作品タイトル不明
第107話 魔族涙目で草
身体をバラバラにしたにもかかわらず、魔族は生きていた。
「ご名答。わたくし、こう見えてアンデッドなのですよ」
どうやら死霊術によって、自らをアンデッド化させていたらしい。
〈こんなに強くて不死とか〉
〈おい誰だよこのキャラ設定したやつ〉
〈この状態から復活できるってこと?〉
〈いくらニシダでも死なない相手は倒せないだろ……〉
そのときだった。
光の矢が飛来し、魔族の肉片の一つを貫いたのは。
黒い靄を四散させながらその肉片が溶けて消えていく。
〈え〉
〈あれ〉
〈なんか消滅した感じ?〉
〈今の光の矢はもしや〉
矢が飛んできた方向に目をやると、神宮寺セイアが弓を構えていた。
「私の矢には不浄なるものを浄化する力がある。やはりその魔族にも効くようだ」
〈セイアたん!〉
〈生きてた〉
〈さすが〉
〈国内最強の探索者があれくらいでやられるわけないだろ〉
神宮寺セイアはさらに光の矢を放とうとする。
「っ……ま、待ってくださいっ……さすがにそれはっ……」
〈魔族涙目で草〉
〈急な焦り〉
〈これは立場が逆転〉
〈ちゃんとトドメを刺しておかないから〉
魔族の訴えなど無視し、神宮寺セイアは矢を撃ち出した。
「くっ……ここはいったん退避するしかっ……」
黒い光の壁でそれを防ぎつつ、魔族は分離した肉体のまま宙を舞った。
〈ガードしやがった!〉
〈逃げる?〉
〈正々堂々戦えよ〉
〈肉片が空を飛ぶとかシュールな光景〉
「逃がすかよ」
俺はすぐに後を追う。
一気に距離を詰めると、再び黒い光で身を守ってきたが、
ズバンッ!
それごと斬り裂いてやる。
さらに黒い光の防御が失われた隙をついて、神宮寺セイアの光の矢が飛来した。
肉片の一部を直撃し、再び消滅する。
これで身体の三分の一はなくなった。
「人間どもがっ……」
「西田殿! 一気に片付けるぞ!」
「ああ! 時間を与えたら復活しそうだしな!」
必死に逃走を図ろうとする魔族だが、俺たちはすかさず追撃する。
〈た、倒せる!?〉
〈まさかニシダと神宮寺セイアの共闘をリアルタイムで見れるとか!〉
〈日本最強コンビだぜ!〉
〈やっちまえ!〉
「「「ワオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」」」
〈ケルベロス!?〉
〈こいつまだ生きとったんか!?〉
〈いやアンデッドだ!〉
〈ボスまでアンデッドにできるんかよ!〉
五稜郭ダンジョンの深層ボス、ケルベロスが躍りかかってきたのだ。
迫りくる三頭の牙に、俺はいったん魔族への追撃をキャンセルし、
ズバズバズバズバズバズバズバズバッ!!
〈瞬殺ううううううっ!?〉
〈肉の雨が……〉
〈けどその隙に魔族が逃げていくぞ!〉
〈ダンジョンの入り口に向かってる!?〉
〈って、なんかあそこ、肉が集合していってない?〉
〈ほんまや気持ち悪!〉
〈もしかしてアンデッド化された深層の魔物の肉片?〉
魔族が逃げていく先には、巨大な肉の塊が形成されつつあった。
それはどうやら、英霊たちが倒してくれたアンデッドの肉片が集まってきたものらしい。
魔族はその肉塊の中に飛び込んだ。
一瞬遅れて神宮寺セイアの光の矢が飛来したが、肉塊がそれをガード。
直後、肉塊がぐにょぐにょと形を変えたかと思うと、肉の巨人が出現していた。
〈ちょっ〉
〈やば〉
〈なにあれ?〉
〈おえええええええええ〉
〈ミンチ肉でできた巨人〉
〈しかもその肉は腐ってる……〉
〈おい見ろ、ボスの肉まで取り込んでやがる!〉
さらに腐肉の巨人は周囲に転がる肉片を集めながら、どんどんその大きさを増していく。
気づけば隣の五稜郭タワー並みの巨体と化していた。
「本体が完全に隠れてしまったか。あの中で復活まで時間を稼ぐつもりだろう」
魔族の気配を探ってみるが、うまく隠れているようで分からない。
「西田殿」
いつの間にか神宮寺セイアが近くまでやってきていた。
「私の目なら、やつがどこに潜んでいるかが分かる」
「本当か?」
「私が矢で狙う。貴殿は邪魔な腐肉を排除してくれ」
「了解だ」
〈あっさり見抜かれてて草〉
〈セイアちゃんそんな能力あったんや〉
〈何かのスキルだろうな〉
〈気配消してても分かるんか〉
神宮寺セイアが矢を放つ。
俺はその後を追った。
矢が突き刺さったのは、腐肉の巨人の右肩付近。
慌てたように左手で俺を叩き落そうとしてきたが、その前に包丁を閃かせた。
「おおおおおおおおおおおおおっ!!」
右肩部分を格子斬りにしてやると、
「ば、馬鹿なっ……なぜ、わたくしの位置がっ……」
驚愕した顔の魔族を発見する。
すでに身体の大部分がくっ付いていて、元通りになりつつあった。
そこへ神宮寺セイアが放った光の矢が降り注いだ。
「こ、このわたくしがっ……人間ごときにっ……がああああああああああああああああああああああ――」
絶叫と共にその身体が消失していく。
死霊術を行使していた魔族の力が失われたからか、同時に腐肉の巨人も自壊していった。
〈やったか!?〉
〈フラグやめい〉
〈さすがに倒せただろ〉
〈お願いだから死んでてくれー〉
〈魔族さんの運の尽きは、この二人を相手にしてしまったことやな〉