作品タイトル不明
27「気に入られたんじゃね?」③
「ねーねー、ノルン三姉妹の誰が好きなのー?」
「ちょ、やーめーろーよー。みんなの前で言うなよー」
「えー。いいじゃん。長女? 次女? 三女? それとも三姉妹ー?」
茶の間のテーブルを片付けて、夏樹、サタン、ルシフェル、アルフォンスが、うつ伏せになって頬杖をつき顔を寄せ合い恋バナをしていた。
内容はアルフォンスと運命の女神ノルン三姉妹についてだ。
ニコニコしながら追求するサタンに、照れながら話をするアルフォンス。そしてノリで付き合う夏樹と、ひとりだけ嫌そうな顔をしているルシフェルだ。
「きんもー! おどれらキモすぎじゃろう!」
「夏樹くんはさておき、いいおっさん連中が修学旅行の深夜みたいなノリで恋バナされても。というか、今どき、こんなノリの男子っているっすか?」
「どうでもええわい! あれじゃろ、このあとどうせ太一郎くんが先生の目を盗んで女子の部屋に忍び込むんじゃろう! そうやっていつも男子だけ楽しいことしているんじゃ!」
「あれ? 小梅さん、もしかしてあっち側っすか?」
なんて会話をしている小梅と銀子がコーヒーを啜って酔いを覚ましている。
どちらもかなり飲んでいたようだが、意外とケロッとしている。
母もサタンもそうだが、みんなお酒に強いようだ。ルシフェルだけが、酒が残っているのか、頭が痛いようで薬を飲んでいた。
「しかし、アルフォンスが北欧の神とですか。あちらもあちらで権力争いが面倒だと聞いています。巻き込まれないように気をつけてくださいね。あなたは弱いんですから」
「大きなお世話だ! 俺が料理の腕だけ上げたとでも思っているのか?」
「おや? それなりに戦えるようになったのですか?」
「料理の腕だけしか上がってないぜ!」
「……今のやりとり必要でしたか?」
「いいじゃねえか。花子にパンツずらされて泣いていたアルフォンスが、恋とはな。おじちゃんも歳とるわけだ」
「なんか、親戚の集まりに迷い込んだみたいで微妙な感じがするんですけど!」
アルフォンスとルシフェルは軽口を叩き、サタンがなにやら思うところがあるのか頷いている。
夏樹の言葉通り、銀子と夏樹を除けば、小梅たちはみんな親族なので『親戚の集まり』というのは間違っていない。
「にしても、俺らが集まるのは久しぶりだな。小梅ちゃんは地上を転々としているし、アルフォンスは北欧に。ミカエルの野郎は仕事人間で、ガブリエルはうるせえ世話焼きおばさんになっちまった。ウリエルとラファエルも忙しいようだし、百年以上顔は見ていないな」
サタンの口から出てくるのは、みんなビッグネームばかりだ。
「以前は、正月には集まっていたのですけどね」
「ゴッドからお年玉をもらう歳でもねえしなぁ」
「え? ゴッドは毎年、ひょっこり現れてお年玉くれるんじゃが?」
「クソ親父は小梅ちゃんだけは可愛がっているからな。もちろん、小梅ちゃんの可愛さは神界一なんだが」
本当にノリが親戚の集まりになってきたので、夏樹が離脱して、小梅と場所を変わる。
「いやー、ルシファーから始まってルシフェル、サタンに、ミカエルっすか。この人外たちに会ったって言っても誰も信じてくれねーっすよ」
「だよねー。頭大丈夫? って心配されると思う」
「魅了とかそんな話をしていた頃が懐かしいっす。土地神さんもこの方々に丸投げでよかったんじゃないっすか」
「……ははは」
夏樹は夢の中とは言え、月読命とも会っている。
異世界から帰還してから、地球がファンタジーだと驚いたのが懐かしくなるほど、世界はファンタジーに溢れていた。
まさかサタンたちとすき焼きを食べるなどとは、異世界で魔族と戦っているときでさえ想像もできなかった。
「あのさ、銀子さん」
「なんすか?」
「疑問なんだけどさ」
「はい」
「今後、増えたりしないよね?」
「…………さあ」
「ゴッドまで我が家に来たりしないよね?」
「会うときはお外で会ってきてくださいね。自分は普通の霊能力者なんで」
「霊能力者に普通も普通じゃないもないよ! ついてきてよ!」
「いえ、自分、無宗教なんで!」
「俺だってそうだよ!」
もしかするとサタンがひょっこり家に遊びに来たように、いつかゴッドまで遊びにくるのではないかと考えてしまう夏樹だった。