軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第104話 言葉は分かるのに理解できんとはこれいかに

〈なんだよ、あの化け物!?〉

〈神宮寺セイアだけじゃなく、あの強そうなドラゴンまで瞬殺したんだが!?〉

〈佐倉もかもヤバい!〉

〈早く逃げて!〉

高橋竜牙のドラゴンチャンネルの視聴者たちが、阿鼻叫喚のコメントを書き込む中、魔族の接近を許した佐倉もかは、

「貴様ああああああああああああっ! ぶっ殺してやらあゴルアアアアアアアアアアアアっ!!」

激高して魔族に躍りかかっていた。

〈ええええええええ〉

〈佐倉もかって怒るとキャラ変わるんや〉

〈別人で草〉

〈いや竜騎士がドラゴンなしに自ら突っ込むとか〉

〈どこかの誰かさんみたいやな〉

〈竜繋がり?〉

ランスを手にした佐倉もかが、渾身の突きを繰り出す。

それが魔族の腹部を直撃するが、彼女の攻撃はそれだけでは終わらない。

「オラオラオラオラオラオラオラオラアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

裂帛の叫びと共に放たれる凄まじい連続突き。

生み出されるその衝撃波だけで、背後の展望タワーの壁がガリガリと抉られていった。

〈す、すげぇ〉

〈ドラゴン抜きでもあんな強いんや〉

〈そりゃ伊達にSランカーやってないだろ〉

〈このまま魔族を倒してしまう……?〉

だが突然、ランスが停止した。

魔族がその先端を掴み、止めていたのだ。

「……クソッタレが! 無傷かよ、化け物めっ!」

思わず口汚く吐き捨てる。

彼女の突きを何度も浴びていたはずの魔族は、平然と笑う。

「ふふふ、人間にしては割と良い線いってると思いますけどねぇ?」

直後、魔族の放った黒い光が佐倉もかの身体を貫いた。

「が……は……」

〈Sランカー二人が、手も足も出ないとか〉

〈深層ボスをあんなにあっさり倒したのに……〉

〈なんなん、あの魔族とかって? 魔物とは違うん?〉

〈討伐記録とかあんの?〉

〈海外だと遭遇して命からがら逃げ帰ったって報告がいくつか〉

〈倒せるわけねぇだろ〉

〈おい、竜牙、また怒って特攻とかやめろよ!?〉

〈返事なし〉

〈竜牙どしたん?〉

〈時間止まった〉

〈恐怖で動けないとか〉

「お、終わり……だ」

一部始終を目の前で見ていた高橋竜牙は、震える声で呟いた。

「あの二人ですら、まったく歯が立たなかった……残っている全員で……戦っても……勝ち目は……ない……あんなのが……地上に出てくる、なんて……」

〈こんな竜牙はじめて見たんやが〉

〈たぶんまた応援が来るから、元気だそ?〉

〈応援って、Sランカーがそんなにバンバン集まれんだろ〉

〈ダンジョン探索中の場合もあるもんな〉

「ふふふ……いいですねぇ、その絶望と恐怖に歪んだ顔! わたくしの大好物ですよ。……ですが、せっかくですので、もっと希望を失っていただきましょうかねぇ」

〈嫌な予感しかしない〉

〈怖い〉

〈こいつ悪魔かよ〉

〈魔族だって〉

魔族が黒い光を放つ。

それがなぜか死んだ深層の魔物に直撃したかと思うと、

〈え、動き出した……?〉

〈治癒魔法?〉

〈いや、普通に死んでたろ?〉

〈胴体ごっそり抉られてるんやが?〉

〈まさか……アンデッド?〉

「わたくし、こう見えて死霊術が得意でしてねぇ」

さらに魔族は無数の黒い光を射出すると、すべて絶命した魔物に着弾。

アンデッドと化し、次々と起き上がっていく深層の魔物。

〈おいおいおいおいおい〉

〈この魔族、死霊術まで使えるんかよ!?〉

〈倒したはずの深層の魔物が復活するとか……〉

〈早く外国に逃げた方がいい〉

〈俺もう空港に向かってるぞ〉

ドラゴンチャンネルの視聴者たちが次々と悲痛のコメントを上げていく。

この絶望の状況下で、現場の探索者は呆然自失といった様子で、迫りくるアンデッドの群れを前に誰も動くことができないでいる。

「ふふふふふふっ、これではもはや、どっちが死んでいるのか分からないですねぇ! ぜひ泣いて喚いて逃げ惑ってくださいよ! やがてこの世界がアンデッドの楽園になるまで、このわたくしを楽しませてください!」

そんな中、僅かな希望を口にする探索者がいた。

高橋竜牙だ。

「……この化け物に、もし対抗できる人がいるとしたら……あの人くらいしか……」

〈あの人って、ニシダ師匠のこと?〉

〈そうだ、まだニシダ師匠がおるやん!〉

〈けど神宮寺セイアでも歯が立たんかったんだぞ?〉

〈ニシダ師匠って神宮寺セイアより強い?〉

〈実績的にはかなり離されてるが……〉

〈師匠はブランクあるからな〉

〈ブランクあるのに国内最強の探索者より上ってことはないだろ?〉

〈仮にそうならもはや定食屋なんてさせてる場合じゃないwww〉

〈師匠こっちに向かってる途中らしいぞ〉

〈マジか。それは期待大〉

〈最後の希望〉

〈いや東京からだろ? さすがにもっと時間かかるだろ〉

〈仙台にいたから早いはず〉

〈飛行機の上に乗って向かってるっぽい〉

〈上に?〉

〈どゆこと?〉

〈言葉の通り。飛行機の上に乗ってくる〉

〈日本語でおけ?〉

〈仙台空港から飛び立った飛行機に地上から飛び乗ってこっちに向かってる。これで分かれ〉

〈余計分からんのやがwwwwww〉

〈それな〉

〈言葉は分かるのに理解できんとはこれいかに〉

と、そのときだった。

空から何かが猛スピードで降ってきたのは。

〈隕石!?〉

〈こっちに落ちてくるぞ!?〉

〈隕石にしては細長い?〉

〈あれ、人じゃね?〉

〈まさか〉

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!

凄まじい音と共に濠から水柱が舞い上がる。

どうやら濠に落下したらしい。

飛び散った水が豪雨のように降り注ぐ中、濠の底から跳躍して姿を現したのは。

牛刀包丁を手にした一人のおっさんだった。

〈ニシダ師匠おおおおおおおおおおおおっ!〉

〈ニシダ師匠おおおおおおおおおおおおっ!〉

〈ニシダ師匠おおおおおおおおおおおおっ!〉

〈ニシダ師匠おおおおおおおおおおおおっ!〉

〈ニシダ師匠おおおおおおおおおおおおっ!〉