〉

〈相変わらずニシダさん飛ばし過ぎですw〉

〈はーい、深層の魔物のみなさーん、死刑場はこちらですよー〉

〈どうせやられるなら、おじさんじゃなくてアイドルの方がいいもんね〉

光を帯びた美久の剣が、深層の魔物の首を刎ね飛ばす。

〈ってか、美久ちゃんの斬撃、前より明らかに強くなってない?〉

〈なってる。大人しくしてくれてるとはいえ、深層の魔物の首なんてあんなに簡単に斬れないと思う〉

〈やっぱりレベルアップしてるんだ〉

〈新しいスキルを覚えたのかも?〉

〈美久ちゃんって、剣技と光魔法のスキルを持ってるんだっけ〉

〈あと隠密〉

「新しいスキルは覚えてないよー」

魔物を仕留めながらもまだ余裕があるようで、美久は自身のチャンネル、美久チャンネルの視聴者たちのコメントに反応する。

「鑑定士さんに見てもらったけど、剣技と光魔法、それから隠密の三つだけでーす。レベルは上がってると思うけど、やっぱりスキルはそう簡単には獲得できないよねー。……普通は」

〈そう考えるとスキル書ってすごい〉

〈ニシダさんに譲ってもらえてよかったね〉

〈普通は?〉

〈普通じゃない人もいるってこと?〉

「恋音ちゃんって、新しくどんなスキルを覚えたの? おーい、恋音ちゃーん」

「っ!? あ、す、すいませんっ……集中しちゃってて!」

〈恋音ちゃん集中力スゴ〉

〈美久ちゃんより倒してね?〉

「ううん、こっちこそ、ごめんね、頑張ってる最中に話しかけちゃって!」

「だ、大丈夫です……っ! わ、わたしったら配信中なのに、無言で……」

〈気にしなくていいよー〉

〈ダンジョン配信なんてそんなもんよ〉

「えっと、恋音ちゃんも鑑定士さんに見てもらったよね? 新しくどんなスキルを覚えたのかなって」

「あ、はい! 元々、巨人の腕力っていうスキルと、斧技っていうスキルがあったんですけど……新しく剛健っていうスキルと、急所狙いっていうスキルを覚えてました……っ!」

〈え、二つもスキル増えてる?〉

〈スキルはそう簡単には獲得できないって話じゃ?〉

〈さすが恋音ちゃん、才能の塊すぎる〉

〈これがニシダさんの血筋かー〉

「うーん、このままだとあっという間に追い抜かれちゃいそうだねー」

美久が苦笑している間にも、恋音はその体躯には不釣り合いな大きさの戦斧を振り回し、深層の魔物を粉砕し続けている。

〈美久ちゃんも頑張ってw〉

〈先輩の威厳が……〉

〈※二人はアイドルです〉

〈確かによく考えたら本業はアイドルだもんなw〉

〈探索者として追い抜かれてもアイドルとして負けてなければOK〉

〈いや恋音ちゃんアイドル界でもトップになる器かもよ?〉

〈勝ち負けとかないやろ〉

〈変にギスギスするより仲良く切磋琢磨してほしい〉

〈それ。今の時代、メンバー同士の仲悪いとイメージ悪くなる〉

〈往年のアイドルグループみたいな不仲騒動やめてほしいよな〉

〈モ〇娘のこと言ってる?www〉

「あはは、みんな心配してくれてありがとー。でも大丈夫! 恋音ちゃんとはめちゃくちゃ仲いいから! もし恋音ちゃんがグループを引っ張っていくようなトップアイドルになったら、私は自分のこと以上に嬉しいと思う!」

〈さすが美久ちゃん〉

〈尊い……〉

〈恋音ちゃんって、美久ちゃんのファンだったんだよね?〉

〈美久ちゃんと一緒のグループに入りたくて応募したって聞いた〉

〈握手会にも行ってたらしい〉

〈二人の関係性すごく好き〉

〈ほっこりする。……背景が散乱する魔物の死骸だけど〉

〈そこに触れてはあかんw〉

そうして魔物を狩り続けること、およそ一時間。

ただひたすら深層の魔物にトドメを刺していくだけの配信内容であるものの、身体の小さなアイドルたちが巨大な魔物を殺戮しまくる光景に爽快感や中毒性があったのか、気づけば同接数は美久チャンネルとして過去最高の50万人を突破していた。

「ハァハァ……疲れたぁぁぁっ! もう動けない~っ!」

「た、大変でしたね……。前回より明らかに多かった気が……何体いたんだろう……?」

疲労困憊の二人を、深層から戻ってきたニシダが労う。

「二人ともお疲れ様。俺のカウントが正しければ300体だ」

「「300体!?」」

一時間で300体を討伐したため、12秒につき一体の魔物を倒し続けた計算になる。

〈前回より100体も増えたんか〉

〈なのに時間はそんなにかかってないね〉

〈それだけ強くなったってこと〉

〈むしろ12秒で一体の魔物を見つけて瀕死にして支配するニシダさんが凄すぎる件〉

〈それなw〉

「それじゃあ、またこの階にいる隠しボスを倒して地上に戻るとしましょう」

〈やっぱそうかw〉

〈ボスってそんなに気楽に倒せるようなものだっけ?〉

〈今頃タラスクさん涙目〉

今回も隠しボス討伐ルートで帰還するらしく、一行は地下20階の端っこにあるボス部屋へ。

そして当然のように隠しボス・タラスクはニシダによって致命傷を与えられ、恋音の戦斧であっさりトドメを刺されてしまった。

〈弱っ〉

〈そう見えるだけ定期〉

〈ほ、ほんとはめっちゃ強いボスなんだからなっ!? ほんとだぞっ!?〉

「えっと、報酬は三つあるみたいだね! 亜空間バッグにアダマンタイト塊、それから装備するだけで素早さのステータスを上げてくれる疾風の腕輪! かなり良いんじゃない!? って、当然これは全部ケンさんのもの……」

「いや、亜空間バッグと疾風の腕輪は不要だ。どっちも持っているからな」

〈持ってた〉

〈いつも亜空間バッグ使ってる?〉

〈使ってないと思う。収納系のスキル持ちなんじゃないかと言われてる〉

「だからって……」

「アダマンタイト塊だけで構わない。こいつを売って換金すれば十分過ぎる報酬だ。それより三人はこの転移ポータルを使って先に帰っていてくれないか? 俺は少し寄り道をしていくから」

「寄り道ですか? 一体どこに……?」

首を傾げながら問う美久に、ニシダは告げた。

「地下30階だ」

「「へ?」」

「ダンジョンボスを倒してから戻ろうと思っている」