軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エピローグ「別れの時間じゃね?」

――そして、翌日。

夏樹たちは京都駅にいた。

「道満さん、いろいろありがとうございました。お土産買うのに車まで出してもらっちゃって、助かりました」

「おう。まあ、なんだ。殺伐とした理由じゃなくて、今度はちゃんと遊びにこいよ」

「はい。道満さんもぜひ向島にきてください」

「次の休みに行くわ」

「待ってます!」

「晴明さんもお世話になりました!」

「ええよ、ええよ。身体のほうはまだ万全やないから、ちゃんと養生するんやで」

「はい!」

家族と月読先生に土産を買い、昼食を取った夏樹たちは、安倍円、安倍東雲、安倍きらら、安倍音叉、酒呑童子、星熊童子、虎童子、熊童子、玉藻前、蘆屋道満、安倍晴明と別れの時間を迎えていた。

まずは一晩泊めてくれた道満と、朝一番に様子を見にきてくれた晴明に挨拶をした。

「夏樹くん、小梅はん、千手くん、祐介くん、この度は……ほんまにありがとう」

安倍東雲が深々と頭を下げ、彼に続き弟妹もお辞儀をした。

「顔をあげてよ、しののん。俺たち友達じゃん。友達のためなら――世界の果てだって飛んでくよ!」

夏樹と東雲が握手をする。

きららは夏樹にときめき、近くにあったベンチに倒れるように座ってしまう。

音叉は、夏樹たちに「またな!」と挨拶しながら、千手にだけこっそり連絡先を書いたメモを渡していた。

「――ほんまおおきに。今度は自分が力になると約束するんよ。いつでも声をかけてな」

円も親しくなった小梅たちと挨拶を交わしていた。

本当に元気になってくれて良かったと思う。

円と行動を共にし、夏樹たちとも交流がある熊崎伍太郎は所用があるといって見送りにこられなかった。

電話で別れの挨拶はしたが「股間を鍛えておくぜ!」と意味不明なことを言って夏樹を動揺させていた。

「おっちゃん的にはもっとなっちゃんと京都巡りとかしたかったんだけどなぁ」

「酒呑童子のおっちゃんもなんやかんやありがとうね。今度はちゃんと喧嘩しようぜ!」

「……やだこの子、まだおっちゃんのこと狙ってるの!?」

「そこだけが不完全燃焼なんだよなぁ」

「あの茨木童子倒したんだからおっちゃんの負けでいいよ!」

「……またの機会に、ね」

「うへぇ」

酒呑童子は、出会いから別れまでずっと気さくだった。

彼は基本的に京都から出ないようにしているが、何かあったら呼んでくれと頼もしい言葉をくれる。

夏樹と酒呑童子は固い握手を交わした。

「妾ももっともてなしたかったのじゃがのう」

「玉藻ちゃん。今度ゆっくり遊びにくるよ。あ、それか向島に来てね」

「ほほほほほ、妾もあまり京都から出ることはできんので、なっちゃんがまた遊びに来てくれるのを待っとるのじゃ」

「うん。じゃあ、またね。約束だよ」

「うむ。約束じゃ」

玉藻前とも握手を交わした。

彼女との交流は少なかったのが残念だ。

今度はちゃんと観光でくることを約束し、別れを惜しんだ。

そんな夏樹の後ろには、握手の順番待ちしている祐介がいた。

にんまり笑顔で玉藻前と握手を交わす祐介に、一同がちょっと引いていた。

「おう、由良夏樹! 姉貴のこと……ありがとうな」

「……うん。お礼を言われるとちょっと困るけど」

「姉貴も姉貴で、孤独なんかから解放されたんだ。あとは安らかに寝ていれば良いんだよ。ったく、鬼も妖怪も、神も長生きだから面倒臭えんだ。考えなくてもいいことを考えちまう」

星熊童子が夏樹に礼を言う。

茨木童子とは因縁があるが、あまりすっきりした戦いではなかったのも事実だった。

そんな夏樹を星熊童子が笑い飛ばしたので、少しだけ肩が軽くなった気がする。

「ところで、だ」

「うん?」

「――虎童子と七森千手のことよろしく頼むぜ」

「いや、俺は千手さんのパパじゃねえから」

「今、安倍家と交渉中だけど、虎童子をそっちに向かわせたいんだ」

「まさかの展開!?」

「ついでに俺と熊童子も京都から出るのもありかなって」

「あ、これみんなで向島来るパターンだ! なっちゃんわかっちゃった!」

「……ついでに、七森千手に嫉妬丸出しにしている佐渡祐介もなんとかしておいてくれ」

星熊童子の視線は、玉藻前と握手を終えた祐介が、ほんのり顔を赤く染めた虎童子が千手と別れを惜しんでいる姿をハンカチを噛んで羨んでいる姿がある。

芸が細かいというか、ハンカチを噛む人間が本当にいることにただただびっくりだ。

とりあえず、見なかったことにした。

「円ちゃん」

「なっちゃん」

みんなと挨拶を終えた円と別れの時間が来てしまった。

連絡先は交換したので、いつでもやり取りが取れる。

しかし、しばらく会えないことは寂しい。

今まで会えなかった時間を埋めることはまだできていないのだ。

「円ちゃん、またね」

「うん!」

握手しようとした夏樹の身体を円が力一杯抱きしめた。

「会いにいくから……なっちゃんもまた遊びに来てね」

「もちろん!」

こうして、由良夏樹は茨木童子を倒し、安倍円と無事に再会することができた。

「またね!」

新幹線に乗って手を振る夏樹たちに、みんなも手を振ってくれた。

長いようで短い、京都の時間が終わったのだった。