作品タイトル不明
39「覚悟を決めたんじゃね?」
「激おこギャラクシー河童勇者様のお帰りだよ!」
「なーにを言っとるんじゃおどれは?」
帰宅した夏樹は、頬を膨らませながらスニーカーを脱ぐと、玄関まで出迎えてにきてくれた小梅に不思議そうな顔をされてしまった。
「聞いてよ、小梅ちゃん! ぜっくんったら、俺の、俺の運命のお皿さんを亡き者に……ぐすん」
夏樹は語った。
運命のお皿に出会ったこと。
るんるん気分で帰ろうとすると、絶望の神ぜっくんに襲われ、皿を割られてしまった。
殺そうとしたが、魔族の騎士フルカスと戦い、倒すも、ぜっくんはアテーナーの介入によって逃げられてしまったのだ、と。
「突っ込みどころが多すぎてどこから突っ込んでええのかわからんのじゃが。……まず、運命の皿ってなんじゃ?」
「買い出しの後にせともの屋さんに行ったんだけど、そこで運命のお皿さんに出会ったんだ。あのフィット感。まるで俺の頭に載せるために作られたお皿だったと思う」
「……駄目じゃ、聞いてもようわからんのじゃが」
「ギャラクシー河童勇者を名乗るなら、お皿がないと河童さんたちに申し訳ないじゃない!」
「……CDかDVDでええじゃろうて」
「――っ」
「――っ、じゃないんじゃがな! 想像もしておらんかったみたいな顔をするんでない! ついでに聞くんじゃが、嘴はどうするつもりじゃったんか?」
「牛乳パックを加工して」
「なーんで、そこは適当なんじゃ!? こだわるならこだわらんかい!」
夏樹と小梅がそんなやりとりをしていると、茶の間からリヴァイアサンが顔を出し、こちらにやってきた。
「春子ママたちが待ってるよ、夏樹きゅん待ちなんだから、早く早く」
「あ、ごめんごめん」
リヴァイアサンに言われ、家族を待たせていることを思い出した夏樹はスニーカーを下駄箱にしまう夏樹に、
「運命のお皿を失っちゃった夏樹きゅんに、僕からプレゼントがあるよー」
小さな包みを渡した。
「え? なにこれ?」
「夏樹きゅんは前から河童河童言っているから、必要になるかと思って。さ、開けて開けて」
「うん? とりあえず、ありがとう」
河童関連の物なのだろうが、なんだろう、と夏樹はわくわくして包みを開けて絶句した。
包みの中から出てきたのは、バリカンだった。
「――マジか」
ごくり、と夏樹が唾を飲む。
今まで一度も考えなかったかと言えば嘘になる。
正直、「アリだ」と思っている。
ただ、本職の河童さんに対し、真似ばかりしていると申し訳ないとも思っていた。
「おどれはなんつーもんを渡しとるんじゃ!」
「あいたー!」
ごんっ、と小梅がリヴァイアサンの頭に拳を落とす。
「ほれ、夏樹もリヴァイアサンの戯言なんぞ無視して……って、なんでおどれはそんな覚悟を決めた澄み切った瞳をしとるんじゃ!?」
「小梅ちゃん、俺――やるよ!」
「やるなぁあああああああああああああああああああああああ! うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい! 誰かこんかい! 夏樹がとち狂って河童さんヘアーにしようとしとるぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
覚悟を決めた夏樹が洗面所に向かい、鏡の前でバリカンを構えた。
「やめんかぁああああああああああああああああああああああ!」
小梅が夏樹の手を押さえ、茶の間からやってきた銀子と円が夏樹からバリカンを奪った。
「止めないでくれ、みんな! 俺は、河童さんになるんだ!」
「……お馬鹿なことを言っていないで、早くうがい手洗いをしなさい!」
そして、最後に洗面所に入ってきた春子にげんこつをもらったことで、夏樹の暴走は終わったのだった。