作品タイトル不明
42「なんか勇者とか名乗ってね?」②
夕食を終えて、風呂に入った夏樹はアイスを咥えながら悩んでいた。
「……異世界に着ていく服をどうしよう。学生服? いや、向島愚連隊として特攻服もいいような気が」
「……なんでこやつは毎度毎度斜め上の思考をしとるんじゃろうなぁ。戦いに行くんじゃから、いつもと変わらん服でええじゃろう」
ベッドの上で寝そべり漫画を読んでいた小梅が、床にあぐらをかいて頭を抱える夏樹に呆れた顔をしていた。
「いやさ、俺もお皿をちゃんとゲットしていたら緑色の全身タイツを装備して異世界にこーんにーちはー、しようと思っていたんだけどさ」
「おどれは阿呆じゃろう! 仮にも、ぶっ飛ばした魔王とかと再会するんじゃろう!? あちらさんびっくりじゃろうて!」
「いやいや、俺に負けた奴の心情なんて汲んでやる必要はないから。勝った俺が一番だから。なんなら向こうの世界を支配していた魔神をぶっ殺したんだから、俺が神様でもいいくらいだよ! まあ、その役目はゴッドなんだけどさ! 異世界の奴らもよかったね、俺だったら全員滅ぼす一択だったからね!」
「前々から思っておったが、ゴッドよりも過激な奴じゃのう」
それなりに酒を飲んで、今もどんちゃんしている母や銀子たちの喧騒が茶の間から聞こえてくる。
小梅は乾杯の一杯だけ飲んでから、ずっとお肉を食べていたので、酔っ払った感じはない。
普段なら宴会に参加しているはずの、小梅がなぜ夏樹の部屋で漫画を読んでいるのだろうか、と不思議だ。
(あとちょいちょい、体制を変えては短パンから覗く美脚を見せつけてくる気がするんだけど。魂に焼きついちゃうぅ!)
美脚好きな夏樹に、無自覚なのかあえてやっているのか、長くてすらりとした足をこれでもかと見せつけてくるので、どぎまぎしてしまい思考がまとまらない。
そんな時だった。
「なっちゃん、お風呂おおきに」
ハーフパンツとTシャツというラフな格好な円が、湯上がり姿で部屋にやってきた。
「あ、円ちゃん。おかえりー」
「ただいまー。小梅はんもおじゃましますぅ」
「おう! くつろぐとええんじゃよ」
と言っても、円が生活する京都のマンションとは違い、夏樹の部屋は一般家庭の六畳間だ。
昔から使っている椅子を円の方へ動かすと「おおきに」と礼を行って彼は椅子に座る。
(……それにしても、湯上がり円ちゃんは女の子がラフな格好をしているようにしかみえんのですが! 下手したらリヴァ子さんよりも美少女! しかも、良き御御足をお持ちですねぇ)
普段はゆったりとした服装を好む円だが、彼が線の細い体つきであることは知っていた。
こうして近くで、ハーフパンツから覗く足を見ると、すらりとした細身にバランスの良い脚がこんにちはしている。
小梅には敵わないが、脚が長く細身であるが、引き締まった彼の足は美脚と言っても過言ではないだろう。
「な、なっちゃん、なんでボクの足をそんなに見るん?」
「いや、つい! 申し訳ない。なかなかの御御足をお持ちだったので、つい」
「こーのぉー、美脚好きさんめ!」
「へぶっ」
小梅が枕を投げると、夏樹の顔面に直撃する。
痛くはないが、なかなかの衝撃があった。
おかげで、少し正気を取り戻した。
「ふう。気持ちが落ち着いたよ。明日は、みんなで制服で行こう!」
「全然落ち着いとらんじゃろう!」
「制服? なんでなん?」
「いやさ、せっかく地球代表で異世界に殴り込み行くんだから、服を揃えたいじゃん」
「揃える必要はないじゃろうて!」
「なっちゃんがそう言うなら、ボクはええよ」
「こらっ、円! 夏樹を甘やかしてはいかんのじゃ!」
「でも、制服くらいええんやない? あ、でも、京都に取りに行く時間がないんか」
「そこはへーきへーき! さっき、天照大神様に聞いたら、人数分用意してくれるって!」
「なーんで樽照太神《天照大神》は制服をそんなん持っとるんじゃ!」
小梅の突っ込みが部屋の中に響き渡る。
そんな時だった。
突然、夏樹のスマホが鳴る。
発信者は一登だ。
もう十時近いが、何かあったのだろうかと思い迷わず出る。
「もしもし、一登? どうしたの?」
「夏樹くん、ごめん! あまり聞きたくないだろうけど、杏が勇者になったって!」
「अस्य कः अर्थः!?」