軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第126話 大規模戦闘は得意じゃないからな

王国西部に位置する、国内第二位の規模を誇る王国軍の基地。

二千人を超える一般兵たちに加えて、探索者の精鋭たちで構成された、いくつもの強力な部隊が駐屯している。

基地内には国内で二番目に難易度の高いダンジョンもあった。

ダンジョンを守護するように軍の基地を設置していることからも、この国がいかにダンジョン攻略を国家発展における重要事項だと認識しているかが分かるというものだ。

そんな王国軍の基地が、たった三人の侵入者たちに脅かされるなど、一体誰が想像できただろうか。

「ははは、無駄だよ、無駄無駄ー。その程度の魔法がオレに届くとでも思ってんのー?」

贅肉だらけの身体を揺らし、煽るように言いながら、豪雨のごとく飛来する魔法を魔力の砲弾で次々と撃ち落としていくのは東口だ。

彼は王国軍の基地へ、西側にあるゲートを突破し、堂々と正面から侵入していた。

『な、何だ、あの男は!?』

『ただの魔力の塊だけで、これだけの数の攻撃魔法を相殺していくなんて……っ!』

『信じられない魔力の量とその放出力だっ……』

軍人たちが驚愕する中、東口はまるで生徒を指導する教師のような口ぶりで、

「魔法っていうのは……こうやるんだよ」

彼の周囲に出現したのは、巨大な火柱、巨大な氷塊、巨大な岩石、巨大な竜巻、そして激しく帯電した巨大な雷雲だった。

『ご、五種類の属性の魔法を同時にっ!?』

『しかもっ、一つ一つが並みの魔法じゃないっ……』

『攻撃が来るぞっ! ぜ、全員、防御態勢を取れええええええええっ!!』

直後、東口が放った五つの魔法が天変地異のごとく荒れ狂った。

彼を排除するために集結していた百人規模からなる精鋭部隊が、あっさりと全滅させられてしまう。

「さてさて、ケンちゃんはどこかなー?」

一方基地の東側でも、侵入者と軍との間で激しい攻防が繰り広げられていた。

「うんうん、悪くない攻撃だと思うよ。だけど僕にダメージを与えるには少し物足りないかなぁ。防御力には自信があるんだよねぇ」

降り注ぐ大量の攻撃魔法をまともに浴びながらも、平然と前進を続けるのは南野である。

彼は基地の東側にあったゲートから侵入し、基地の中心部を目指していた。

『魔法は確かに当たっているはずだ……っ!』

『なのになぜ効いていない!?』

『だが反撃はしてこないぞ! 防御に特化したタイプかもしれない!』

反撃がないと見て、指揮官が新たな指示を出す。

『近接隊、距離を詰めてやつを攻撃しろ!』

接近戦を得意とする軍人たちが、一斉に南野へと躍りかかった。

剣が、槍が、斧が、拳が、次々と南野の身体を直撃する。

だが彼は顔色一つ変えなかった。

「あはは、ぜんぜん効かないよ? もうちょっと頑張ってみてほしいなぁ」

それどころか余裕の表情で笑っていた。

『ば、馬鹿なっ……もしかして結界か……っ?』

『だが確かに本人の身体に当たった感触がある……っ!』

『なのになぜ傷一つ付かない!?』

軍人たちは何度も何度も南野を攻撃するが、やはりダメージが通らない。

とそこへ、凄まじい闘気を帯びた刀身を手に、後方から猛スピードで飛びかかってきた。

「おおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

繰り出された渾身の一撃が、南野の胸を縦に斬り裂く。

「おっと? 凄いね。ちょっと傷がついたよ」

『っ……そ、そんな……私の、必殺スキルが……』

しかし傷は微々たるものだった。

さらに呆然とするその軍人の前で、一瞬で修復されて元通りになっていく。

「防御力にも自信があるけど……実は僕、一番得意なのが治癒魔法なんだよね」

そんなふうに正面から基地に乗り込んできた二人とは、対照的な動きをしていたのが河北だ。

『がっ……な、何も、の……』

彼はすでに基地の中心部にまで侵入を果たし、待機していた高レベルの探索者たちを順番に片付けていた。

「おれっちはあいつらと違って大規模戦闘は得意じゃないからな」

高レベルの探索者たちは、その多くが指揮官を務めている者たちだ。

それがいつの間にか戦闘不能にさせられているとなれば、指揮系統が混乱するのは自明だろう。

基地の最奥に位置する司令室は騒然としていた。

『何なんだ、あの侵入者どもはっ……』

信じがたい光景を前に声を震わせるのは、この基地の司令官を務める禿頭の男。

ランジタラ統合王国軍で少将を務めるアルジャ・カスワンだった。

BランクやAランクを何人も投じた部隊だというのに、まったく歯が立たないのである。

『やつらは間違いなくSランク相当……いや、それ以上かっ……』

止めるにはSランク探索者の加勢が不可欠だが、生憎とこの国の生え抜きのSランク探索者の数は少ない。

しかもその大半が常時ダンジョンに潜っているため、今すぐ投入できるSランカーは一人もいなかった。

『先ほど収容施設も何者かに襲撃されたとの報告があった……以降、音信不通で、状況が掴めていないが……』

と、そのときである。

アダマンタイトで作られているはずのこの司令室の扉が、粉々に砕け散ったのは。

「探したぞ、ハゲ野郎」

入ってきたのはダンジョン攻略中のはずの日本人の男、西田賢一だった。