軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

85_なにかモヤモヤする違和感

瘴気だまりを確認したのと同時に、私の周りに強い風がぶわりと吹き付けた。

咄嗟に目を瞑り、次の瞬間には、目の前にフワフワが立っていた。

「フワフワ!来てくれたのね」

『街中にいるはずのルーツィアの側に瘴気だまりの気配を感じ取ったのだ!』

「私もいるわよ~!」

続いて、優しい声も降ってくる。思わず顔を上げると、グレイス様が空から降りてきた。浮遊魔法で空を飛んできてくれたらしい。

「グレイス様!」

「王都には結界が張られているはずなのに、突然強い瘴気の気配を感じてびっくりしたわ!ノースもすぐに来ると思うわ。ちょうど、なぜか大興奮しているアルヴァンに呼ばれて行っちゃったところだったのよ」

大興奮のアルヴァン様……ひょっとして、魔獣ちゃんのことで何か分かったことでもあったのかな?

すごく気になるけど、今はとにかくこの瘴気だまりが何事もなく浄化されるのを見届けなくちゃ、安心できないよね。

そう思い、リゼットの方を見る。

その表情はかなり余裕があるように見えて、悠然としていた。

「あまり大きくない瘴気だまりでよかった。これくらいなら、すぐに浄化できるわ」

「さすがリゼット様!私達もお側に控えております」

嬉しそうにさえ見えるその様子と、ソレイユ様との楽し気な会話に、今のリゼットには簡単な浄化なのだと理解できる。

街の人達も同じように感じているらしく、皆の顔からはすっかり恐怖が消え去っていて、まるでこれから楽しいショーが始まるかのような期待感だけが漂っていた。

そう、何も心配いらない。何も……。

そのはずなのに。

なぜか、じわじわと不安な気持ちが胸の底から湧き上がってくる。

(なんで、こんなにモヤモヤするんだろう?)

初めて瘴気だまりを目の当たりにした時でさえ、こんな気持ちにはならなかったのに。

思わず、懐に入れている魔獣ちゃんをぎゅっと抱きしめる。

「キュウン」

「あ……」

その声に、ハッと我に返る。

魔獣ちゃんは私をきゅるんとした目でじっと見あげていた。その目はまるで、「大丈夫?」と心配してくれているかのようで。

「ごめんね、魔獣ちゃん。私がしっかりしなくちゃだよね」

こんなに小さな魔獣ちゃん。きっと、私が不安に思ったり、恐怖を感じていれば、それを感じ取ってしまうのではないか。

契約はしていないけれど、こんなに一緒にいるんだもの。どこか通じ合っているような感じはしているし、普通の動物でも、一緒にいれば感情を敏感に感じ取るんだもの。

気持ちを落ち着けるために、ふうっと大きく息を吐きだす。

不安なら、安心できるように、自分が動かなくちゃ。

セルヒ様とグレイス様は、瘴気だまりが消える瞬間にもしも魔物が溢れた時に備えて、すぐに魔物を攻撃しつつ、街の人達を守れるように、連携の相談をしている。

私にできることは……。

「セルヒ様。私はフワフワがいれば守ってもらえるので、万が一の時に街の人達がすぐに逃げられるように、少し離れたところで待機します!いざとなったら皆さんを誘導して、瘴気にあてられた人を安全な場所で魔力マッサージできるように」

「!そうだな、そうしよう」

セルヒ様はすぐに頷いてくれたけれど、なぜか次の瞬間ぐっと俯き呻き声をあげた。

「……くっ!本当は片時も離れず俺がこの手でルーツィアを守りたいが、ルーツィアの意思は尊重したい……!」

ええっと、なんて言っているのかよく聞こえないけど、私のことを多分心配してくれているんだよね?

戸惑いを覚えたのも束の間、顔をあげたセルヒ様はきりりとしてフワフワに向き直る。

「フワフワ、ルーツィアを頼むぞ」

『もちろんだ!』

急いでフワフワと街の人達の間を抜け、少し離れたところに位置どる。

小さな台のようになったいる場所に乗ると、リゼットの姿がよく見えた。

その一瞬で、瘴気だまりはさっきよりもますます大きくなっている。

その瘴気だまりに向かって、リゼットが大きく両手を広げていく。

(……あれ?)

どこか、違和感を覚える。

なんだろう?なにがおかしいんだろう?

まさにこれから聖魔法を放とうとしているリゼットのことを、目を凝らして見つめて……気づいた。

リゼットの魔力の色が、変わっている?

私の魔力が変わったように、リゼットの魔力も変わったから、色にも変化が現れたんだろうか。

だけど、魔力が変わるのは珍しいことだって言っていなかったっけ?

ひょっとして、神獣様と契約したことで徐々に変化していったのかな?

契約をきっかけに、どんどん力が強くなっていると聞いているし、そういうこともあるのかもしれない。

だけど……正直、前の色の方が綺麗だったような気がする。

リゼットの魔力は前よりも濁ったような色になり、おまけに霧のようなモヤに似た何かを纏っているように見えるのだ。

そのモヤは、まるで瘴気のような──。

そんなことを考えているうちに、リゼットが魔法を一気に瘴気だまりに向かって放つ。

魔力の変化は気になるけれど、これで一先ず瘴気は浄化されるはず。

そう思ったのだけど。

「……え?」

リゼットの魔法を受けた瘴気だまりは、消えるどころか、なぜか勢いよく大きくなり始めた。