作品タイトル不明
34_私は誰よりも可愛くて愛されているの(リゼット視点)
「お兄様はなんだかイライラしていて感じ悪いし、お父様もお母様もルーツィアのことを気にしていてほんっと気分が悪い!」
こうやって部屋に閉じこもっていてもほとんど様子を見にこないなんて!私が部屋から出てこないのよ?もっと気にしなさいよ!どうしたのか心配して、私の顔が見れないことを寂しがりなさいよ!
ああ、本当に不満だわ。
大体お父様もお母様も、ルーツィアがいなくなれば喜ぶと思っていたのに。あんな無能な恥晒し、いなくてよかったじゃない?その証拠に、お兄様が帰ってくるまでいなくなったことにすら気づかなかったくらいなのに、一体何を狼狽えているのかしら?
お兄様だってそうよ。ルーツィアを除籍する書類はお兄様の部屋にあったのよ?
大事に大事に保管されていたのを見つけた時には嬉しくって震えたわ。
お兄様がこっそりルーツィアに優しくしていることがあると気づいていたから、いくら私に見せる優しさのほんの一欠片程度だとはいえ、ずっと気分が悪かったのだけれど。あれって哀れみからくる優しさなだけで、そんな優しいお兄様こそが一番ルーツィアを追い出したかったんじゃないのって!
なのにルーツィアがいなくなったことに気がついたらあろうことか私を睨みつけてきたのよ!この私を!それをお父様もお母様も怒りもしないし。はあ、嫌になっちゃう。
お兄様なりにあいつを追い出す最高のタイミングを考えていたのかもしれないけど、結果は同じなんだからいいじゃない。
でもまあ、お兄様の部屋から勝手に書類を持ち出したのは悪かったかな?と思って、気分が落ち着いてからは私から声をかけてあげたのに、なんだかそっけないし。なんなの?
そもそも、私は望まれて望まれて望まれてこの家にきて、誰よりも愛されている。
私を産んだママはものすごく美人で、『聖女』と呼ばれて男の人にも女の人にも大人気だったんだって。私はママにそっくりだったから、この家に来てからも可愛い可愛いって評判でずっとチヤホヤされてきた。
子供はみんな私と仲良くなりたがったし、大人だって私を喜ばせようといつだって必死で。
ママとパパが死んじゃって最初はすごく悲しかったの。だけど、みんなが私を大好きで喜ばせようとしてくれるからすぐに乗り越えることができたわ。
それによく考えてみると、一緒にいた最後の方は、ママったらかなり口うるさくなっていたのよね。
『人に優しくしなさい、自分のことばかり考えていてはダメ』
『リゼット、あなたは可愛い子だけれど、だからと言って何をしても許されるわけじゃあないのよ?』
あの頃、私まだ小さかったのよ?幼心にもちょっとうんざりしていたから、あのままだときっととっても厳しくて酷い環境で育てられたかもしれないわよね。そう思えば優しいお父様とお母様に引き取られたのはよかったのかも。
だけど、だけど、リーステラ家に引き取られて、不満に思っていたことが一つだけあったの!
それがルーツィアだった。
えっ、可愛い私がいるのに、ルーツィアがこの家にいる必要、ある??
お父様もお母様も、ルーツィアよりも私のことを愛しているって隠しもしなくて、まあそれはよかったんだけど。お兄様は私を溺愛しながらもルーツィアのことを少し気にかけていて、それは面白くなかった。
おまけに、みんな私に夢中で私を特別に愛していることを隠せないくせに、罪悪感なのかいい人に見られたいっていう気持ちがあるのか、ルーツィアのことも気にかけてあげる人がちらほらいたのよね。
使用人も、親戚も、屋敷にくる大人たちも、同年代のお友達の中にまで!
(そんなに気を使って無理に優しくしてあげる必要、ないじゃない?)
私はいいの、みんな私に優しくしたくてしょうがなくてしているわけだから。だけど、ルーツィアは嫌々優しくさせていて、そのことがどうしても理不尽に感じて。
だからね、「こんな子に無理に優しくしなくてもいいんだよ」って、分かりやすくしてあげてたの。
ね、ほら、ルーツィアに無駄に優しくするくらいなら、その分も私により優しくできるでしょ?
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つまんない、つまんない!ベッドの上でごろごろしながらため息をつく。
「あーあ。また気晴らしに抜け出して街に買い物でも行こうかしら」
お父様とお母様は私が欲しがれば何でも買ってくれるけど、それとこれとは別で、ひとりで気ままに安いものを買うのも楽しいのよね。
だけど私のことを好きすぎる二人が私が一人で出歩くのを許してくれるわけがないから、こっそりと、ね。
ただ、秘密にしているせいで自由にできるお金がなくて……こっそり、ルーツィアの大事にしているものとかを持ち出して売ったりしていた。だってルーツィアのものだったら、ちょっと何かがなくなったって誰も気が付かないし。
まあ正直、ルーツィアったらろくなものを持っていないから、大したお金にはならないんだけど。たまに思ったよりもいいお値段で売れるものもあるのよねえ。うふふ!
誰も様子を見に来ないのはムカつくけど、抜け出すときには好都合かも。まあ、そのために「そっとしておいて、放っておいて!」って言っておいたんだけど。それにしても普通気にしない?
ああ、自分の気持ちが矛盾していることはね、私だって分かっているのよ。揺れ動く自分の気持ちが悩ましい。愛されているって幸せだけれど、色んな人の私を思う気持ちを気にしなくちゃいけなくて大変だわ。
私は自室をそっと抜け出すと、売れそうなものを見繕うために、ルーツィアがよく分からないものをためこんで入り浸っていた、ホコリくさくて小さな部屋に向かった。