作品タイトル不明
間話「さすがにそれは……無理じゃね?」
――深夜。由良家の茶の間。
「小梅さん、自分考えたんすよ」
「……しょーもなさそうなことの予感しかしないんじゃが、聞いてやる」
「明日から、夏樹くんが学校に行くじゃないっすか」
「そうじゃのう」
「その間、私たち暇っすよね」
「――おどれは仕事せい!」
「いやいや、仕事はしてますって! 最後まで言わせてくださいよ!」
ぶー、と頬を膨らます銀子に面倒臭そうに小梅が相手をする。
「夏樹くんが中学校で授業を受けている間、不安じゃないっすか」
「なにがじゃ?」
「数キロ先からライフルで狙撃されたり、異世界に召喚されたりする可能性があるんすよ。そこで、私たちの出番っす」
「いや、さすがにその対処に俺様たちは役立たずじゃろ! ライフルはなんとかできても、異世界召喚とかどうせい言うんじゃ!」
「というわけで、中学生になりましょう」
「――嘘じゃろ。お主、天才じゃろ!」
がっちり握手をするふたりを止める者はいなかった。
銀子も小梅も、どう頑張っても中学生に見えない。
せめて高校生なら可能性はあっただろう。
「しかし、制服も入学も俺様たちじゃなんともならんじゃろ」
「そこは困った時の神頼みっすよ。月読様はちょっとお願いし辛いので、照子ちゃんに頼りましょう」
「さっそく電話じゃ!」
スマホを操作し、深夜にも関わらず天照大神に電話をする。
しばらくして、少々機嫌が悪い声で天照大神が出る。
「なんでしょうか、銀子ちゃん。今、私は推しに投げ銭しようとしていたところっすけど」
「めちゃくちゃ暇じゃないっすか!」
「絶対暇じゃろ!」
「ふふふ、聞いてくださいよ。私の推しって誰もビッグにならないんです。むしろ、その逆で、引退したり、不祥事起こしたり、散々なんです」
「うわぁ」
「天照大神の御加護ないのう。むしろ、呪いじゃろうて」
「で、なんですか?」
「中学生になりたいんすけど」
「俺様たちを中学生にしてくれ」
「――寝言は寝てから言え」
ぷつん、と通話が切れてしまう。
しばらくの間、痛い沈黙が茶の間を支配した。
「あれ?」
「電波が悪かったようじゃな、もう一回かけるんじゃ」
「了解っす! あ、もしもし!」
先ほどよりコールが長かった気がするが、天照大神は嫌そうな声をしながら通話に応じてくれた。
「……なんですか」
「女子中学生になりたいっす!」
「頼むぞ、神様!」
「真面目に聞きますけど、また学校通いたいんですか?」
「うっ、それは、その」
「俺様が通った学校って、紀元前じゃったのう。あの頃は、まさか動画配信サービスが無双するとは思わんかったのう」
「でしょうね! 大方、夏樹くんと一緒に学園ライフをエンジョイしたいんでしょうけど、残念ながら学園ラブコメ編は始まらないです。私だって、一登きゅんと一緒に登下校できるならしたいですよ!」
「いや、無理っすよ」
「鏡見てから言え」
「だから、お前らも同じだってやんわり言ってやったんだよ! くだらない電話してくんな!」
再び通話が切れた。
またしてもなんとも言えない沈黙が茶の間を支配した。
「寝るっすか」
「そうじゃな」
天照大神のおかげで、銀子と小梅が女子中学生になる目論見は潰えたのだった。
――その頃、由良家に侵入しようとしていたぬらぬら。
「ないわー、お嬢ちゃんたちが女子中学生とかないわー。ぬらぬら的にもないわー。本当にないわー。めっちゃないわー。めっちゃぬらぬらー」