軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

プロローグ「ちょっと過保護なんじゃね?」

――魔界、某所。

「今日も小梅ちゃんは可愛いなぁ。見てみろよ、俺の天使を」

白いスーツに身を包んだ、中年男性がスマホを片手にだらしない顔をしていた。

その男性とは魔界と魔族を統べる魔王サタンだ。

本名はルシファー・太一郎。

神に逆らい堕天したあとは、サタンを名乗っているのだ。

「魔王様。小梅が美しい天使だということは全世界が、いえ、数多の並行世界の果てまで知られていることです」

「あ、うん、そこまで言ってないけど、あ、はい、すみません。睨まないでください」

サタンさえ怯える眼光で睨みつけるのは、息子であり魔界の幹部のひとりでもあるルシフェルだった。

灰色のクラシカルなスーツを着こなし、ブロンドの髪を七三分けにしている美青年のルシフェルの本名はルシファー・ 一心(ぴゅあ) だ。

今でこそキラキラネームは数多く存在するが、祖父であるゴッドによって「絶対に未来ではやりますから」と紀元前に付けられて以来、グレて堕天した経緯を持つ。

ちなみに彼は現代でも「ぴゅあって……ぶふっ」と部下に笑われてはルシフェルの名にふさわしく大暴れしている。

傲慢を司るはずが、どちらかと言うと憤怒が凄まじいのだ。

ルシファー家の長男に生まれ、名前のせいで堕天するまでは天使たちの学校で首席で生徒会長まで務めていた。

今でもその優秀さから、魔界に飽きてしまった父サタンの補佐をしている。

「……ところで魔王様。小梅のSNSに一緒に載っている少年と青年はどなたでしょうか?」

「見たところ、少年と青年だな」

「……真面目にお願いします」

「冗談だ。少年のほうは人間だろう。顔つきからして日本人だな。イケメンのほうはわからん。アメリカ人っぽいな……なぜかメキシコ州ロズウェルで見かけそうな顔をしているな」

「意味がわかりません。私が気にしているのは彼らがどこの誰で、小梅とどんな関係かということです!」

「そりゃ、お友達だろう?」

「ははははは! 魔王様も面白いことをいいますね。小梅はお淑やかな淑女ですよ。異性の友達など、まだ早いっ!」

ルシフェルから魔力が荒ぶり、サタンの邸宅を揺らした。

上級魔族が千人掛かりで攻撃してもびくともしない邸宅をたったひとりの魔族の魔力で揺らすのだから、ルシフェルの力がとんでもなく強いことがわかる。

「本当にお友達と言うのなら、菓子折りを持ってご挨拶にいかなければなりません。あの気弱な小梅と純粋に仲良くしてくれているのであれば、兄としてお礼を言いたいですしね。しかし! もしも不埒な想いで近づいているのなら――残念ながら日本ごと消えてもらいましょう」

「範囲がでけえな! 待て、待て待て、落ち着け。魔族でも特に力が強い中級以上の魔族は人間界に勝手に行っちゃ駄目なの」

「建前でしょう。神々や、魔族が人間界で老後の生活を楽しんでいることは知っています。ご丁寧にSNSにまでアップして、みっともない。特にゴッドです。なんですか、あのゴッドは。コーヒーショップで列に割り込まれてぷんぷんです、もう少しで天罰しちゃうところでした。とか呟いているんですよ!」

「ゴッドはゴッドだから放っておけ」

サタンが苦労して、部下であり息子であるルシフェルを宥める光景はいつものことだ。

普通は逆なんだろうが、割とサタンは苦労性だった。

「しかし、家に引きこもって本ばかり読んでいた小梅が人間界にいるとは……神界には堕天した身で入れませんが、人間界なら可能ですね。よし。久しぶりに小梅に会いにいきましょう。そして、この一緒に楽しそうにしているご友人たちにもご挨拶しましょう」

「お、おい、待――」

サタンが止める間も無く、翼が羽ばたく音がするとルシフェルが消えていた。

「まったく馬鹿息子め。あ、もしかして、小梅ちゃんに勝手に決めた婚約者候補がいるとかバレたら……下克上されない?」

不意にサタンは、魔界の各地を任せている魔族の息子だか孫だかが、小梅に興味を持って結婚したいと申し出てきたことを思い出した。

どうせ堕天させる予定だったので、いずれ魔族の力ある誰かに嫁がせようと思っていたので、小梅に勝てたら良しと言った記憶がある。

気づいたら、もう勝った気になっているのか婚約者気取りだった。

若い魔族らしいので傲慢なのはいいことだ。しかし、このことがルシフェルの耳に入れば、その若い魔族ごとサタンはぶっ飛ばされるだろう。

他にも天使から結婚の申し出があるとも聞いている。

「小梅ちゃんだって人間的には行き遅れだからパパは気を遣ったんだけど……面倒なことになりそうな予感しかしねぇ。仕方がない、俺も日本に行くか。ゴッドがいるから行きたくなかったんだが、日本は神にも魔族にも人気の土地だから力を抑えれば俺でも問題ないだろう」

もちろん大問題であるが、そのことを指摘する者は残念ながらこの場にいなかった。

サタンは、ルシフェルを止めるという良い理由を見つけて、暇で退屈な魔界から人間界に出向くことを決めた。