軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11「キラキラしててもいいんじゃね?」①

ルシフェルを自称する青年は、グレーのスーツを着こなした、イケメンだった。

小梅のことをマイエンジェルと言っているので知り合いだとは思われる。

(んん? 力がなんとなく小梅ちゃんと似ているけど、ご家族?)

魔力と神力というわずかな違いを感じるが、伝わってくる力の感覚が小梅とルシフェルはとてもよく似ていた。

「げっ、クソ兄貴!?」

小梅の口から、ルシフェルが兄だとわかり、夏樹と銀子は驚いた。

だが、よく考えると、父親は堕天してサタンになっているのだ。兄もついでに堕天していても驚くことではない、と冷静さを取り戻そうとする。

夏樹はさておき、銀子にとっては四日ほど前までちょっと霊能力が使える可愛い婦警さんだったのが、異世界帰りの勇者と、天使、宇宙人、果てにはサタンの側近を名乗るルシフェルまで現れれば驚くなと言うほうが難しい。

人間ふたりの動揺はさておき、ルシフェルは小梅に視線を向けると、クールな印象を受ける整った顔を破顔させた。

「マイスウィートエンジェル小梅ちゃんの大好きなお兄ちゃんだよ!」

「あ、大丈夫っす。これはただのシスコン兄貴っす」

「うん。シスコン兄貴として扱おう」

夏樹と銀子は、名の知れた魔族ではなく、小梅のお兄さんとして扱うことに決めた。

精神的にもそのほうが楽だ。

「誰が大好きじゃ! おどれはクソ親父と一緒に魔界でのんびりしておけばいいんじゃ! そもそも人間界に力のある魔族が来るのはルール違反じゃろ! ゴッドにチクるぞ!」

「そのゴッドがルール違反をしてるんですけどね。あと、君もですよ。マイシスター」

「……ルールとは破るもんじゃ。ゴッドが悪い」

「そうですね。あのクソゴッドが悪いですね」

うんうん、と頷き合う兄と妹。

夏樹としては、ルシフェルから敵意を感じないことや、小梅の兄を玄関にいつまでも立たせておくのもどうかと思ったので、

「とりあえず、上がってください」

家の中に招いた。

「……ありがとうございます。あ、これはつまらないものですが」

「お気遣いくださってありがとうございます」

ルシフェルは、夏樹に林檎が入ったバスケットを渡す。

受け取った夏樹は、おや、と思う。

不思議なことに林檎から魔力を感じるのだ。

「魔界のとある街の名産の果実です。ひとつ食べると魔力がみるみる回復するアポォーです」

「林檎ってことですか?」

「いえ、アポォーです」

「なんで巻き舌……まあ、いいや。どうもです」

「あ、ちなみに、そのアポォーを巡って人間が殺し合いをしたことがあります」

「そんなもん持って来んな!」

食べる機会はなさそうだが、土産は土産なので頂戴しておく。母が食べないように、あとでアイテムボックスにしまっておこうと決めた。

「どうぞ、いいお茶ですが」

「これはこれはありがとうございます。ジャパニーズグリーンティーは大好きです」

なぜ外国人のような反応なのだろうか、と首を傾げてしまう。

流暢な日本語を話しているのに、ジャパニーズグリーンティーだけ英語っぽいカタコトになる。

もしかして、小梅のようにキャラ付けでもしているのだろうかと思い、ツッコミはしなかった。

「それで、どうしてわざわざウチに?」

「待つんじゃ!」

茶の間の丸テーブルを囲んで腰を下ろし、夏樹が用件を聞こうとするとなぜか小梅がまったをかけた。

「どったの?」

夏樹が尋ねると、小梅は天使のくせに悪魔のような笑みを浮かべた。

「まずは自己紹介じゃ」

「ま、マイシスター! 私はすでに名乗ったのですが」

「ルシフェルはおどれの役職名みたいなもんじゃろう! ちゃーんと名乗るんじゃ。俺様の兄だと言うのなら、ルシファーさんちのお名前があるじゃろう!」

「し、しかし」

「ほれほれ、言ってみぃ! ちなみに、俺様の小梅様というお名前は、夏樹と銀子が感涙するほど素敵なお名前じゃったぞ!」

「いや、感涙はしてねーっす!」

「うん。してないよね。いい名前だけどさ」

察するに、ゴッドからのペナルティーによってルシフェルも、和名が名付けられているのだろう。そして、本人はその名を好きではない。

「あの、小梅ちゃん。無理に名乗らせなくても」

「そうっすよ。ルシフェルさんでいいじゃないっすか」

「いーや! 駄目じゃ! 名前は大事じゃ!」

小梅が無理やり名乗らせようとしている姿を見ていると、不思議と夏樹と銀子もルシフェルの名前に興味を持った。

もともとノリのよいふたりだ。小梅に協力するため、名乗り始めた。

「こんにちは。由良夏樹です!」

「どうもっす! 青山銀子っす!」

にっこり笑顔で自己紹介をすると、夏樹と銀子は声をそろえた。

「あなたのお名前は?」

ルシフェルは苦虫を噛み潰したような顔をするが、名乗るのが礼儀だと考えたのだろう。屈辱に満ちた顔をして、か細い声で名を告げた。

「……ルシファー・ 一心(ぴゅあ) です」

現代日本人もびっくりなキラキラネームに、夏樹と銀子は「うわぁ」と気まずい顔をした。

確かに名乗りたくない、納得できた。