作品タイトル不明
第127話 どう考えても自分が一番ヤバいんだって
俺はダンジョンから地上に戻ってきていた。
「随分と大暴れしているみたいだな」
司令室のモニターには、基地内で暴れる二人の旧友たちの姿が映っていた。
残りの一人はどこにいるか分からないが、間違いなくすでに基地の中心部にまで侵入しているだろう。
『こ、こんな、ことをして……ひ、人質が……無事で済むと、思うなよ……』
俺の足元に転がる禿頭の男が、震える声で脅し文句を口にしている。
その腹を踏みつけてやった。
「~~~~~~~~~~~~~~~~っ!?」
「だから恋音ならすでに救出済みだって言ってるだろ。まぁ日本語が通じないから何度言っても伝わらないだろうけどな」
そうこうしている間に、基地内は静かになってきた。
旧友たちが部隊の大半を壊滅させた上に、俺が司令室を制圧したことで、もはや戦闘を継続することが難しくなったのだろう。
しばらく司令室で待っていると、三人が集まってきた。
「よお、ケンちゃん、助けに来たぜ」
「久しぶりに運動したから疲れた。少し痩せたかもしれんなー」
「やっぱり持つべきものは友でしょ?」
他国の軍事基地に乗り込むという大胆な真似を仕出かしておきながら、随分と暢気な雰囲気である。
「相変わらずだな。まぁお前たちは冥層でヤバい魔物に襲われたときも、そんな感じだったしな」
頼もし過ぎる戦友たちに俺は感謝する。
「それより本当に助かった。俺一人じゃ本当に詰んでいたところだ。それで恋音は?」
「おれっちの影の中。よっと」
河北が影の中に手を突っ込み、恋音を引っ張り出してきた。
「恋音!」
「おじさん!」
恋音が俺の胸に飛び込んでくる。
「無事でよかった……すまなかったな、俺のせいで」
「お、おじさんは悪くないよっ……」
再開を喜ぶ俺たちだったが、生憎と今は敵の基地のど真ん中だ。
『ば、馬鹿なっ……なぜその娘がここにっ……そ、そうかっ、収容施設を襲撃したのも貴様らぐべっ……』
禿頭の男が何やら喋っていたが、再び腹を踏みつける。
「恋音は俺のマイルームの中に入っていてくれ」
「それがいい。おれっちの影の中は真っ暗で何も聞こえないから、ずっといると頭がおかしくなってしまうからな」
恋音をマイルームに避難させると、俺は旧友たちに言う。
「ついでにもう一つ、頼まれて欲しいことがあるんだが」
「というと?」
「これから王宮に乗り込んで、この腐った国を中枢からぶち壊してやろうと思っているんだが、手伝ってくれないか?」
「「「は?」」」
軍事基地を後にした俺たちは、凄まじい速度で空を飛行していた。
「やっぱり東口の飛行魔法は俺とはレベルが違う」
こと魔法において、俺は東口の右に出る者を見たことはない。
火、水、風、土の主要四属性はもちろんのこと、光、闇、雷、さらには補助系の魔法も最高レベルで扱うことができるのだ。
その魔力量も桁外れである。
俺も割と魔力量には自信がある方なのだが、東口には敵わない。
ゲーム風にそのジョブを表現するとしたら、まさしく大魔導士といったところだろう。
「見えてきたー。あれが王宮でしょ?」
東口が前方の地上を指さしながら言う。
俺は頷いた。
「ああ、間違いない」
「そのまま突っ込むよー」
速度を落とすことなく、俺たちは王宮に向かって滑空していく。
見る見るうちに王宮の壁が近づいてきた。
「はい、それじゃあ、南野ガード」
「うん、任せて」
南野を先頭に王宮の壁へと激突する。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
轟音と共に壁が粉砕し、俺たちは王宮の中へと飛び込んだ。
勢いよく地面に着地する。
「大丈夫か、南野?」
「見ての通り」
超高速でコンクリートの分厚い壁に激突しながらも、南野は平然としていた。
「さすがだな。うちの鉄壁の盾は」
南野の防御力は、俺の数倍、いや、恐らく数十倍はあるだろう。
なにせ冥層の魔物の攻撃を喰らってもほぼダメージを受けないのだ。
だが真に恐ろしいのが彼の治癒魔法で、エクスポーションに匹敵する治癒力を持っている。
この鉄壁と治癒能力がセットになっているのだから、仮に敵だったら一体どうやって倒せばいいのかと絶望していたに違いない。
東口が大魔導士だとすれば、南野はパラディンだろう。
「さて、とりあえず適当な場所から突入してきたが……かなり広いな。どっちに進めばいいのか……」
「大丈夫、もう完全に把握したぜ。もちろんターゲットの居場所もだ」
河北が自信満々にサムズアップする。
「ほんと、お前の索敵能力は段違いだな」
河北のジョブはさしずめ暗殺者だ。
この最高レベルの索敵とマッピング能力に加えて、影に潜ったり操作したりするスキルを持っているため、ターゲットにされたら最後、逃げることは絶対に不可能である。
河北を先頭に、俺たちは王宮内を進んだ。
途中で近衛兵らしき連中が立ち塞がったが、もちろん俺たちの敵ではない。
やがて王宮の中心部にまで到達した俺たちは、公式の儀式や謁見が行うための、いわゆる玉座の間らしき広大な空間に出た。
この国の絶対的な王権を強調するかのように、玉座の背後の壁には太陽をモチーフにした荘厳な装飾が施されている。
「国王はこの先だな。だがその前に……こいつらを片付けないといけなさそうだぜ」
そこで待ち構えていたのは、近衛兵の中でも精鋭中の精鋭と思われる三人の屈強な体躯の男たちだった。
『〝神聖なる国王陛下の皇居を荒らす賊どもが! 万死に値する!〟』
そのうちの一人が激怒しながら叫び散らしているが、俺は構わず突っ込んでいった。
「なんて言ってるか分からんが、俺の大切な姪っ子に手を出したお前たちが悪い」
「っ!?」
俺が両手の包丁を閃かせると、その男の両腕が宙を舞った。
『『〝貴様……っ!〟』』
両側から残る二人が飛びかかってきたが、繰り出された攻撃を包丁で弾くと、カウンターで二人の両足を頂戴する。
『〝ば、か、な……我々が……手も足も、出ぬ、とは……〟』
『〝これが……魔族殺しの……強さ、か〟』
『〝ああ、偉大なる王よ……申し訳、ございませぬ……〟』
三人そろって地面に倒れ込んだ。
放っておいたら死ぬだろうが、高レベルの治癒魔法や上位のポーションなら治療できるだろう。
「相変わらず強すぎだろ、ケンちゃん」
「オレらを散々持ち上げてたけど、どう考えても自分が一番ヤバいんだって」
「彼らだって、Sランカーに匹敵してもおかしくないレベルだったのにねぇ」