作品タイトル不明
51「こいつの理由とかどうでもよくね?」
小島村は夏樹の倒れた身体を踏みつけて高笑いをしていた。
「ははははっ、ひははははははははっ! 俺に歯向かうんじゃねえよ! 神に選ばれた俺が、お前なんかに負けるはずがねえだろ、由良ぁ!」
小島村は、小学校からバスケットボールを続け、中学校でも活躍した選手である。
女子生徒から人気があり、他校の女子からも告白されたことがある。
小島村も思春期の少年だ。
バスケット一筋と言いたいが、異性に興味のある年頃だ。
告白を受け入れると、「そういうこと」をしたいと望んでいた。
――だが、彼の願いは叶わない。
次から次に、三原優斗に奪われていくのだ。
あと少し、というところで彼女に去られてしまい、何度悔しがったかわからない。
それでも平気だったのは、小島村は今まで彼女たちをちゃんと好きになったことがなかったからだ。
人気者の自分に群がってくる少女たちを、ただ彼女にしただけだった。
だから、次の子にいけばいいという考えがあった。
小島村の評判も、三原優斗に彼女を奪われた被害者であったので落ちることもない。
しかし、続かない。
三原優斗の介入がなくとも、続かなかった。
そんな苛立ちを覚えた時、三原優斗の恋人である松島明日香と話す機会があった。
ボーイッシュで気さくな彼女に、愚痴を言った。
明日香は彼氏の浮気を教えられても笑って「なんかごめんねー」と言うだけ。
不思議だった。
そこからどんな話をしたのか、よく覚えていない。
覚えているのは、「私を心から好きになってくれるなら、なんでもしてあげる」という約束を交わしたことだけ。
その日から、小島村は快楽の虜になった。
約束通り、明日香を好きになった。
いや、約束などせずとも、好きになっていただろう。
彼女は優しい。
楽しい。
気持ちいい。
気を遣わなくていい。
お互いに言いたいことが言える。
やりたいことがやれる、理想の関係だった。
だから、他の男子が明日香と関係を持っても気にしなかった。
約束通り、明日香を好きだから。
自分こそ、明日香を一番好きだ。
いや、愛している。
それだけの自信があった。
いずれ、明日香も小島村のことだけを好きになってくれると盲目的に信じていた。
――だが、そんな日々はあっさりと終わった。
由良夏樹と水無月都の密告により、明日香との秘密の時間を暴かれてしまった。
停学となり、部活は廃部。
大半のバスケットボール部員が明日香と関わりがあったのがまずかった。
停学中、まるで魔法が解けたようになぜ明日香とあんなことをしていたのかと疑問に思う。
だが、そんな疑問は長く続かない。
友人たちと連絡が取れなくなった。
部活内で誰が悪いのかという押し付け合いになった。
とある高校のバスケ部に誘ってくれた先輩や顧問から二度と連絡をするなと言われた。
「――俺が何をした!?」
もう人生が滅茶苦茶だ。
何も悪いことはしていないのに、だ。
そんな小島村は、すべてに見捨てられたわけではなかった。
――神から力を授かったのだ。
すべて由良夏樹が悪いのだと、密告したのが奴なのだと教えてもらった。
ならば復讐しようと誓ったのだ。
驚いたことに、同じように神から力を授かった生徒は他にもいた。
そもそも、三原優斗が自分から彼女を奪わなければ、松島明日香に手を出すことなどなかった。
その三原優斗は死んだという。
なら、この怒りは、密告者であり三原優斗の幼馴染みである由良夏樹にぶつけよう。
そう決めた。
「ひひっ、ひはははははははは! もう俺に逆らうんじゃねえぞ、由良ぁ! とりあえずお前の彼女を連れてこいよ! ああ、そうだ! 親でもいいぞ! お前の家族をたっぷり楽しんでやる!」
倒れる夏樹を蹴りながら、小島村は復讐など忘れ、快感を得ようと気色の悪い笑みを浮かべた。
――そして、夢から覚めた。
「――あ、あれ?」
「よう! いい夢、見れたかーい?」
先ほどまで蹴っていたはずの、倒したはずの由良夏樹が眼前にいる。
にこにこと笑顔で、腹立たしい。
こいつはいつでも笑っている。
それが、悔しい。
「俺に何を……なんで俺が縛られているんだよ!」
小島村はパイプ椅子に厳重に縛られていることに気づく。
何をしても身動きが取れない。
ようやく、小島村が焦る。
「お、俺に何をするつもりだ?」
「何って、――ギャラクシー河童勇者流のお仕置きだおっ!」
――まったく意味がわからなかった。
唯一わかったことは、由良夏樹の笑顔が心臓が止まりそうなほど怖かったということだけだった。