軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

74_魔力マッサージでちょっとでも元気に

翌日からも魔獣ちゃんに魔法石を使っていたのだけれど、やっぱり傷はきちんと治るのに、なぜか体調は日に日に悪化していった。

最初は初めてその身に受ける聖魔法に、体が驚いて反応しすぎているのかも?などの可能性も考え、しばらくは使い続けていたのだけど、どんどん弱っていくばかりの魔獣ちゃん。

(リゼットの聖魔法が効かないなんて……)

瘴気におかされているのが体調不良の原因なら、聖魔法で治ると信じていたのに……。

1週間たっても結果は同じで、今日は私の話を聞いたアルヴァン様が、魔獣ちゃんの様子を見に来てくれていた。

「魔獣ちゃんさんがどんな種族だとしても、聖女の力が及ばない怪我や病気はないはずで、これはおかしいです。一体何が起こっているんでしょうか?」

冷静に魔獣ちゃんを観察しながら、首を傾げるアルヴァン様。

やっぱり、原因はよく分からないようだった。

「身に宿る瘴気が濃くなっているように感じますね。とにかく、魔獣ちゃんさんの体調が悪化し始めたのが聖魔法を使い始めてからということなので、しばらく魔法石を使うのをやめてみてください。考えにくい事ではありますが、それで回復するようでしたら、やはりその魔法石が原因ですね」

「わかりました……ありがとうございます、アルヴァン様」

「この現象についても調べてみますね。くっ、最近は魔獣ちゃんさんの正体といい、魔獣ちゃんさんが出す実のことといい、分からないことが多すぎてっ……!魔獣マニアとして不甲斐ないです……!」

アルヴァン様はそう言うと、悔しそうに歯ぎしりをしながら出て行った。

あはは……。通常運転の姿に、ちょっとホッとしてしったのは内緒だ。

(でもたしかに、魔獣のことならなんでも知っていると言っても過言ではなさそうなアルヴァン様でさえ、こんなにわからないなんて)

謎が多すぎる。魔獣ちゃんの正体は一体何なんだろう?

そんな疑問を抱きながら、魔獣ちゃんの看病をして、同時に魔力量を増やす訓練も再開させた。

リゼットの魔法石を使うのをやめた分、魔獣ちゃんへのマッサージを前よりももっと念入りにしてあげる。

私の魔力量が増えたことで、マッサージによって渡せる魔力量も多くなっているのか、マッサージのあとはご飯も進むみたいで、ばくばくと美味しそうに食べる姿にホッとする。

そうして数日が経った頃、少なくとも魔法石を使って悪化してしまう前と同じくらいには、体調も元に戻ったのだった。

すっかり元気が戻って来た魔獣ちゃんは、フワフワに遊んでもらっている。しばらく寝込むことが多かったせいで体力も落ちてしまっているため、体力作りも兼ねて。

それを眺めながら、私はセルヒ様とお茶を飲んでいた。

『夜、時間があるときには面談をする』という約束をして以来、こうして魔塔の談話室の近くにある、小さなティールームで二人と二匹で過ごすことが増えている。

私の部屋か、セルヒ様の部屋でも良かったんだけれど、セルヒ様の希望でこの場所を使うようになった。

ティールームは魔法を施されていて、ここでお茶を飲むと通常の二倍リラックス効果が得られるようになっているらしい。

「ルーツィアと密室で二人きり……魅力的だが、必要以上にそうして過ごしていると俺の心臓がもたない……」

などとセルヒ様が心臓を抑えていた時間があったことなんて、私は知らないまま。

ティールームは可愛いお部屋で、私もすっかり気に入っているんだよね。

「魔獣ちゃん、すっかり元気になりました。もちろん治ってはいないようで、定期的に傷はできるんですけど……でも、つまり今回のことは、やっぱり魔法石を使ったせいだったってことですよね……」

「ああ、そうなるだろうな」

私達は魔獣ちゃんの様子を報告しながら、そのことについて話していた。

「魔獣ちゃんを治してあげたいのに、余計に辛い思いをさせてしまいました」

「まさか聖魔法で体調が悪くなるなど、誰にも予想できなかったことだよ、ルーツィア」

魔法石を用意してくれたセルヒ様と、魔法石を何度も使った私で反省会のようになっていく。

それでも、いつまでもくよくよしてばかりではいられない。魔獣ちゃんはマッサージで体調が良くなるようだという話をすると、今度魔力マッサージの特別店に一緒に連れて行ってみようという話になった。

「魔力マッサージの特別店、ですか?」

「ああ。つい先日、引退したばかりの元王宮魔法師の夫婦が最近営み始めた店らしい。指圧で外部から魔力回路をマッサージして活性化させ、体の不調を整えたり、魔力の巡りをよくする効果があるということだ」

それって、私が魔獣ちゃんにしていることに似ている。私はマッサージしながら、無意識に魔力を譲渡しているだけだから、比べ物にはならないけれど。

でも、そっか、王宮の魔法師様だった方がお仕事としてやってくださるマッサージなら、きっと私がするよりも何倍も効果があるはずだわ!

魔獣ちゃんにとって少しでもいいことをしてあげたい。

そう思って、明後日、セルヒ様のお仕事がお休みの日に、そのマッサージ店に魔獣ちゃんを一緒に連れて行こうと約束したのだった。