軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44「まさかの登場じゃね?」②

――小さいおじさん。

都市伝説のひとつ。

中年のおじさん型の小人の目撃例からはじまったものだ。

おじさんの小人なんて夢も希望もないが、意外と目撃例は多い。

時には動画の端にこっそり小さな影が映ると小さいおじさんではないか、と話題になることもある。

芸能人や、著名人にも目撃例があるとも聞く。

中には、肉体的身体的疲労が重なると起こる幻覚症状であると言う説もある。

他にも、妖精であったり、コロポックル説などもある。

――そんな小さいおじさんが目の前にいるのだ。テンション上がらない男の子などいない。

「うひゃぁあああああああああああああ! 小さいおじさんだぁ! うわっ、すっげ!」

「妖精? 妖怪? よくわからないが、実際にいるとは思わなかったぜ」

「……小さいおばさんとかもいるのかな?」

「おっちゃんも長く生きているが初めてみたぜ。都市伝説は都市伝説だと思ってたぞ」

夏樹、千手、祐介、酒呑童子が、しゃがみ込んで小さいおじさんを凝視し、それぞれ感想を言い合っている。

拘束されていたはずの祐介も、小さいおじさんの登場に興奮し、勇者パワーで縄を引きちぎっている。

ちなみに、小梅と玉藻前は小さいおじさんにそこまで興味がないようで、お茶を飲みながら、「本当に男子って」「ねー」とか言っている。

「っていうか、酒呑童子のおっちゃんが知らないのかよ、小さいおじさん! 大っきいおじさんのくせに!」

「大きいおじさんだって初対面だよ! 都市伝説とかの番組見て笑っていたんだけど、本当にいるんだぁ」

「普通はいると思わないだろ」

「そう、だね。ツチノコレベルじゃないかな」

男どもはきらっきらと瞳を輝かせている。

「そんなに見られると照れてしまうよ!」

「声もしぶっ!」

「無駄にいい声してるな」

耳に心地よいバリトンボイスが響く。

おそらく銀子がここにいれば、「耳が孕む」くらいは言ってくれただろう。

俗に言う――イケボである。

「だ、だけど、どうしてしののんは俺に小さいおじさんを紹介するんだ? ――はっ!? まさか賄賂!?」

「……あー、うん。自分もここまで喜んでもらえるとは思わんかったかな。ちょっと引いとる」

「そんな馬鹿な!?」

「自分も小さいおじさんを初めて見た時にはびびったんやけど、そこまでやなかったなぁ」

夏樹は愕然とする。

都市伝説といえば、男の子が憧れるものだ。

それをびびっただけで済ませるなど、信じられなかった。

「……しののんへの追求は後にして、この小さいおじさんを俺にどうしろと? さすがに、京都のお土産に小さいおじさんを連れて帰っても、きっとお母さんは元いた場所に返してきなさいって言うと思う。また新幹線で往復は嫌だよ」

「夏樹くんのおかんも、小さいおじさんを小動物か何かみたいに扱わへんやろ。いや、それはいいんやけど! この子たちは話進まん子やね!」

痺れを切らして東雲が少し大きな声を出したが、小さいおじさんなんて都市伝説を連れてくるのが悪い。

「と、とにかく、この小さいおじさんこと――」

「私のことは、雅也って呼んでほしい」

「雅也ぁああああああああああああああああああ!?」

「あー、名前はびっくりやろうが、そこやなくてな。雅也はんに夏樹くんと顔を合わせて欲しかったんや」

どういうことだ、と一同が興味を示し、東雲と小さいおじさんこと雅也に視線を向ける。

東雲が雅也に目配せすると、彼は大きく頷いた。

「――やはり、私は過去にこの少年を見ている」

「……ほえ?」

変な声を出す、夏樹。

もちろん、記憶の中に小さいおじさんと邂逅した思い出はない。

いくら記憶が一部なくなっているとはいえ、小さいおじさんとの出会いがあれば忘れることはないだろう。

「直接は会っていないよ。だが、私は見ている。この少年がもっと幼い頃、鬼によって襲われているところを」

小さいおじさん雅也の口から、衝撃的な言葉が放たれたのだった。