軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第106話 包丁としては完全に失敗作で草

「うーむ、折れてしまったか」

俺が愛用していた牛刀包丁。

魔族の背中に全力の一撃を叩き込んだ際に、根元からぽっきり折れてしまったのだ。

「ふふふ、残念でしたねぇ? わたくしを倒す千載一遇のチャンスだったというのに」

包丁の刃渡り部分は、魔族の背中に突き刺さった状態で止まっていたが、魔族はそれを摘まんで引き抜いた。

〈惜しい!〉

〈半分までめっちゃ斬れてるのに〉

〈折れさえしなければ……〉

〈いやあれだけ斬られてるのに痛そうにないのなんで?〉

「まぁ、仕方がないですね。ただの鋼の包丁ですし」

〈え、あの包丁、鋼製なん……?〉

〈てっきりダンジョン産の希少素材で作られてるとばかり〉

〈ただの鋼の包丁で深層のボスとか斬りまくってたってこと?〉

〈そんなんすぐ折れるやろ!?〉

一応、強度を高めるための魔法付与をこれでもかと施し、さらに俺の闘気で保護してもいたのだが……。

もちろん量産品なので、幾らでも替えが効く。

俺は同じ包丁を取り出そうとして、ふと思い直す。

「っと、そうです。せっかくなのでこれを使ってみましょう」

代わりに手にしたのは、黄金色に輝く美しい包丁だ。

〈きれいな色〉

〈今度こそダンジョン産?〉

〈ミスリルかな?〉

〈もうちょっと銀色っぽいだろミスリルは〉

〈アダマンタイトは黒だし……〉

「オリハルコン製の包丁です」

〈お、お、お、オリハルコン!?〉

〈冥層でしか採掘できないっていう伝説の!?〉

〈そんな包丁あるならもっと早く使えよ!〉

〈そもそもオリハルコンを包丁にするなwwww〉

「あまりにも斬れ過ぎるため封印していたんですよ。すっかり忘れてましたけど、いま思い出しました」

〈お、おう〉

〈斬れ過ぎるって……〉

〈なんか怖い〉

〈誰が作ったんだ?〉

〈確かに製作者が気になる〉

〈ドロップ品では?〉

〈さすがに包丁なんてドロップしないだろwww〉

〈けど、オリハルコンって硬すぎて加工ができないって聞いたんだが〉

「えーと、皆さん、できるだけ離れていてください! 巻き込んでしまうかもしれないので!」

念のため周囲に呼びかけておく。

「……この包丁だと勝手に遠くまで斬撃が飛んでしまうので」

〈なにそれ怖すぎ〉

〈ただの鋼の包丁でも斬撃飛ばせるくらいだもんな〉

〈周囲の人まで無差別に斬り殺しかねないわけか〉

〈そりゃ封印するわwww〉

〈包丁としては完全に失敗作で草〉

慌てて探索者たちが距離を取る中、魔族は初めて驚きの表情を浮かべていた。

「そ、それはまさしく、オリハルコンの輝き……まさか、人間がオリハルコンの武器を持っているとは……」

〈魔族がビビってる?〉

〈やっぱオリハルコンってすげぇんだ〉

〈これなら勝てるかも?〉

〈鋼の包丁でダメージ与えてたくらいだもんな〉

俺は試し斬りとばかりに、オリハルコンの包丁を振るう。

すると魔族の腹部がぱっくりと割れた。

「おおっ、さすがの斬れ味だ」

〈今めっちゃ軽く振っただけだよな?〉

〈背後の木も斬れてる!?〉

〈これは封印して正解〉

〈オリハルコン製のまな板が必要だなwww〉

「くっ……」

俺がオリハルコンの包丁を手に躍りかかると、魔族は黒い光球で応戦してきた。

それをまとめて一刀両断し、真っすぐ魔族へと迫る。

「……少々高性能の武器を持った程度で、随分と調子に乗っていますねぇ!」

繰り出した斬撃を、濃密な黒い光を纏った魔族の腕が受け止めた。

〈防御した!?〉

〈マジか〉

〈オリハルコンの包丁でも無理なの?〉

〈あの黒い光なんなん?〉

だが俺の包丁はあっさりその光をも斬り裂き、そのまま魔族の片腕を刎ね飛ばす。

〈あ〉

〈通じた〉

〈ばっさり〉

〈めっちゃ斬れて草〉

「な……っ」

まさかここまで簡単に切断されるとは思っていなかったのか、絶句する魔族へ、俺は追撃を見舞う。

包丁を横に薙いで胴を輪切りにし。

ザンッ!

返す包丁で右肩から左脇まで斬り裂き。

ザシュッ!

さらに脳天から股間まで一直線に斬り落とす。

ズバンッ!

〈あ〉

〈へ〉

〈お〉

〈マ?〉

〈これは死んだ〉

〈さよなら魔族〉

〈強ええええええええええええええっ!〉

〈すげえええええええええええええっ!〉

〈やべえええええええええええええっ!〉

〈ニシダ最強!〉

〈え、もう終わったん!?〉

〈マジで斬れ過ぎで草〉

〈誰だよニシダにこんな危険な包丁を渡したやつは?〉

バラバラになった魔族の身体が地面に崩れ落ちて転がった。

「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」」

歓声を上げたのは、遠くから俺と魔族の戦いを見守っていた他の探索者たちだ。

〈さすが俺たちのニシダだぜ!〉

〈神宮寺セイアを圧倒した魔族を惨殺するとか……〉

〈これでニシダが最強って証明されたな〉

〈ほとんど武器の力では?〉

〈所有してる武器も含めて強さだろーが〉

〈鋼の包丁でも普通に魔族とやり合ってたしなw〉

みんなが勝利を確信しているが……生憎とこれで終わりとは思えなかった。

俺が少し前に与えた傷が、いつの間にか癒えているのだ。

それにダメージを受けても痛がる素振りがまったくなかったことも気にかかる。

「気を付けるのぢゃ。そやつ、さっきからずっと生者の気配がせぬからの。むしろわらわたちに近いものを感じるのぢゃ」

そこへ卑弥呼がやってきて、わざわざそんな忠告をしてくれる。

俺は頷いた。

「そうだな。俺もさっきから色々と違和感があって疑っていたところだ」

と、そのとき。

「ふふ……ふふふふっ……」

〈死体が笑い出した!?〉

〈頭真っ二つなのに……〉

〈グロ過ぎ〉

〈どうやって声出してんの?〉

〈そんなことよりまだ生きてるのかよこいつ!〉

〈こんな状態で生きてるとかあり得る?〉

いきなり魔族が笑い出したのだ。

両断された口でどうやってる声を出しているのか……。

「残念でしたねぇ。実はわたくし、この程度では死なないんですよ」

「……そんなところだろうと思った」

俺は軽く息を吐いてから、

「お前、自分自身をアンデッド化させているな?」