作品タイトル不明
52「聖剣さんの過去じゃね?」⑤
「ま、まあ、ええんじゃないか! なあ! 人の好みはそれぞれじゃ!」
「そ、そうっすね! 世の中には美脚が好きだったり、競泳水着が好きだったり、人外娘が好きだったりと様々っすからね!」
「……えー、あれが私の半身なの? もしかして、私の勘違いとかない?」
小梅、銀子がなぜかフォローし、聖剣さんは名無しと自分との違いに驚いている。
千手、東雲はそれぞれ首を横に振っている。
「――ノーコメントで」
「じ、自分もノーコメントを貫かせてもらうんよ」
ギーゼラだけが、名無しに優しい笑顔を浮かべる。
「若い頃は、つい外見に左右されることがある。あれがいい、これがいい、とな。しかし、ふとしたことで相手が愛おしくなることがあるのだ。――それが、愛だ!」
魔王ギーゼラの言葉が、小梅たちに何かを感じさせた。
小梅、銀子、聖剣さんが魔王に手を合わせ、拝んだ。
「……いや、姉さんたち……青山以外はみんなとしう――あ、なんでもないです。申し訳ありません!」
失言しかけた千手に鋭い視線が向けられ、あと少しというところで口を閉じた。
千手は冷や汗で額を濡らし、電子煙草を持つ手が震えていた。
「……あぶねえ、失言するところだったぜ」
「ほぼしとったけどね!」
「由良にツッコミを入れる感覚で、つい、な」
「あ、あはは……ところで夏樹くんはどなんしたん?」
「そういえば静かだな」
千手たちが夏樹を探すと、
「や、やばいよ聖剣さん! その設定はずるい! くっ、俺の左手に封印された呪われた力が」
未だ、聖剣さんの過去を知って身悶えている姿を見つけた。
「絶好調だなぁ、由良ぁ! あと呪われた力とか言うな! 俺に響くじゃねえか!」
魔眼を持つ千手が目を抑えながら夏樹の頭を引っ叩いた。
「――っ、あ、あれ、俺の腕に封印された邪竜の力が」
「やーめーろー!」
「夏樹くん、厨二病は誰もが通る道やけど、時と場合を考えようや。ちなみに自分は、呪われて白髪になってまう設定を考えたで」
「おい、安倍東雲! お前がボケたら……まあ、なんていうか、呪われてたもんな。主に女関係で」
「ちょ、それは言わんといて!」
「千手さんだって絶対魔眼関連の厨二ネタあるでしょう!」
「ねえよ!」
妄想から現実世界に戻ってきた夏樹が己の厨二設定を弾みで公開したせいで、男たちが子供じみた言い合いを始める。
「……あんたらあんなのがいいの?」
名無しが、信じられない、という目をして聖剣さんたちを見た。
「ああいうところがええんじゃ!」
「そうっす! ピュアっす!」
「少なくともあんたみたいに見てくれで選んだりしないわよ!」
小梅たちと名無しが睨み合う。
「やれやれ。どちらも子供だな」
「ほっほっほ」
ギーゼラが肩をすくめ、老人が微笑ましそうに笑った。