作品タイトル不明
間話「間話の間話でまもんまもん」
「まもんまもん。いえいえ、そんなまもんまもん! まももももも! あいかわらずな方でご安心しまもんまもん。ご心配なさらず、このマモン! 宇宙だろうとなんだろうとまもんまもんして見せましょう!」
まるで日本人のサラリーマンみたいに、頭を下げながら電話をしていたマモンが通話を切ると、手早く洗い流しを終えると、布巾で手を拭いた。
「どうした? まさか案件とか言わないよな?」
上司であり、家主のサマエルが訝しむように目を細めて尋ねる。
「残念ながら、そうではありまもん」
「微妙に意味がわかるのがムカつく!」
「理不尽なまもんまもん! いえ、そうではなくてまもんまもんですね。少し困ったことになりました」
「どったの?」
お昼の焼きそばを食べながらサマエルが問うと、マモンが眉間に皺を寄せた。
悪人顔がより怖くなったのだが、マモンは気づいていない。
「まもんまもん。俺はどうやら宇宙に行かなければいけないまもんまもん」
「――宇宙!? まさか宇宙で動画を撮るの!?」
愕然とするサマエルに、マモンは大きく嘆息すると、やれやれと大袈裟に肩をすくめて見せた。
その姿にいらっとしたサマエルだが、大きく息を吸って我慢する。
「さまたん……上司と部下ではなく、幼稚園時代から一緒だったまもんまもんとして助言しますが、我々は魔族であり農家でまもんまもん! 動画配信者ではないのですよまもんまもん!」
「いや、それは私が誰よりもわかってるし、普段から言ってることだからね! 動画バズって調子に乗っているお前にだけはいわれたくねえよ!」
おしぼりを投げつけるも、マモンはあっさり受け取り流しに置く。
「んで、なんで宇宙に行くことになったとかホザいているんだ?」
「向島のやんちゃボーイたちが宇宙で宇宙海賊と戦っているそうまもんまもん」
「なんで!? ま、まさかかずたんも!?」
「まもんまもん! 三原一登は中学校にちゃんと行っているそうでまもんまもん」
「ならよかったよ。いや、おかしい! かずたんじゃなくても、なんで宇宙で宇宙海賊と戦ってんだよ!?」
「詳細はわかりかねまもんまもん。ですが、素盞嗚尊筆頭に、グレイ型宇宙人ジャックとナンシー、警察官青山銀子、神剣の使い手神奈征四郎、あとなんか五歳児の神奈義政くんでまもんまもん。きっとこのメンツに由良夏樹や小梅・ルシファーもいるまもん」
「待て待て待て待て、五歳児混ざってるぞ!? やばくね!? 労働基準つかの前に、五歳児が戦うってどんな状況だよ!?」
「まもん?」
「いや、お前がわかんねえみたいな顔すんな! はっ倒すぞ!」
ツッコミの連続で、サマエルは大きく息を切らしてしまう。
「というか、お前は青森から出れないからな!」
「まもんまもん! 俺は強欲を司る魔族ですよ? 友のためなら、ルールを破りまもん!」
「まあ、いいけどさ。亜子ちゃんがいるんだから、ちゃんと無事に帰ってこいよ」
「――まもん!」
マモンは長靴から、磨かれた革靴に履き替え、髪を軽くセットすると、玄関を出て行こうとする。
「しっかし、まさかお前が素盞嗚尊と連絡先交換して、あんな下手に出るとは思わなかったぞ」
「まもんまもん。先ほどのお電話は素盞嗚尊ではありません」
「は?」
「奥様の櫛名田比売殿でまもんまもん! それでは、行ってきまもん!」
「お前の交友関係どうなんってんだよ!? あ、ちょっと待て、おい、こら!」
何かに気づきマモンを止めようとするサマエルだったが、彼女の制止は届かずマモンは出て行ってしまった。
「――あいつ、カッコつけて出て行ったのはいいけど、割烹着を着たままだぞ」