軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

55「予想外の展開じゃね?」③

「了解っす! つまりぶっ殺していいんですね! お任せください!」

茅から一通りの事情を聞いた夏樹は笑顔を浮かべた。

内心、神を殺しても文句を言われないことに安堵を覚えていた。

「……由良様。茅様のお話を聞いて笑顔でその答えが出てくるとは素晴らしいです」

バックミラー越しに、驚きの視線を向けている柊が皮肉か誉めたのはわからない言葉を発すると、茅が窘めた。

「柊、余計なことを言わないように」

「申し訳ございません。由良様、後日、お仕置きの場を設けさせていただきます」

「結構でーす」

なぜか少し嬉しそうに「お仕置き」を希望する柊に、夏樹はしっかりお断りを入れる。

(個人的には、死にたがっているのなら殺してやるのは慈悲だと思う。土地神だって娘の命を犠牲にしてまで生きていたくないだろうしさ)

「ひとつ聞きたいんですけど」

「なんでしょうか」

「生贄って、なぜ若い女の子じゃないと駄目なんですか?」

口にこそしなかったが、男でも、歳を重ねていてもいいのなら、犯罪者でもなんでも調達してくればいい。

一族の当主の娘を捧げようとしているだけ、あくまでも他に犠牲を出さないようにしていると感心すべきなのか、悪しき風習として残っていることを嘆くべきなのか悩ましい。

「単純に、若ければ穢れが少ないとされています。女性でなければならないことはありませんが、現在水無月家には澪と都しかいませんので」

「どこかから掻っ攫うとか考えなかったんですか?」

「現代でそのようなことはできませんし、するつもりもありません。水無月家は、人々を守る一族なのですから。しかし……娘を父親への生贄にしなければならないような一族は滅ぶべきだと常々考えていました」

「でしょうね」

「……由良様は、気軽に神を殺すとおっしゃっていますが、ご期待してもよろしいのでしょうか?」

縋るような茅の目に、夏樹は頷く。

「任せてください。でも、ひとつだけ」

「なんでしょう」

「水無月家が更地になったら、ごめんなさい。先に謝っておきます」

「……由良様のお力はそれほどまでのものなのでしょうか?」

「あははははは、それはいつかお話しする機会があればということで」

夏樹自身、自分が強いということを自覚している。

だが、どのくらい強いのかと考えるとわからない。

異世界では、魔王と魔神を倒せるほどだ。実質、最強と言ってもいいだろう。

しかし、地球ではどうだろうか。

ルシファーの名を持つ天使と戦えたが、百パーセントの力でぶつかり合ったわけではない。

小梅は、夏樹を襲いながらも人間社会のことを一応は気遣っていた。夏樹もそうだ。全力を出すまでもなかったといえばそうなのだが、それでもお互いに手を抜いていた。

土地神がどのくらいの強さを持っているのか、完全に把握していないが、神と名がつくのならさぞ強いのだろうと思う。同時に、生贄を捧げられなければ力を維持できないのであれば、その力は想像の範疇だろう。

慢心をするつもりはないが、水無月家で探ったときにうっすら感じた力からして、全力でなくとも殺せるだろう。

問題は、力の制御だ。

年単位で時間があれば、調整ができたのかもしれないが、急いだほうがいいだろう。

できることなら、あの場でそのまま殺しに行きたかったが、被害が分からないのでやめた。

「あ、ごめんなさい。もうひとつだけ」

「はい」

「仮にも神がつく土地神を殺しても問題ないんですか?」

「ないとは言いません。しかし、土地神は自然です。いなくなっても他が補うでしょう。しばらくは悪意を持つ者が活動しやすくなるでしょうが、できる限り水無月家の霊能力者たちで対応しましょう」

ただひとつだけ、と茅が続けた。

「土地神が消えれば、神々に夏樹様の存在が知られてしまう可能性があります。そのことを踏まえて、ご判断ください」

「……俺が嫌だと言ったらどうするつもりなんですか?」

夏樹の問いかけに、茅は儚げに微笑んだ。

「心から愛した人です。命を賭して、挑みましょう。もっとも無駄死にでしょうが、なにかのきっかけになるかもしれません」

「……別にいいですよ。もう今さらなんで」

ルシファー・小梅と知り合った時点で、いずれ自分の存在が神々に知られる日が来るだろうとは思っていた。その日が早くなっても、さして問題ではない。

「感謝します。このお礼はどんなことをしてでも」

「あ、じゃあ、ひとついいですか」

「もちろんです。叶えられることなら、今すぐにでも」

「じゃあ、ご相談なんですが……俺の学校に、三原優斗って男子生徒がいるんですが」

いい機会なので優斗のことをチクっておこうと思った。

「三原優斗……ですか。どこかで聞いたことが」

「茅様。都様の学校で、魅了の力を持っている疑惑があった少年です」

「……そういえばいましたね。しかし、調査をした結果、問題なしとなったはずですが」

「昨日、優斗に接触したときに魅了の力を感じたんですよね。力としては弱かったんで、きっかけ程度にしかならないはずですが、性格的に面倒な奴なので対処できないかなと思ったんです」

水無月家にもすでに名が知られていたようだ。

夏樹は驚きを通り越して苦笑するしかない。

調べられた上で、問題ないのなら放置でもいいのだが、今まで面倒をかけられてきたので嫌がらせを兼ねてチクるくらいはしておきたい。

「都が不愉快な生徒がいると言っていました。そのひとりが三原優斗でしたね。こう、ベタベタ触れてくるようですね」

「その接触に魅了の力が少しあるみたいなんですよね。抵抗力があれば問題ないんでしょうけど」

「実際、被害があるのでしょうか?」

「被害というか、ハーレムを繰り広げていて」

「……申し訳ないですが、かつて問題なしと判断されている少年を消すことは水無月家には」

「いえいえ、そういう対処を求めているんじゃなくてですね!」

まさか、茅が夏樹が優斗を消してほしいと言っていると誤解するとは思わなかった。消してくれるのなら、ぜひお願いしたいが、現代社会で人がひとり消えるのは大問題だ。

特に優斗のように良くも悪くも目立つ人間なら、尚更だ。

「失礼しました。ひとつ、手がないわけではありません」

茅の提案を聞き、夏樹はにやり、と笑った。