軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

32「お裾分けでまもんまもんじゃね?」②

「まもんまもん! それはよかったでまもんまもん! さまたん様の畑で取れたキャベツは甘くて美味しいまもんまもん!」

「やったー! おすすめの食べ方は?」

「柔らかくもシャキッとしてまもんまもんなキャベツなので、サラダにしてまもん、炒めてまもん、漬物にしてもまもんまもん!」

「いやぁ、なんかすみませんねぇ。青森からおすそ分けに来てもらっちゃって」

近所と呼ぶには距離がありすぎる。

マモンくらいの魔族になれば、数分で飛んで来られる距離だろうがそれでも、だ。

「気にすることはないでまもんまもん」

「そう?」

「俺は強欲だが気遣いのできる魔族でもある。ちゃんと由良さん家だけじゃなくて、七森さん家と三原さん家と水無月さん家と神無さん家と安倍さん家の分のキャベツもあるでまもんまもん!」

「あらキャベツたくさん! 素敵!」

「――まもんまもん!」

ドヤ顔をするマモンであるが、良識がある水無月家の面々が魔族の幹部が育てたキャベツを受け取ってくれるだろうか、と悩む。

むしろ、呪物か何かとしての価値の方が高いのでは、と考えてしまった。

(やだなぁ、呪物――まもんまもんキャベツとかが裏で売買されてたら)

しかも、マモンが育てたが、畑はサマエルのものだ。

大悪魔がふたりも関わっているキャベツが普通なわけがない。

「ところでまもんまもん由良夏樹よ」

「俺がまもんまもんみたいに言わないでくれる?」

「猪は好きでまもんまもん?」

「話聞いてよ! ていうか、なんで猪? 猪に好きも嫌いもないって」

「そうか。癖があるがうまいまもんまもんだぞ?」

「食材としてだった!」

「まもんっ、俺は強欲な魔族であるがグルメな魔族でもある。近所の高橋のおじいちゃんが捌いて下ごしらえしてくれたまもんまもんな猪はうまいぞぉ!」

「猪なんて食べたことがないからなんとも言えねー」

「まもん!?」

「いや、そんな目を丸くして驚かなくても……そんなに猪食べたことがないのが意外かな!?」

最近では道の駅などで猪や鹿などのジビエ系の肉が取り扱われるとは知っている。

あくまでも知識だけであり、食べる機会もなければ、進んで食べたいと思うことはなかった。

「まもんまもん。現在、高橋のおじいちゃんから素手で猪を狩る技をご教授いただいているでまもんまもん。見事技を習得した暁には、美味い猪をご馳走するでまもんまもん」

「待って、待って待って、いろいろツッコミどころが多すぎるんだけど! まず高橋のおじいちゃんすげえな! 素手で猪狩るの!? 猪って猟銃とか罠じゃないの!? あと、あんたは魔族なんだから魔力使えば一撃でしょうが!」

「まもんっ、わかっていないな、由良まもんまもん夏樹よ!」

「おい、こら。まもんまもんを俺のミドルネームみたいに言うんじゃねえよ!」

「魔力を使うと味が落ちるでまもんまもん!」

「そうなの!?」

魔力で獲物の味が落ちるとは知らず驚く夏樹に、マモンはそっと視線を逸らした。

「おい、嘘つくんじゃねえよ! 純粋な中学生は騙されやすいんだぞ! この間だって、美脚系動画配信者を名乗る方から一緒に仕事しないかってメッセージきて危うく騙されそうになったんだぞ!」

「さすがにそれはまもんまもんなんですけどぉ」

「引くなよ! 男の子だもん! そういう過ちだってあるじゃん! サタンさんが気づいてくれなかったら、今頃お母さんに怒られていたよ!」

「……まもんまもん。ちゃんと一番怖いのがお母上なところが中学生しているなーって安心したでまもんまもん」

「大きなお世話だよ!」

初めて出会ったときから思っていたが、マモンは独自の世界観があるので一緒にいて疲れる。

「さて、そろそろ青森に戻るときが来てしまったでまもんまもん」

「はいはい。早く帰ってどーぞ。キャベツもありがとうね」

「まもんまもん! そろそろさまたん様が猪で焼豚を作る手伝いをしないといけないので、いずれ、またでまもんまもん! チャーシューの出来がよかったら届けにくるでまもんまもん!」

「おう! 楽しみにしているねー!」

風呂敷を置いたマモンは、「最後に」と夏樹に告げた。

「まもんまもんの二番煎じのようなアマイモンが登場しても、このマモンこそが王道にして至高であるまもんまもん!」

「どうでもいいよ! 実は気にしてたのかよ!」

「まんたまんたにだって負けないんだからねっ、まもんまもん!」

「うるせえよ! 無理して高い声出すな!」

「それでは、失礼する。まもんっ!」

とうっ、とマモンが縦に跳躍すると夜空に消えていった。

「どっと疲れた。キャベツひとつもらうだけで、なんかすごく疲れた。今度こそ、家の中に入るからね? いいよね? 本当に入っちゃうからね?」

次のイベントが来るのではないかと挙動不審になった夏樹は、その後十分ほど家の前でそわそわしていたが何も起こらないので肩を落として玄関を潜った。

――キャベツは各ご家庭で喜ばれました。