作品タイトル不明
12「真面目なお話じゃね?」②
「あー、ごほん、ごほん。ほれ、音叉ときららはちゃんとしいや」
東雲が妹たちの前で手を叩くと、彼女たちはハッとした。
「……あ、兄貴、あれ? 俺はいつの間に風呂から出たんだ?」
「……結構なお手前でした」
「あかん。妹たちはしばらく放置ですんません」
東雲は気まずそうに謝罪した。
夏樹は構わないと笑う。
小梅たちも意識がどこかに旅立っているので、お互い様だ。
「じゃあ、まあ、自分らだけで真面目な話をしましょう。遠野で鉢合わせたことから、ここまで話が大きくなったことすんません。ただ、安倍というか、自分らは夏樹くんたちを利用するつもりはないんよ」
「それは、うん。わかったけど、安倍さんと東雲さんを分けて考えるって感じ?」
「あー、ちゃうちゃう。安倍家は、鬼に関わる気がないんよ」
「はぁ?」
どういうことだ、と夏樹たちが怪訝な顔をする。
京都の霊能力者たちが、第一に考えているのは酒呑童子の討伐だ。
京都の妖怪、鬼を一掃するしないはさておき、酒呑童子だけの討伐に関しては全員が考え、動いていることだった。
だというのに、京都の霊能力者たちの元締め的な存在である安倍家が、鬼に関わるつもりがないというのは信じられなかった。
「おいおい、まさかとは思うがまさかなのか?」
「千手さん? なにか知ってるの?」
「いや、なんつーか、旧家の恥っていうかな。どの家も必ずとは言わないんだが」
なにか心当たりのある千手のようだが、言いづらそうにしていた。
「七森千手殿、水無月家の中で、神奈家の友人を前にして言いづらいんでしょう。無理せんでええですよ。情けないんは他ならぬ自分の家なんで、自分の口で言わせていただきます」
千手を気遣うように東雲が割って入ると、自らの口で安倍家の現状を語った。
「こんなん言うのは情けないんやけど、安倍家の当主、つまり自分らの親父なんやけど、酒呑童子なんて逆立ちしても勝てへんって諦めとる。それはええんよ。でもな、鬼がいなくなったら食いぶちが無くなるから滅ぼさんでええって考えなんや」
「うわぁ……やっぱり安倍さん家は更地にしよう。うん。絶対にしよう」
夏樹は心のやることリストに、しっかりと書き込んだ。
「夏樹くん、声に出てる、出てる!」
「おっと、俺ったらうっかりさん!」
一登に指摘されて、ぺろり、と夏樹は舌を出した。
しっかりお口にチャックをする。
だが、東雲は気にした様子はなく、ケラケラと笑った。
「ええよ、ええよ。歴史だけが自慢の家なんて潰してまってかまへんかまへん。なんなら僕もお手伝いするわ」
「安倍さんの御許可が出たぞ! 戦じゃ!」
「君はほんまに楽しそうな子やねぇ」
夏樹の過激発言に楽しそうに便乗する東雲は、どこか本気の目をしていた。
東雲もなかなかな危険人物であると聞いていたが、同じく危険人物である夏樹以外の男性陣が「夏樹も夏樹だが、東雲もやべぇ」と震えていた。
そして、夏樹が唐突に告げる。
「そういえばさ」
「うん?」
「俺さ、京都で円くんと幼馴染みだったらしいんだけど、その辺なんか情報ない?」
「――は?」
なぜ、このタイミングで言うのだ、と一登たちは首を傾げたのだが、東雲はそれ以上に衝撃だったようで飄々としていた態度が嘘のように間の抜けた顔をした。