作品タイトル不明
26「また家庭訪問じゃね?」②
近くの公園に移動した夏樹と月読。
まず、月読はプリントを束ねたものを夏樹に渡した。
「うわぁ、宿題もちゃんと入ってるぅ」
「学生ですからね。そこはちゃんとしておきましょう」
苦笑していた月読であるが、「さて」と一言いうと、生真面目な顔をする。
「新学期が始まってから、夏樹くんは一度も学校に来ていません」
「いや、二回くらい行ったんですけど」
「教室に来ておらず、教師に顔を見せていないのですから欠席扱いですよ」
「……ごめんなさい」
「ふう。教師たちは心配しているんです。夏樹くんが、三原優斗くんによって振り回されていたのは有名ですし、生徒の中にも三原優斗くんのせいで学校に来なくなったんじゃないか、という話まで出てきてしまい……彼へ話を聞きに行った教師までいたようです」
「……心配してもらえて嬉しいです」
「彼は、教師からの心象も悪かったですからね」
あくまでも『教師からの心象』と言った月読であったが、その言葉遣いのちょっとした雰囲気から彼からも優斗への心象は決していいものではなかったのだろうと思われる。
「今日は、決していい関係ではなかったとはいえ三原優斗くんが事故で亡くなったと連絡が学校にもありましたので、夏樹くんもショックを受けているのだろう。――ということにしましたが、さすがにそろそろ元気な顔を教師たちに見せていただけたら私としても助かります」
「明日は学校に行こうと思います」
「ぜひお願いします。いえ、説教となってしまいましたが、教師としてはさておき、月読命としては夏樹くんには申し訳ないと思っているんです。クソ愚弟や急にぬらぬら言い出した妖怪の総大将に巻き込まれているだけで、十分に大変だとは思うんですが……学校も大事なのですよ」
「わかっているつもりです」
素直に返事をする夏樹に、月読は満足そうに頷いた。
彼も小言など言いたくないのだろうが、教師としては言うべきであると理解しているため、あえて小言を言っているのだ。
夏樹も月読の立場を理解しているので、謝罪するしかない。
「これは、教師ではなく月読命として教えておきたいのですが……君の義妹、いいえ、かつての義妹である綾川杏さんが教室に何度か顔を見せていたようです。どうやら夏樹くんと接触したかったようですが、水無月都さんが追い払っていましたよ」
「――あれ? 俺には可愛い弟分しかいないんですが」
「……まあいいでしょう。ところで……京都の霊能力者と会ったそうですね」
「うわ、もう知ってるんですね」
数時間前の出来事を月読命に知られていることに驚きながらも、さすが神だと納得する。
「面倒臭そうな人たちでしょう?」
「そりゃもう。とっても」
「ふふふ。安倍一門は京都の守護者であり、対鬼組織として長い時間を費やしています。今代の当主は平凡な人間ですが、その子供たちは素晴らしい力を持つと聞いていますよ。とくに」
「安倍東雲ですか?」
「ええ、彼は人の枠を超えた力を持っているそうです。次男もなかなか強いそうですが、安倍家では安倍東雲の力は群を抜いているそうです。敵対しないと信じたいですが、気をつけてくださいね」
「ははははは、やだなぁ。めーせーさんの子孫と俺が喧嘩なんてするわけがないじゃないですかぁ」
「そうであれば助かります。彼らは酒呑童子たちの相手はもちろんですが、海外の悪魔、怪物の対処にも最近は忙しく、安倍一門の中でも派閥争いに忙しいようですから、夏樹くんのような規格外の強さを持つ子の存在が知られたら――利用されてしまいますよ」
「うわぁ」
面倒臭いと思う気持ちが、月読の言葉で倍になった気がする。
「いっそ神様が酒呑童子をぶっ殺してくれればいいのに」
つい言葉をこぼしてしまった夏樹に、月読は苦笑した。
「夏樹くんの知る神は気さくな神が多いですが、本来はあまり人間に興味はないんですよ」