軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

47「賑やかな予感がするんじゃね?」

異世界から帰還し、宇宙人との邂逅、天使との戦い、そして宴会を経て翌日。

日本に戻ってきて三日目の夏樹は、母と、銀子、小梅、ジャックとナンシーの六人で朝食の席を確認していた。

「これじゃこれ! 日本の朝と言ったら卵かけご飯じゃろ! 海外じゃと怖くて食えんのよ。なによりも白米が世界一じゃ! 宇宙一と言っても過言ではない! ゴッドですら田植え体験に参加するほどじゃぞ!」

「……ゴッド暇持て余しすぎだろ」

「……ゴッドが農業体験とか、どこでしたんすかねぇ」

かき込むのを通り越して吸い込む勢いで小梅が卵かけご飯を食べて感動している。

銀子は半熟のベーコンエッグを食べ終えて残った黄身の部分をご飯にかけて美味しそうに頬を緩ませている。

ジャックとナンシーは、たっぷりバターを塗ったトーストとスクランブルエッグとコーンスープをゆっくり食べていた。

夏樹も小梅と同じ卵かけご飯だが、味付け海苔を巻いて一口一口を大切に味わっていた。

母は多めにふりかけをかけて、硬めに焼いたベーコンエッグと味噌汁と一緒に食べている。

「あー、お茶まで美味いんじゃー。俺、由良さん家の子供になりたいのう」

「あらあら、嬉しいわ。私も小梅ちゃんみたいな娘なら大歓迎よ」

「そうじゃろそうじゃろ! ――よし、今日から俺は、小梅・ルシファー・由良さんじゃ! よろしく!」

「いや、よろしくじゃないから。居座る気満々じゃん」

「別にええじゃろう! 行く当てがないんじゃ。ちょっとこの町も気になっとるしのう。詳細は、今度話そうではないか」

一応、小梅も一般人の母に霊能や、宇宙人、天使の話をしないように気を遣ってくれているようだ。

母が久しぶりの賑やかな時間を楽しんでいるので、夏樹としてはこれ以上なにも言おうとは思わなかった。

思い返せば、家族が離散してから、唯一友人として遊びにきていた一登も原因が兄にあるのではないかと足を運び辛くしていた。青山署長をはじめ母の友人が遊びにきてくれていたが、どこか遠慮があるように感じた。

そういう意味では、我が家のようにくつろいでいる小梅の存在は、母にとって嬉しいのかもしれない。

「お義母様! なら、私も由良さん家の子になりたいっす!」

「あらあら、銀子ちゃんも大歓迎よ。もともと家族のように思っていたもの。毎日、ご飯を食べにきてもいいのよ。なんなら、うちで暮らしちゃう?」

「――最高っすね! 実は、そろそろ家を出ようかと思っていたんすよ。隠さなければならないブツもありますんで。家賃と食費払うんでお願いしまっす!」

「ふふふ。久志くんとお話ししてみるわね」

にこにこ微笑み、春子はジャックとナンシーにコーヒーを用意した。

「ジャックさんとナンシーさんもいつまでもウチにいていいですからね。もちろん、小梅ちゃんも。普段、夏樹とふたりだけだから、おばさん寂しくて」

「……親切にしていただけて感謝します。ですが、ご迷惑では?」

「迷惑だったら、言わないわ。観光と聞いているから、うちを拠点にしてちょうだい」

「感謝します。さすが、親友のお母様だ。素晴らしい方だ」

「素敵な方と出会えたことに感謝します」

どうやらみんな由良家で生活しそうな流れだ。

家族が四人だった頃は、どちらかと言うと賑やかというよりも面倒事や、気疲れする日々だったが、この面々ならお互いに遠慮することなく気楽に過ごせるだろう。

(とりあえず、パソコンのロックだけは解除されないように難しいのに変えておこう)

いくつか夏樹の秘宝が暴かれ、異性の趣味まで明らかにされてしまったが、まだまだ宝は眠っている。冒険者よろしく部屋を漁る小梅と銀子から隠し切ろうと夏樹は心に決めた。

「そういえば、銀子ちゃんは今日お休みみたいだけど、どうするの?」

「せっかくのお休みなんすけど、ジャックさんとナンシーさんが観光で、小梅さんがついていくというので、私も案内を兼ねてご一緒するっす」

ジャックとナンシーは常識人だが、いつまた霊能力者に擬態がバレて捕縛される可能性もないわけではない。さらに小梅がついていくのなら、下手なことをすれば天使の光の槍で貫かれる可能性がある。いや、さすがにそこまではしないだろうが、天使である小梅の膂力は人間を超えている。その気になれば、拳一発で人間を殺害できるだろう。

(銀子さんめっちゃ嫌そうな顔しているけど、お任せします! だって、俺は水無月家に呼ばれてるんで、すみません!)

銀子と目が合ったので、夏樹は手を合わせておいた。

一応は、制服に袖を通し、学校に行く素振りはしなければいけないのだ。

「あらあら、じゃあおばさんもついて行ってもいいかしら? 美味しいお店も知っているわよ?」

「あ、お願いするっす! 春子さんが一緒なら、小梅さんもお行儀良くすると思うんで」

「馬鹿もん! 俺はいつでもお行儀がいいじゃろうが!」

「……自分がしたことを思い出してほしいっすねぇ!」

小梅と銀子が、友人のようなやりとりをしている横で食事を終えた夏樹がお茶を飲んで一息つく。

(さてと、水無月家は俺にどんな用事があるのか……とっても楽しみだ。とてもとても楽しみだ)

当初こそ面倒だと思っていたが、優斗という未知数な厄介者がいて、霊能関係を超えた超常現象まで遭遇してしまった夏樹は、水無月家がまともな一族であれば友好的な関係を築いていろいろ利用してやろうと企むのだった。