軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44「真夜中の学校ってテンション上がらね?」①

夏樹は、ひとり夜の中学校の校庭にいた。

理由は単純であり、自宅からそれなりに離れたかっただけだ。

近所の公園などでは思い切り戦えない。

学校の校庭ならば、広くてちょうどよかった。

すでに一連の出来事は月読命に伝え、許可をもらっている。

月読命も、新たな神々の関与を疑いがあるのならば、と中学校に厳重に結界を張ってくれた。

この時点で、結界が強固に貼られた中学校を撒き餌にしたことになる。

同行者はいない。

一登は杏を言葉で説得しようとするだろう。

だが、彼女の性格上、話を素直に聞くとは思えない。

小梅や銀子も同様だ。

言葉を交わす以前に、杏は自分以外の女性を嫌うことが多い。

特に小梅は、以前、杏に夏樹と親しい関係であることを見せつけたこともあるので火に油だろう。

ある意味、誠実なジャックやナンシーならば言葉が届くかも知れないが、力を手に入れたことで何らかの興奮状態にある可能性もある。

ふたりが傷つけられたりする可能性があるのならば、夏樹はそれを良しとしなかった。

「――見事に釣れたんじゃね?」

そして、しばらくして夏樹の前に杏が現れた。

制服姿の彼女は、どこか興奮した様子がある。

「――お兄ちゃん!」

夏樹を見つけ、嬉しそうにする杏の顔はどこか歪んで見えた。

そして、そんな彼女の背後には、昼間邂逅したガープと、見知らぬ少女がいる。

「がぁああああああああああああああああああぷじゃん」

「ガープさんと呼べ。アマイモン様は貴様を見逃したが、やはり俺は貴様を許すことはできない! アマイモン様をマモン扱いし、俺を一時的にとはいえ女の子にしやがった! 服と下着まで揃えてしまった俺の労力と精神疲労、そして使った金を返してもらいたい!」

「そんなこと言ったら、おたくのぜっくんに割られたお皿の弁償をしてほしいんだけど!」

「お皿? 貴様、なにをふざけたことを言っている?」

「てめぇが言うなぁあああああああああああああああああああああああああ!」

言動から察するに、ガープは夏樹に股間を潰された後、いろいろあったようだが、現在は回復したようだ。

きっちり潰せなかったことを後悔するが、今、この場にガープがいるのなら、再挑戦できる。

(今度は潰すどころか、原型すら残さねぇ!)

夏樹が放電しながらガープに狙いを定める。

すると、夏樹とガープの間に、杏が身体をずらした。

「ねえ、お兄ちゃん。杏ね、勇者になったの! お兄ちゃんも勇者なんだよね! お揃いだね! 杏、アテーナー様に選ばれたんだよ。お力を授かり、剣までもらっちゃった! この子ってすごいんだって! あ、でも、まだ杏は試し切りとかしていないんだ。時間が時間だから、杏の悪口を言うクラスメイトは殺せないし、口うるさい一登も、あのクズを育てた親も、みんな殺そうと思ったんだけど、今はお兄ちゃんが一番なの! 杏が助けてあげるね! 聞いたよ。ルシファーって言うんでしょう、あの金髪の女! 可哀想なお兄ちゃん、堕天使に惑わされてるって! アテーナー様が与えてくれた力で、杏はお兄ちゃんを救うの! それで、またお兄ちゃんとパパと一緒に楽しい生活を取り戻すんだ! やり直すの! 全部全部なかったことにして、また初めからね。今度はちゃんと家族になろうね! ふふ、でも、お兄ちゃんなら、杏ね、お嫁さんになってあげてもいいよ。ずっとお兄ちゃんのこと好きだったから、杏はいつでもお兄ちゃんのことを受け入れる準備ができてるからね!」

「ちょっと、タイム。由良夏樹、ちょい、マジで、ちょっと来て。お願い」

長い言葉を吐き出した杏に、ガープはドン引きした顔をしていた。

夏樹を手招きし、無理やり腕を掴んで杏から距離を取ると、そっと耳に口を寄せて呟いた。

「なあ……お前の妹やばくね?」

「わかって連れてきたんじゃないのかよ!? お前、いい加減にしろよ!」

「さすがのガープさんも、ドン引きだよぉ! 嫌だよ、あんな勇者! なんでアテーナーはあんな子選んだんだよ。チェンジさせてくれぇ!」

「知るかボケぇえええええええええええええええええええええ!」