軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10「魔族がいきなり来たんじゃね?」

「えげつないっすねぇ、夏樹くん。高校だったら退学案件っすよ」

「いんや、中学校でもあかんじゃろ。親に連絡行って、下手すりゃ停部じゃろう。いや、廃部するかもしれんのう。最悪、転校する奴も出てくるじゃろうて」

帰宅した夏樹は、リビングでのんびりしていた銀子と小梅に学校での出来事を語った。

銀子も小梅も悪い顔をしている。

夏樹も同じだ。

これで、松島明日香が転校とかしてくれれば、夏樹の日常がひとつ平和になること間違いない。

「それにしても水無月都さんも変わったっすね」

「やっぱり知ってるの?」

「もちろんっす。水無月家と警察は持ちつ持たれつっすからね。何度かご挨拶もしたことありますが、良くも悪くも名家のお嬢さんって感じでしたから。教師にチクって追い込むとか、想像できねーっす」

銀子は都と接点があったようで、彼女の変わりように驚いていた。

夏樹も都がとても変わったとわかっているが、今の都は友人として好ましい。

姉の澪とも関係を修復しているようだし、姉妹が今後より良い関係を築いてくれることを願う。

「ふたりはどうだったの? 酒屋さん行ったんでしょう?」

「それがっすね、聞いてくださいっす!」

「大漁じゃったぞ!」

「私は五千円って言ったのに、このお天使様は四千円、五千円の酒を五本も買いやがったっすよ!」

「ばっかもん! 基本、プレ値になっとる酒が希望小売価格で売っておったんじゃ、買うじゃろう!」

「気持ちはわかりますけど、そのお金は私のっすから!」

「細かいのう」

「細かくねーっす!」

「じゃが、飲むじゃろ?」

「そりゃ飲みますよ! 私のお金で買ったんっすから!」

どうやら想定外のお金を使わされたようで、銀子は肩を落としている。

対して、小梅はホクホク顔だ。

銘柄を聞かされたが、お酒を知らない夏樹には興味がなかった。

「はぁ。お酒のことはいいとして、春子さんから連絡がありましたっす」

「――今夜はすき焼きのようじゃぞ!」

「やったー! 肉だー!」

「肉じゃ肉じゃー! すき焼きは日本のご家庭が一番うまいってゴッドが言っていたんで楽しみじゃ!」

「なんすか、そのすき焼きに詳しい的なゴッドは」

「すき焼きの守護天使を選抜するとか言っておったぞ」

「もういいっす。ゴッド関連はお腹いっぱいっす」

ゴッドのフリーダムなご様子に、銀子は疲れた顔をして寝っ転がった。

「あ、そうそう。そういえば、土地神さんが今度来るんだって」

「新しい方っすか?」

「うん。そうみたい」

「珍しいのう。神族は割と怠惰じゃから、土地神が一匹消し飛んだところで代わりをこんな早く送ってくるもんかのう?」

「……恐らくっすけど、神族には夏樹くんの神殺しがバレているんでしょうね。だから、警戒を兼ねてそれなりに戦える神を送ってくる可能性も」

「いや、無理じゃろ。気軽に人間界に来られる神程度が夏樹に勝てんじゃろう」

新たにやってくる土地神に関して、意見を言い合うが、結論は出ない。

後手に回るのは嫌だが、土地神が来てから考えるしかないのだ。

夏樹としては、自分から率先して敵対するつもりはない。

無論、自分の今の生活を脅かされなければ、だが。

「それにしてもお腹空きましたね」

「まだ五時前だよ?」

「俺様も腹ペコじゃ。銀子がケチなので、ハンバーガーしか食わせてくれんかった」

「酒に金使わなけりゃもっと食べてもよかったんすけどね!」

睨み合うふたり。

なんだかんだと相性が良いようで、うまく行っていることに夏樹は頬を緩ませた。

久しぶりの中学校で、不快な思いをしたが、銀子と小梅を見ていると心が洗われるようだ。

「――ん?」

ほっこりしている夏樹は、違和感を覚えた。

「夏樹くん?」

「どうしたんじゃ、夏樹?」

銀子と小梅は気づいていないようだが、夏樹は家の前に極限まで抑え込まれた魔力を持つ誰かがいることを感じ取った。しかも、その魔力はかなり大きい。まず人間ではないだろう。

「――来る」

ピンポーン、とチャイムが鳴った。

「あら?」

てっきり外から襲いかかってくるのではないかと警戒していたが、まさかチャイムを鳴らして堂々と来るとは思わず、肩透かしをくらう。

だが警戒はやめない。

「んん? なんじゃろ、どこか懐かしい気がするんじゃが」

小梅がそんな呟きをしている間に、夏樹はインターホンに応じた。

「はい、どちら様ですか?」

「約束なく訪問してしまい申し訳ありません。私は、ルシフェル。魔界にて魔王サタン様の秘書をしている、七つの大罪の傲慢を司る魔族です。本日は、マイエンジェル小梅がお世話になっていると聞いてご挨拶に参りました」

夏樹、銀子、小梅が口を開けて唖然とした。

突然すぎる、魔界のビッグネームの来訪にどうすればいいのかわからなかったのだった。