作品タイトル不明
間話「のんびりしているんじゃね?」
「いやー、夏樹くんがいないと暇っすね」
「そうじゃのー」
由良家の茶の間では、人間であり警察官の青山銀子と、天使の小梅・ルシファーがお茶を飲みながら煎餅を食べてのんびりしていた。
由良春子はパートに行き、ジャックとナンシーはラブラブデート中だ。
夏樹がゴッドに会うために不在のため、ふたりは暇を持て余していた。
「夏樹くんと出会ってから一緒にいる時間が長かったんで、こういう時間って新鮮っすよね」
「実は、出会ってから数日の付き合いなんじゃがなぁ」
「私の体感では、もう六ヶ月ほどですね」
「なんじゃそれ」
「と言っても、夏樹くんは中学生なので本来ならこの時間にお家にいないのが普通で、今までがちょっとおかしかったっすけどねー」
「神族魔族がやたら滅多に面倒ごとを持ってくるから悪いんじゃ」
「まったく迷惑な方々っすよねー!」
銀子は巻き込まれた側ではあるが、小梅は夏樹に襲いかかった過去があるのであまり他の神や魔族のことは言えなかったりする。
「ゴッドって小梅さんのおじいさんっすよね? 夏樹くんと一緒に会いにいかなくてよかったんすか?」
「わかっとらんな、銀子。ゴッドはな、お年玉をもらうときに会うくらいでちょうどええんじゃ」
「孫がひどいっす! さすがにゴッドも泣いていいっす!」
と、言いつつも銀子はカラカラ笑うだけ。
小梅としては、ゴッドに会うよりも母リリスと会うことが嫌だった。
顔を合わせれば「恋人はできたの?」と必ず訊いてくるのだ。最後には必ずため息をつかれ、自分がかつてどのくらいモテていたのかを自慢されるので辟易していた。
「今頃、どんな話をしているんでしょうねぇ」
「きっと、あれじゃ。ゴッドが土下座して孫をよろしくお願いします、と夏樹に涙を流してお願いしているんじゃろうなぁ」
「さすがの夏樹くんもゴッドに土下座はさせないと思うっすけど」
いくらなんでも夏樹もそこまでしないだろうし、話を聞く限りゴッドもプライドが高そうなので土下座などまずしないだろうと銀子は思う。
そんなときだった。銀子は、ふと違和感を覚える。
「――っ」
「なんじゃ?」
「お腹が空いたっす。そろそろお昼ご飯っすね」
「なーんで、腹減っただけで、こうなんか力を感じたみたいな顔をしたんじゃ、お前は。まあいいじゃろう」
「お昼ご飯どうします?」
「夏樹は……さっきメッセージで用事があるからしばらく帰宅しないと言っておったしのう」
「……そういえば、アルフォンスさんが蓮くんに、今日から早速料理を教えるらしいっすよ」
「なるほど。ならば、ミカエル食堂にお電話してなんか作らせて持って来させるんじゃ!」
「了解っす!」
一時間後。
アルフォンス・ミカエルがエプロン姿でおかもちを持って登場した。
「へい、ミカエル食堂です! あんかけ炒飯と味噌ラーメンです! って、何やらせてんだよ!」
「律儀な天使さんっすね」
「こういうコツコツしたところがあるからハーレムを築けたんじゃろうなぁ」
「うるせえ! とにかく、作ってやったんだから金払え。千五百円だ」
小梅が尻ポケットからガマ口財布を取り出し、支払った。
「釣りはいらんぞ!」
「……ぴったりじゃねーかよ! 千円と百円二枚に五十円六枚って微妙な嫌がらせすんなよ! じゃらじゃらさせんなよ!」
「なーんで、五十円って財布に何枚もあるんじゃろうなぁ。銀色じゃから百円かと思って手に取ったときのガッカリ感」
「わかるっす」
「そりゃわかるけどさ!」
おかもちから、あんかけ炒飯と味噌ラーメン、餃子の皿をふたつ置く。
「餃子はサービスだ。蓮の奴が一生懸命包んだんだ、食ってやってくれ」
「……殺されかけた割には面倒見がええのう」
「性分なんだよ! 強さは罪じゃねえ。誰かに命じられて戦う以外の生き方を知らなかった子供に、どう文句を言えって言うんだよ。俺たち大人が導いてやらなきゃ駄目だろう」
「……さすがハーレム天使っすねぇ」
「その呼び方はやめて! んじゃ、俺はもう行くぞ! 皿はあとで取りにくるからな!」
そう言って翼を広げたアルフォンスは、空に羽ばたいた。
「……思ったんすけど、日本に来て数日のアルフォンスさん、馴染みすぎじゃないっすか?」
「天使は順応性がやべーんじゃよ。俺様だって、日本はあまりおらんかったぞ」
「え? それまでどこにいたんすか?」
「アトランティ……おっと、これは人類に言うにはまだ早かったのう」
「ちょ、今、やべーこと言いませんでしたか!? 教えてくださいっす、ねえねえ、小梅さん!」
「じゃかましい! いいから、ラーメン食うぞ!」
「いーや、絶対に聞き出しますからね!」
「銀子も最初はファンタジーがどうこうと騒いでおったくせに」
「頭のてっぺんまでどっぷり浸かれば、もうやけくそっすよ!」
銀子はあんかけ炒飯と餃子を、小梅は味噌ラーメンと餃子を持って、茶の間に戻ると「いただきます!」と食事を始めた。