作品タイトル不明
第113話 ちょいちょい宣伝入れてくスタイル好き
「どうも、ケンちゃん食堂の店主、ケンです」
「やる気カナ~? 元気カナ~? 笑顔カナ~? みんなを元気いっぱいにしちゃう系アイドル、鳳凰山38の金本美久だよ!」
「あ、あなたのハートに、恋の音、奏でちゃいます……っ! す、須藤 恋音(こと) ですっ! よろしくお願いします!」
〈はじまった〉
〈待ってました〉
〈全裸待機してた〉
〈神コラボの時間です〉
〈相変わらず恋音ちゃん緊張してるなw〉
〈けど前よりは堂々としてる〉
〈恋音ちゃんの成長を見守り隊〉
今日は美久チャンネルとのコラボ配信の日だった。
ここ最近の定休日は、俺がしばらく日本各地のダンジョンを巡っていたこともあって、割と久しぶりのコラボである。
「悪いな、なかなか時間を取れなくて」
「いえ、私たちもツアーがあって忙しかったですし!」
「ツアー?」
「え? もしかして知らなかったんですか……?」
〈ニシダ、鳳凰山のツアー行かなかったんか〉
〈俺は行ったぞー〉
〈私も行きました〉
〈感動的な公演でした〉
〈神ツアーだったね〉
〈ていうか、招待されてないの?〉
〈恋音ちゃんの叔父さんだよな?〉
〈家族ならともかく、叔父までは招待せんやろ〉
〈とはいえ、お世話になってるはずだからなぁ〉
〈恋音ちゃんのツアーデビューだったのに可哀想w〉
「あ、ああ……知らなかった……」
俺は愕然としながら頷く。
「というか、招待希望を出していたはずなんですけど……加賀さん?」
どうやらツアーには関係者席というものがあるらしく、メンバーも家族や友人、あるいは仕事の共演者などを招待することができるらしい。
マネージャーの加賀麗華が応じる。
「……念のため重複がないよう恋音に確認したところ、彼女の方で希望を出すと言っていましたので」
全員の視線が恋音に集まる。
「ご、ごめんなさい……営業日と重なっちゃってるから……悪いなって……」
「そんなこと気にしなくていいのに! 招待されていたら叔父さん、是が非でも行ったぞ!?」
俺は思わず頭を抱えながら叫んだ。
しかもこのツアーは、恋音がアイドルになって初めて参加するものだったという。
「だ、だから、絶対無理してでも来ちゃうと思って……」
〈ドンマイw〉
〈てか、意地でも営業しようとする男が……〉
〈あんなに仕事人間なのに姪っ子の方が優先度高いのかw〉
〈ダンジョン探索<<<ケンちゃん食堂<<<恋音ちゃん〉
「はは……今度からは私の方から招待するようにしますね。あと、ケンさんのように、ツアーに行きたかったけど行けなかったという方のために、ライブの模様を収録したDVD・Blu-rayが発売されます!」
「なっ……そ、それを見れば、恋音の初ツアーの様子が分かるのかっ!?」
「もちろんです!」
〈商売上手で草〉
〈さすが美久ちゃん〉
〈もはやベテランの域〉
〈ニシダ喰いつき過ぎだろwww〉
「いつ発売されるんだ!?」
「半年後くらいです」
「半年後!? そんなに待てないぞ!?」
「なるほど、そうですよね、特典映像も満載で、限定盤には豪華なフォトブックレットやポストカードも付いてくるんですけど、さすがに半年後はちょっと待てないですよねー」
〈ちょいちょい宣伝入れてくスタイル好き〉
〈半年後は確かに待てない!〉
〈もしかして今すぐ見れる方法が!?〉
〈お前らも術中にハマってるぞw〉
「そんな方には、オンライン配信のチケットを購入いただくと、なんと今月末まで見逃し配信を利用できちゃいます!」
「そんな手があったのか!」
「はい! 今ならまだ間に合いますよ!」
「絶対買う!」
「ありがとうございます! 半年後には限定盤もお願いしますね」
「もちろんだ!」
〈お買い上げありがとうございます~〉
〈しれっと限定版を売り込んでて草〉
〈ニシダなら限定版でも余裕やろ〉
〈まぁ今やニシダは金持ちだからな〉
〈こんな太客逃すわけにはいかんって〉
帰ったらチケットを購入して早速、恋音の勇姿を見ようと思う。
「えー、というわけで、皆さんも二人が出演しているDVD・Blu-rayをお願いします」
〈ニシダも売り込み出して草〉
〈布教する側になってるw〉
〈こうして信者が増えていくのか……〉
〈最初からニシダもグルだった説〉
〈だったらウケる〉
〈台本あったのかよwww〉
「話がだいぶ脱線しましたが、今回もまた美久チャンネルとのコラボ配信をやっていこうと思います」
〈ここどこー?〉
〈さっきから思ってたけど、なんか騒がしいよな〉
〈警察がいる?〉
〈もしかして目黒?〉
〈できたてほやほやのダンジョンじゃん!〉
「はい。ニュースを見てご存じの方もいると思いますが、実はつい昨晩、新しくここ中目黒に出現したばかりのダンジョンです」
二十五年前。
世界各地に同時多発的に出現したダンジョンだが、それ以降も少しずつだが新しいダンジョンが発生し続けていた。
日本でも当初は150か所ほどだったが、二十五年の間に50か所ほど増えてきた。
昨晩ここ中目黒に現れたダンジョンで、203か所目となる。
〈目黒区には初ダンジョン〉
〈これで23区のうち16区にはダンジョンがあるわけか〉
〈東京はマジでダンジョン激戦区やな〉
「ダンジョンの入り口が出現した場所は、桜の名所で知られる目黒川沿いにある中目黒公園です。まだ建物も何もなく、簡易なテントで入り口を隠しているような状態ですね」
もちろん受付窓口も存在していないが、管理庁の職員が待機していて、許可を得た探索者であれば中に入ることが可能だった。
管理庁としても、どの程度の難易度のダンジョンなのか早急に把握したいためである。
「一応、周囲に漂う魔力の濃度から、クラス3程度と推測されています」
〈クラス3かー〉
〈だいたい地下15階まで〉
〈なんだ低レベルダンジョンか〉
〈ニシダ見てると感覚狂うけど、普通に高レベルなんよ〉
〈地下11階から下層だしな〉
「ちょうどいい難易度なので、今回の配信では、二人だけでこのダンジョンの初攻略をしてもらおうかなと」
〈なるほど、美久ちゃんと恋音ちゃんの二人だけでねー〉
〈新ダンジョンの初攻略かー〉
〈クラス3ならいける……わけねぇだろおおおおおっ!?〉
〈普通にBランク以上は必須の難度だって!?〉
〈まだDランクとCランクなんやが?〉