軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

81_世界は私を中心に回っている①(リゼット視点)

──聖女の力って、さいっこうだわ!!

私、リゼットは、自分が誰もに愛される特別な存在であることに感謝していた。

ううん、感謝なんておかしいわね。私が特別なのは誰かに与えられたものではなく、生まれながらに持ち合わせた私の才能なんだもの。

私の力はどんどん強くなっている。

少し前まではすっごく大変だった瘴気だまりを浄化する作業も、今ではちょっと力を使っただけであっというまに終わってしまう。

「リゼット様の力はすさまじいな……!あれほどの瘴気だまりがものの数秒で消え去ってしまうとは……!」

「どんどんお力が磨かれていくな。神獣様との相性もいいのだろう。聖女として素晴らしければ素晴らしいほど、より神獣様とお互いのお力を高め合うというし、これはひょっとして歴代最強の聖女と言っても過言ではないのではないか?」

「今は国の状況がかつてないほど悪い。瘴気だまりはどんどんできるし、民たちの不調もまだまだ増えている。リゼット様がこれほど尽力してくださっていて、まだ落ち着かないとは……聖女がリゼット様でなければ、すでにこの国はかなりまずいことになっていたかもしれないな」

私が瘴気だまりを浄化する度に、後ろからは神官や神官騎士達のそんな声が聞こえてくる。

──もっと褒めて!私を称えて、敬って!

そうなると、ますます不思議に思えてくる。お母様はどうしてこんなに素晴らしい立場を辞退したのかしら?

ひょっとして、私に比べて全然大したことない力しかなくて、聖女のお仕事が荷が重かったとか?

そうなると、私はとっくにお母様を越えちゃったってことよね。

「リゼット様、今日もお疲れさまでした。いつも本当に素晴らしい手腕です」

「うふふ、あなたたちも、いつもついてきてくれてありがとう。みんなのおかげで私も頑張れるの!これからもよろしくね?」

「は、はい……!

にっこり微笑んで甘い言葉をかけるだけで、神官騎士たちは頬を染めて喜ぶ。絶大な力を持ち、聖女なんて尊き立場にいるのに、気さくで下々の者にも優しく声をかける美しき聖女……そんな私の側に居られて、そりゃ嬉しいわよね。

ああ!ちょっと力を使うだけで、こんなにもすごいすごいともてはやしてもらえる!

もっともっと瘴気だまりがたくさんできればいいのに!

だって、回復魔法で怪我や病気を治癒するよりも、浄化の方が全然楽なんだもの。

浄化していれば、私は忙しいんだって分かりやすいから、回復希望の患者の相手をする時間も少なくてすむし。

魔石に回復魔法を込めるのはちょっと面倒くさいし、結構疲れるのよね。

それも、フォーの力を借りてかなり楽にはなったけど。空間魔法使いも必要なくなったし。

あらためて、フォーは私の素晴らしいパートナーだわ!

◆◇◆◇

気分よく神教会に帰り、ソファに寝転がって少し休んでいると、私の部屋まで新人の神官が慌ててやってきた。

バタバタうるさいんだけど?ここは聖女リゼット様の部屋よ?もう少し敬った行動をとりなさいよ!

そう思うけれど、まあ気分いいし、今はまだ叱らずにいてあげようかな。それに、この新人神官は私より少し年下の男の子で、かなり可愛い顔をしているんだよね。

私、若くてとっても可愛いから、今までは大人たちや男の人たちに可愛がられることばっかりだったけれど、こんな可愛い年下なら私が可愛がってあげてもいいかもって思っているんだよね。

聖女様に可愛がられる年下神官……ふふふ、他の神官や私に憧れる令息たちに羨ましがられて虐められちゃったりしたら可哀想かな?

なんて思っていたら。

「聖女様!あの、ご両親が、面会を希望していらっしゃいます」

「え?お父様とお母様が?今神教会に来ているの?」

「はい……」

なんの用かしら?こんな風に神教会に来るの、はじめてよね?

私、疲れてるんだけどなあ。

教会の応接室に行くと、お父様とお母様は私の顔を見るなり嬉しそうに立ち上がり、かけよってきた。

「ああ!私の可愛いリゼット」

「私達の宝物!ようやく会えた」

「お母様、お父様。今日は一体どうしたの?」

私の手をそっと握るお母様。

だけど私はその手をやんわりと離した。家族だからって、私に気軽に触れていいと思われるのはちょっと違う気がしたから。

「どうしたのって……リゼットが、全然屋敷に帰ってこないから、顔を見に来たのよ?」

「そうさ、私達はリゼットを心から愛しているからね」

そんなに愛おしいって顔で見られても。

ルーツィアがいなくなった時に空気を悪くしたこと、私はまだ忘れていない。

あの時、かなりムカついたんだよね。せっかく邪魔者がいなくなったのになんだか居心地悪くて、気分が悪かった。

まあ、あの時はお兄様が一番おかしかったんだけど。

「リゼット、やっぱり、神教会で暮らすのはやめて、リーステラの屋敷に戻ってきてくれないかしら?」

「私達はもっとリゼットと一緒に過ごしたいんだ」

ありえないことを言いだした二人に、なんだかムッときてしまう。

「私、すごーく忙しいの。私がどれだけ神教会に、国に必要とされているか分かっている?」

「それは……」

「それにね、神教会は、聖女の務めをこんなにも頑張っている私に感謝しているから、とっても快適に過ごしやすい環境を整えてくれているのよ!」

そう、聖女たる私に相応しい豪華な食事、限られた貴族しか手に入れられない人気のお菓子、美しい宝石、特別なドレスに、最高級の寝具……ここにいればなんだって用意されているし、たくさんの物が私に贈られてい来る。

ああ、花には興味がないから、「お花は自然に咲いている姿が一番美しいわ。私のためにその命を摘んでしまうのは可哀想よ」なーんて慈愛の微笑みぶって笑って言って、もっと高価な物を贈るようにしてもらったけど。

リーステラの屋敷じゃ、贈り物は届けられても、神教会ほど色々準備しておくのは難しいでしょう?

比べ物にもならないよね?

「とにかく、リーステラのお屋敷に戻るのは無理よ。私が頑張らなくちゃ、みんなが困っちゃうから……」

「だけどっ」

「時間が出来たら、お母様とお父様に会いに帰るから。ねっ?」

悲しそうな二人を見送って、ため息をつく。

時間が出来たら、帰るわよ?ただ、瘴気だまりが落ち着いたら楽しいお茶会とかたくさんしなくちゃだし、ドレスや宝石も贈られるものばっかりじゃなくて自分でオーダーもしたいし。

聖女としてちやほやされるのに忙しくて、時間ができる、なんてことはそうそうないかもしれないだけ。

「聖女様、本当に申し訳ございません……我々民のために、聖女様が最愛のご家族にあまりお会いできていないこと、気付いておりませんでした……!ソレイユ様や他の神官様にもお伝えしておきますっ」

お父様とお母様が帰っていく姿を見て、年下神官が表情を曇らせながら頭を下げてくる。

「いいのよ、家族に会えなくても、私の力が家族のことも守ることができているんだって思うと、頑張れるから。だから、これからも一緒に頑張ってくれる?」

私は、さっきお母様にされたように、年下神官の手をすくいあげるようにして握る。

年下神官は頬を染め、恥ずかしがっているようだった。

「は、はい!もちろんです!」

この表情、知っている。今この子ははっきり私に落ちた。

ふふふ!私ってば、本当に罪な聖女よね。誰もが私に憧れずにいられないなんて!

この子は素直そうだから、ソレイユたちにも今の私の『健気な聖女発言』はしっかり伝わるわね。

年下神官に部屋まで送ってもらって、またソファにごろんと寝転がる。

この部屋には私とフォーだけ。

「あーあ、それにしても気分悪い。私が家族であるだけで感謝するべき幸福でしょう?ただでさえルーツィアがいなくなってなんか様子がおかしくって気に入らなかったのに、私に帰ってきてほしいだなんて調子にのっているわよね?」

『はは、そうだな、その通りだリゼット。お前と同じ場所で暮らしたいと思うのならば、この神教会以上に価値を提供できなければ話にならない。それが出来ないのに戻ってほしいと望むのは尊き存在であるリゼットに失礼だ』

「そう!そうよね!その通り、フォーはやっぱりよく分かっているわ。さすが私のパートナー!」