軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

2「我が家に帰宅じゃね?」②

夏樹と小梅は、視線を絡ませた。

言葉を出さずに目で会話する。

――小梅ちゃんが声かけなよ。

――いやじゃ! おどれが声をかけるんじゃ!」

丸テーブルに突っ伏す銀子からは負のオーラが出ている気がした。

同時に、声をかけて、とも。

だが、どんよりした雰囲気の銀子に自分から声をかける勇気などない。

「あーあーあー、やんなっちゃうっすねー」

――ほらほら、なんか声かけて欲しそうに言ってるよ!

――俺様は嫌じゃぞ、面倒臭いことになること必須じゃろうて!

今にも目から火花が散るのではないかというほど、銀子への対応を押し付けあっていると、

「なーんで銀子さんがこんなにぐったりしているのに声をかけてくれないっすかぁあああああああああああああああああああああ!」

「ぎゃぁあああああああああああああああああああああああ!」

「自分からきよったぁあああああああああああああああああ!」

声かけ待ちだった銀子は我慢できずに、自分から声を発した。

普段はポニーテールにしている髪をほどいている彼女は、髪を振り乱したせいで顔が隠れてしまっている。

その姿は、一昔前に世界を震撼させた悪霊のようだった。

「ちょ、どぅーまんさんとせーめーさん呼んできて! 悪霊退散悪霊退散!」

「夏樹くんひでえっす!」

「ええっ、千手じゃ! あやつも霊能関係じゃから、悪霊退治はできるはずじゃ!」

「小梅さんもひでぇ!」

しくしく泣き始める銀子を少し面倒くさくなった夏樹と小梅は、夕食まで時間があるので少しだけ話を聞くことにした。

「ご飯までに話を終わらせてくださいね」

「はよせんかい!」

「扱いが悪い! ……宇宙でドップニャーニャー海賊団の残党と戦った銀子さんに、もっと優しい声をかけてほしいっす」

「銀子さん宇宙行ったの!?」

「いきたかーねーっすけど、連れていかれちゃったっす」

夏樹は小梅を見る。

「やばくね? 小梅ちゃんも宇宙行っておかないと」

「別にええわい! なんじゃその、仲間はずれになるけどいいの、みたいな顔は! ジャックの宇宙船に乗っただけで十分じゃからな!」

「……小梅ちゃんがそれでいいなら、いいんだけど。それで、銀子さんは宇宙で、つーか、奴らまだ壊滅してなかったんだ?」

夏樹はジャックとナンシーを伺うと、ふたりはすまなそうに頷いた。

「宇宙海賊と繋がっている商人は少なからずいるのだよ」

「そんな彼らが、再起しようとするドップニャーニャー海賊団に支援をするのは仕方がないこと……しなければ、後で何をされるかわかりませんから」

「でも、今度はちゃんとやっつけたんでしょう?」

「そりゃもう、ジャックさんとナンシーさんはもちろん、私と、征四郎さんと義政さんと素盞嗚尊様、マモンさんとみんなで大暴れっすよ!」

「――義政少年も宇宙で大暴れしたの!?」

「やばかったっすよ! ハリウッド俳優もびっくりな二丁拳銃っした。きっと、中の人いるっすよ」

「間違いないなぁ」

義政少年の謎は深まるばかりだ。

それにしても、と夏樹は内心で苦笑する。

向島市を任せた素盞嗚尊もだが、マモンまでが宇宙で大暴れするとは思わなかった。

(すさすさにはちゃんとお土産買ってきたんだけど……マモンはどうやって渡そう? SNSで連絡したら取りに来てくれるかな?)

「それだけなら良かったんすけど、その後、宇宙の歪みに飲み込まれて異世界召喚されちまったんすよ!」

「――なんで!?」

「いや、普通はそうはならんじゃろう!」

「結果的にゴッドが助けてくれたんでなんとかなったんすけど、異世界滅ぼしかけちゃったっす! あ、言っておきますけど、だいたいは素盞嗚尊様とマモンさんとジャックさんと義政さんのせいっすからね!」

「さっきから気になっていたけど、なんで銀子さんは義政少年を義政さんって呼んでるの?」

「義政さんは義政さんっす。それ以上でもそれ以下でもねーっす」

「意味深っ!」

義政少年の謎がさらに深まった。

異世界に行ったこともそうだが、向こうで何が起きたのだろう。

そう尋ねようとすると、エプロン姿のサタンがハンバーグとオムライスを丸テーブルに並べていく。

「ほらほら、春子さんの靴音がするから食事の用意だ。ささっ、みんなで家主のお迎えだ!」

「靴音で春子ママの帰宅を察するとか、きんもー」

ちゃんとオムライスに旗まで立ててくれたサタンの言葉に、娘の小梅は心底気持ち悪そうな顔をした。