作品タイトル不明
59「以前からマーク済みだったんじゃね?」②
「参考までに、夏樹さんがどのようなことをしていたのかご存知ですか?」
義政の問いかけに、源蔵はちらりと夏樹を見ると、頷いて話し始める。
「わしも簡単にしか知らぬが、まず反社会的組織の壊滅、親父狩り狩り、心霊スポット破壊、悪評のある人間への制裁くらいか」
「十分すぎるほど問題児だな! 人知れず悪人を成敗するヒーローもびっくりだぞ!」
「しかも、すべてが犯罪にならないようにあえて後手に回るように計算して動いているのが恐ろしいと思った」
「……いや、絶対に結果的にラッキーだっただけで由良は何も考えてね」
「てへっ!」
「ほらな! 見ろ、このやんちゃな中学生を! 力を手に入れた後より、力を手に入れる前の方が過激とかおかしいだろ!」
千手のツッコミに、一同が深く深く頷く。
特に、夏樹の破天荒っぷりに何度も巻き込まれた経験がある一登は目が本気だ。
「さすがですね、夏樹さん。ぜひ僕の通う幼稚園で先生を」
「義政!?」
なぜか感銘を受けた義政が、夏樹を誘い始めた。
隣に座る伯父の征四郎が目を見開いて驚く。
「待て待て、義政先生。由良を量産するような悪夢な計画は立てないでくれ。新たな神々なんぞ大したことないくらい厄介なことになっちまう!」
千手はもうお腹いっぱいだった。
早く家に帰って、眠りたい。疲れてしまった。
「……それで、由良のことを以前からマークしていたのはいい。だが、沢渡や三原もマーク済みっていうのはどういうことだ?」
「きっかけは、水無月家のみずち殿が倒されたという話を聞いたことだ」
「やっぱりそこに繋がるのか」
「神殺しだ。弱っていた神とはいえできることではない。だが、倒された。その人物が由良夏樹くんであると聞いた時、血圧が上がったものだ」
「だろうな!」
「すると、彼の周囲でおかしなことが起きる。水無月家の変化、ビルの崩壊、さすがにこれは誤情報だろうがUFOの目撃、すべて向島市のことだ」
残念だが、UFOに関して誤情報ではない。
いくら加座間家が情報収集に力を入れているとはいえ、まさか由良家に宇宙人が居候しているとは思うまい。
しかも、天使と魔王もセットだ。
「わしは考えた。彼と行動を共にしている者たちも、何かがあると」
「大正解だよ!」
「同時に悩んだ。放置するか、味方にするか、と。そんな折に、使用人として雇った川崎沙也加が、佐渡祐介と友人であると聞き、会ってみたいと思ったのだよ。そちらも加座間家を探っていたようなのでな」
だが、と源蔵は嘆息した。
「問題は、愚息が由良夏樹くんたちに襲撃をするとは思わなかった。申し訳ない。心から謝罪しよう」
「いえいえ、吉座くんにはきっちりお返ししておいたんで、気にしなくていいよ、源ちゃん。それよりも、源ちゃんは俺たちと敵対しないってことでいいんだよね?」
「――無論」
「じゃあ、問題なしってことでひとつ。ようこそ、月読ファミリーへ!」
「ちょっと待ってください、それだと私が一番の元凶みたいに周囲に思われてしまうのでやめてください! 照れていませんから、絶対にやめてくださいよ!」
こっそり月読の名のもとに源蔵を取り込んで勢力拡大を企む夏樹を、月読は必死に止めた。