軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

34「名前が紛らわしくね?」②

「あー、もう! どんぱちやってくれちゃって! 民間人の方々にバレたらどうするっすか!」

青山銀子は父親に命じられて、夏樹のやらかした事後処理に向かっているのだが、明らかに戦っている音と光、そして魔力とおそらく神力のぶつかり合いを感知して泣きたくなった。

霊力を持たない一般の方には、雷が鳴ったとか、どこかで事故が起きたくらいにしか認識できないが、それなりに力がある銀子だと間違いなく夏樹が人外と戦っているであろうと予想できる。

最低限の結界を張っているおかげか、力の大半は遮断できており、銀子も目的としているビルで「何かが起きている」と認識しているからこそ気づけている。

どのような術を使っているのか不明だが、ぜひスカウトしたい使い手だと思った。

「正直、身体が震えてくるっすね。夏樹くんはもちろん、ありえないんですけど、戦っている相手も相手っすよ。おそらく、神族……それも上位な存在っすね。あー、やだやだ。自分はただの公務員なんですけど」

コンパクトな旧型の外車を恐る恐る運転しながら、『河童・つちのこ研究会』の所有しているビルに近づく。

銀子の記憶では、研究会と称しているが霊能関係に足を突っ込みかけている一般人という非常に面倒臭い人間の集まりだった。

巻き込まれたのならさておき、興味本位でこちら側に足を突っ込んで酷い目に遭う人間は多い。

昨今では、剣と魔法のファンタジーから、超能力や異能力バトルな小説やコミックがあるので、巻き込まれたことで主人公かなにかだと勘違いしてしまう人間も少なくない。

基本的に、素質があれば自由意志だが、関わっても危険だと判断された人間は『院』によって記憶を消される。

人権が、プライバシーが、と騒ぐ人もいるが、命よりも大事だとは思わない。

『河童・つちのこ研究会』の面々も、調査対象になっていた。また、霊能力者が関わり情報を与えていた疑惑もあったので、『院』と警察のどちらが動くかはっきり決まっていなかったのだが、まさか夏樹が関わることになるとは思ってもいなかった。

「さーて、夏樹くんの手助けに来たものの、なにをすればいいんでしょうね?」

今も力のぶつかり合いを感じるが、ただ『それなりに強い』人間でしかない銀子に、割って入ることはもちろん、手助けすることが見つからない。

はぁ、とため息をついた時だった。

こんこん、と愛車の窓を誰かがノックした。

「はいはい、誰っす――か?」

車外に、グレイと呼ばれる宇宙人がいた。

「失礼。今、夏樹の名を呼んだようだが、あなたが応援でよろしいかな?」

「ぎゃぁあああああああああああああああああ! 宇宙人! グレイ! ていうか、日本語を流暢に喋ったっす!?」

「落ち着いてほしい。私はあなたに危害を加えるつもりはない。彼らの保護を頼みたいのだ」

「無駄にイケボなのが怖いっす! って、よく見たら誰かを抱えてるじゃないっすか! あれっすか、キャトるっすか? 晩御飯にするなら、そいつらだけでお願いするっす! 自分は美味しくないっす!」

「我々は人間を食さない。いろいろ誤解があるようだ。まず、ちゃんと話し合おう。私の名は、ジャック・ランドック・ジャスパー・ウィリアムソン・チェインバー・花巻だ。君の名は?」

「名前長っ!? ていうか、なんで最後が花巻なんっすか!?」

夏樹から譲り受けた魔剣を掴むも、狭い車内のため振り回すことができない。

銀子は、次の車は車内の広い車種にしようと誓った。

「私は由良夏樹の親友だ。彼が戦っている間に、このビルの所有者と思われる人間を保護した。……彼らに思うことは山のようにあるが、戦いに巻き込まれて死んでしまったら夏樹の負い目になる可能性がある。どうか、保護を」

「……なーんで、夏樹くんは宇宙人に親友扱いされているのかわかんねーっすけど、なんとなく自分の勘があんたはいいグレイだって囁いているっす。いいでしょう。その言葉を信じましょう」

「感謝する。地球の女性よ」

「私は、青山銀子っす。おそらく夏樹くんのフィアンセになる予定の美女っす!」

銀子の名乗りに、ジャックは驚いたような仕草をした。

「そうか、夏樹の婚約者だったか。こんな時だが紹介しよう。こちらは私の婚約者のナンシーだ。彼女を助けるために、夏樹が力を貸してくれた」

「え? ぎゃぁあああああああああああああああ! まだいたぁあああああああああああああ!」

「ハジメマシテ、チキュウノセイメイタイ。ワタシハ、ナンシー、ヨロシク」

「あ、なんかこのカタコトの喋り方落ち着くっすわー」

宇宙人と邂逅したせいか情緒不安定になった銀子だったが、今まで悪魔や妖怪と戦った経験があるため、なんとか冷静さを取り戻した。

とりあえず宇宙人が担ぐ人間たちを保護しようと車から降りた時、歪な悲鳴のような音と、鋭い閃光が放たれ、ビルが崩壊した。

「なーにやってるっすか、夏樹くん。これ、どうやって後始末しろって言うんすか?」

銀子の問いに答えてくれる者はいなかった。