軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

間話「抜け駆けじゃね?」③

――青森、某所。

「――あの野郎! 抜け駆けとかずるいじゃん! 私はお前やしょっちゅう遊びに来る新たな神々の面倒を見るために忙しくてかずたんに会いに行けないっていうのに! お前だけ、亜子ちゃんと婚約した挙句、本編にまで出るとか――ゆ゛る゛さ゛ん゛!」

さまたんはお怒りだ。

だが、まだ感情の制御はできている。

ここが魔界であれば、感情のままに魔力を放出して地形を変えてしまうほど大暴れをしていただろう。

爆発せずとも怒りに震えていたさまたんだったが、玄関のチャイムがなったことで冷静さを取り戻した。

大きく深呼吸を繰り返して、玄関に向かった。

「やっほー! 遊びにきたわよー!」

芋ジャージを装備した愛の女神こと愛ちゃんが荷物を詰め込んだボストンバッグを方からかけて笑顔でいた。

「…………」

さまたんは何も言わずにそっと玄関をしめた。

「ちょっと!? 何よ、その態度! せっかく遊びにきてあげたのに! 開けなさいよ! あーけーてー!」

「ああっ、もううるさい! ご近所に迷惑だろう!」

「ご近所ないじゃない! 畑ばっかりじゃない!」

渋々玄関を開けて、愛ちゃんを迎え入れる。

「よっこらしょっと」

「……おばあちゃんかよ」

「重かったのよ! 年齢的にはさまたんのほうがおばあちゃんじゃない!」

「……魔界じゃ若い方だもん」

「嘘つけ! 古株じゃねえか! 紀元前生まれが若いとか図々しいわ!」

「ゴッドよりは若いもん!」

「比較対象がおかしい!」

そんな言い合いをしながら、愛ちゃんは家の中に上がる。

さまたんも来てしまったものは仕方がないと、冷蔵庫からビールを取り出して手渡した。

「まあいいや。来ちゃったから、仕方がない。とりあえず飲もう」

「うがい手洗いさせてよ」

愛ちゃんが洗面所でうがい手洗いを済ませると、改めてテーブルにつく。

「よくわからないけど、かんぱーい!」

「はい、かんぱーい!」

ごっごっごっ、と勢いよくビールを飲んでいく。

「ぷはー、このために労働しているんだよなぁ!」

「おっさんねぇ。げぷっ、あら、失礼」

「……品がないな」

「あんたに言われたくないわよ!」

睨み合うも、新しいビールを開けて乾杯した。

「それで、どうして愛ちゃんが来たんだ?」

「え? マモンに言われて。さまたんが寂しがっているだろうから、相手してくれて」

「……寂しがってねえよ!」

「そうなの? お泊まり会しようと思って、ほら、お揃いの芋ジャー」

「……せめてお揃いのパジャマにしてよ! 可愛いのにしてよ!」

「何よ、着心地いいし、動きやすいし、万能じゃない! 芋ジャー!」

「そうだけどさ! いや、違う! マモンの奴、勝手に出て行きやがったんだ! あいつ、どこで何をしているのか知ってるなら教えてくれない!?」

「え? 知らなかったの?」

愛ちゃんは驚いた顔をすると、マモンが今どこで何をしているのか教えてくれた。

「ハードボイルド仲間の河童のジェイソンさんと一緒に向島市で重要な用事があるみたいよ」

「――まもんまもん言っている奴のどこにハードボイルド要素があるんだよ! ていうか、河童のハードボイルド仲間って、交友関係が意味不明すぎる!」

飲み干してからになっていたビールの缶をさまたんは思い切り潰した。

――青森はやはり平和だった。