作品タイトル不明
第115話 かわいくないウサギで草
中層で見つけた転移トラップを使って、一気に下層に辿り着いた。
「な、なんだか、不思議な場所ですね……」
「そうだな。俺もあまり見たことない光景かもしれない」
「えっ、叔父さんでも……?」
俺たちの周りには巨大なキノコが乱立していた。
見渡す限りずっとそれが続いていて、まるでキノコの森である。
しかも割とリアルなキノコばかりで、メルヘンな感じではない。
もちろん中には可愛らしいキノコもあるが、そういうのは毒がありそうだ。
「これだけあったら料理に使えるキノコもあるだろう」
「キノコ料理いいですね! でも、毒キノコかどうか、どうやって確かめるんですか?」
「食べてみればいい」
「えっ、毒があったら死にますよ!?」
「大丈夫だ。割と毒には耐性があるし、いざとなったら解毒魔法を使えるからな」
〈毒キノコ程度じゃニシダは死なんよなw〉
〈毒耐性を標準装備してるニシダ〉
〈自分には毒が効かないからって料理に使わないでくれよ?〉
〈それなwww〉
「大丈夫です。そんなヘマはしないので。それと、解毒魔法で毒を除いてしまえば、一般の人でも毒キノコを食べることができますよ。毒キノコって美味しいものが多いので、裏メニューなんかに出してみるのはありかもしれませんね」
〈毒キノコは美味しいものが多い……〉
〈それはもう毒キノコを食べたことがあるやつの感想なんよ〉
〈しかも一度や二度ではなさそうだなw〉
〈ダンジョン産の毒キノコかな?〉
「それより見慣れないタイプの環境なので、少し慎重に進んだ方がよさそうだな」
「分かりました!」
「き、キノコの魔物とか、出るのかな……?」
「ちなみに魔力の濃さから考えて、恐らく地下13階くらいだろう」
〈もう地下13階www〉
〈ここからが本番やな〉
〈本番が残り三階分しかなくて草〉
〈とはいえ下層の三階分はかなりあるぞ〉
「それと次の階段はあっちの方向だ」
〈進路まで教えてくれるのかw〉
〈至れり尽くせり〉
〈二人だけで攻略とは?〉
〈手厚い補助付き〉
金本美久と恋音の二人を先頭に、巨大なキノコの間を進んでいく。
「……下層の魔物と戦うって思うと、ちょっと緊張する」
「わ、わたしもですっ……」
〈二人とも頑張れー〉
〈深層の魔物は何体も倒してたけどな〉
〈あれはニシダが動けなくしてたから〉
〈美久ちゃんはハイオークにやられそうになったのを思い出してるのかも〉
と、そのときだ。
キノコの影から魔物が姿を現す。
「ウサギ……っ!?」
「でもっ……大きいです……っ!」
それは身の丈三メートル近い巨大なウサギだった。
二足歩行で、熊のような鋭い牙と爪を持ち、体毛の上からでも分かるほど筋骨隆々の肉体をしている。
〈かわいくないウサギで草〉
〈むしろキモイ〉
〈極悪ミッ〇ィー〉
〈おいやめとけw〉
ぱっと見の予測だが、恐らく同じ下層に出現するハイオークやミノタウロスに劣らない強さはあるだろう。
「っ、恋音ちゃん、来るよっ!」
「は、はい……っ!」
その巨大ウサギが地面を蹴ったかと思うと、ウサギらしい俊敏さで一気にこっちに躍りかかってきた。
金本美久は素早く剣を抜き、恋音も戦斧を構えた。
「私がタンクをするから、恋音ちゃんは隙を突いて戦斧を叩き込んで!」
「わ、分かりました……っ!」
金本美久が前に出る。
「へいへいへい、ウサギちゃんビビってるよーっ!」
〈古い煽りで草〉
〈どこで覚えたんだw〉
〈俺と世代一緒の可能性が微レ存〉
〈お父さんに教えてもらったんじゃね?〉
目論見通り、巨大ウサギは挑発を受けて真っすぐ金本美久を襲う。
振り下ろされた強烈な爪撃を、金本美久は剣で受け止めるのみならず上手く受け流した。
さらに態勢を崩した巨大ウサギへ、すかさず斬撃を見舞う。
「~~~~ッ!」
巨大ウサギは痛みで顔を歪めたものの、筋肉に守られているためかあまりダメージを受けた様子はない。
それでも激高し、爪を振り回しながらの猛攻を繰り出す。
だが怒りで完全に意識が金本美久にしか向いていない。
当然このチャンスを逃す恋音ではなかった。
「ええええいっ!」
巨大ウサギの後ろから飛びかかる恋音。
戦斧が後頭部を粉砕し、巨大ウサギは白目を剥いて盛大に地面に倒れ込んだ。
〈一撃www〉
〈まぁ深層の魔物でも脳天かち割れるぐらいだからなぁ〉
〈下層の魔物も二人だけで倒せるね〉
〈良い連携〉
さらに進むと、今度は突然、近くに生えていたキノコが動き出した。
柄の部分から手足のようなものが伸び、さらには人面が浮かび上がってくる。
〈気持ち悪い人面キノコ〉
〈かわいくない魔物ばっかで草〉
〈生理的嫌悪感〉
「ノオオオオオオコオオオオオオオッ!!」
謎の声を発しながら一番近くにいた恋音に襲いかかる。
「えええいっ!」
だが恋音の戦斧が、あっさりキノコの柄を輪切りにする。
〈瞬殺やん〉
〈恋音ちゃん強すぎ〉
〈むしろこのキノコ、下層の魔物なのに弱くない〉
「気を付けろ。こいつは群れるタイプだ」
俺が注意を促すが早いか、周囲のキノコが一斉に動き始める。
「っ……もしかして、この辺りのキノコすべて魔物が擬態してるっ!?」
「か、数は多いけどっ、一体一体はそれほど強くな――――っ!?」
「恋音ちゃん!?」
恋音が何かに足を取られて転びそうになった。
よく見ると、その足に絡まっていたのは白い糸のようなものだ。
それはたった今、恋音が倒したはずのキノコの魔物の断面から伸びてきていた。
〈まさか菌糸……?〉
〈こいつまだ死んでなかったんか〉
〈斬られても生きてるとかアンデッドかよ〉
〈キノコは菌の集合体だからな〉