軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「さまたんが動くんじゃね?」

魔王サタンと同等の力を持つ青森の魔族サマエルは、悩んでいた。

「……かずたんに会いに行くきっかけがほしい」

よく考えれば、不公平である。

ネットゲームで知り合った天照大神は一登と会うことがあるようだが、サマエルは動画のコメント欄とメッセージくらいでしかやりとりをしていない。

電話をしたい気持ちがあるが、声を聞くと恥ずかしいのだ。

今までは一ファンのかずたんとして接していたのだが、マモンが向島市でやらかした一件で一登と顔を合わせ、交流を深めた。

動画配信者とファンという関係ではなく、友人となれた気がする。

「……さて、どういった理由をつけて向島市に……そうだ! 向島市の河童狩りを動画に!」

「まもん!? 河童さんがなにをまもんまもんしたというのですか!?」

「あいつら、最近じゃきゅうりじゃなくて、キャベツをはじめ様々な野菜や、果実を奪っていくんだ。この間だって、大掛かりな泥棒がいただろう! 大捕物をして気を抜いたところに、あの河童どもめぇ!」

「まもんまもん……向島市の河童さんはなにも悪くないまもんまもんじゃないですか」

サマエルの部下であり、現在は動画チームのスタッフであるのは七つの大罪の魔族マモンだった。

マモンは割烹着姿で夕食の支度をしている。

サマエルは一登に会いたいと悩みながら、動画編集をしていた。

最近では動画のコメント欄に、まもんまもん、ではなくさまたんへのコメントも増えてきた。

まもんまもんがきっかけでバズったことで動画が見られるようになったのだが、見てくれる人が増えれば、マモンよりもサマエルのファンになってくれる人もいるのだ。

また、マモンに突っ込むサマエルの両者の掛け合いがいいと言ってくれる声もある。

サマエルの本業はあくまでも農家であり、動画配信はあくまでも趣味の一環だった。

収益が入れば嬉しいし、臨時収入で買ったビールは最高だ。

本格的に、副業にしてもいいと思っている。

だが、動画配信が順調になると、なったで問題がある。

「朝早くから仕事をして、夜は動画編集! かずたんと交流する時間がほぼないんだよ! つーか、いつもだったらくっだらねえテレビ見て晩酌していたのに、今は飲む時間が晩御飯か、動画編集中だよ!」

「まもんまもんですが、私とさまたん様が魔界が戻るには動画登録者を百万人にしなければ――」

「いや、私を巻き込むなよ! それはお前の事情で、私は関係ないじゃないか!」

「……まもんまもん。一連托生ではまもんまもん」

マモンは生姜焼きと千切りキャベツが盛られたお皿をテーブルに並べると、瓶ビールを手に取り自分の分を注ぎ、美味しそうに飲んだ。

「まもーん! 日本のビールもよいまもんまもんですね!」

「そうだな。日本に移住してから、すっかり日本のビールに魅せられてしまったよ。他にも芋焼酎も最高だな!」

「じゃあ、青森じゃなくて九州に住めばいいのではないのでまもんまもん?」

「それはそれ、これはこれだ!」

サマエルとマモンはグラスを掲げて乾杯すると、揃ってビールを飲み干した。

「ぷはー! このために生きてるな!」

「まもんまもん」

その後、しっかり味の染みた生姜焼きをおかずに白米を堪能した。

スーパーのセール品で買った牛肉の切り落としだが、生姜を多めに長めに漬けたことで、肉は柔らかく美味しい。

濃いめの生姜焼きは、米によく合った。キャベツをタレに浸してから食べてもよし、牛肉と一緒に食べてもよし。

「さて、ご飯は美味しいが、かずたんとどうやって会うべきか。……そうだ。京都の酒呑童子の首を土産に、いや、あいつは今は現役じゃないしな。喜ばないか」

「まもんまもん。僭越ながら」

「なんだよ?」

「さまたん様は、三原一登のことを友人と思っているのでまもんまもん?」

「そうだけど?」

「――ならば、友人に会うのに理由などいらないのでまもんまもん」

「――お前……深いな」

サマエルは口を覆って、感動してしまった。

マモンが青森に来てから一ヶ月も経たないが、こんなにも深い台詞を言うとは思っていなかったのだ。

だが、ふ、とサマエルは脳裏に思い浮かんだ事を口にしてみた。

「まさかとは思うけど、私がいないうちに亜子ちゃんを家に連れ込もうとは思っていないよな」

「ままままままままままままもん!?」

「……お前なぁ、お母さんのいない間に彼女とにゃんにゃんしようと企む高校生じゃないんだから」

「まもまもまもまもまもん!」

「いや、わかんねーから! 言っておくけど、亜子ちゃんと交際するのは止めないが、まだ学生さんなんだから清い交際にしておけよ。いいな?」

「……まもん」

「まったく、でっかい息子だな。さっきはいいこと言っていたのに」

「申し訳まもんまもん」

ちょっと照れたように赤くなるマモンに苦笑しながら、生姜焼きを口に運んだサマエルは、

「そっかそっか。友達に会うのに理由はいらないのか。なるほどなるほど」

仕事をなんとか落ち着かせ向島市に行こうと決めた。