軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第083話 自分だけは声をかけられたから

門を抜けると、道があるのだが、左側には地平線まで見える畑が広がっていた。

「すごいな」

「これ、全部畑?」

本当に大農業地帯だ。

「ここから先ずっと農地だね。もっとびっくりするほどに畑ばっかりだよ」

ニーナが教えてくれる。

「そりゃ重要な拠点になるわな。見たことがない光景だ」

畑なんかはこれまで何度も見たことがあるが、ここまで広がっているのは見たことがない。

「ここで採れたものがターリー全土や外国に輸出されるんだよ。そのための船を作っているって感じ」

なるほどなー。

実際に見てみるとよくわかるわ。

「イラドにはない光景でしょうな。我々はこっちだ」

少佐が逆の右の方を見る。

これまたすごいのだが、あちこちに兵士がおり、走ったり、訓練をしている。

そして、さらに奥を見ると、基地があるのだが、とんでもない数の軍船が見えていた。

「かっこいい船がいっぱいです!」

ウェンディが喜んでいる。

「はっはっは! 我が国が誇る海軍の精鋭だ。あれでもまだ半分だね。もう半分は警備などで出払っているんだ」

ウェンディに褒められたことで少佐が上機嫌に説明した。

どうでもいいけど、外国人の俺達に戦力をバラしてもいいのかね?

「乗りたいです!」

「もちろん、これから乗ってもらうとも。では、参ろう」

少佐が基地に向かって歩いて行ったので俺達もついていく。

歩いていると、訓練している兵士が俺達をちらちらと見てくるが、さすがに少佐と一緒なので何か言われることもないし、すぐに視線を外して訓練に戻っていた。

そして、基地までやってくると、警備をしている兵士がいるのだが、少佐の顔パスでそのまま中に入っていく。

「おー、船です! 大砲が付いていますよ!」

ウェンディ、嬉しそうだな。

実はこういうのが好きなのか?

「すごかろう? 我らが乗るのはあの船だ」

上機嫌な少佐が指差した先には兵士達が荷物の積み込みをしている帆船だった。

船の側面にはいくつも大砲が設置されており、船首には剣を持った女神像が付いている。

「どれくらいで着くんだ?」

「1、2時間といったところだな。準備ができ次第、出港する。船室に案内しよう」

俺達は少佐についていき、タラップで船の中に入ると、一番手前の部屋に案内される。

部屋の中はベッドが2つとテーブルがあるだけの質素な部屋だった。

「おー、海です」

ウェンディはふよふよと浮いていき、小さな丸窓に張り付いた。

おかげで、俺達は何も見えない。

「このような部屋で申し訳ない。軍船なのでこういう部屋しかないのだ」

「いや、構わない」

最初から期待してないし、軍船が豪華な方がマズいのもわかる。

「うむ。では、しばらく待ってくれ。すぐに出発すると思う。それと部屋の外に兵士を置いておくので何かあったらその者に声をかけてくれ。見張るようで申し訳ないが、軍船の中をあちこち歩き回られると困るのだ」

それもわかる。

「俺は細部まで知ってるけどな」

船を作ったカルロが笑う。

「君はそうだろうな。まあ、とにかく、すぐに着くから待っていてくれ」

少佐は苦笑いを浮かべながらそう言うと、部屋から出ていった。

「待ちか」

「1、2時間って言ってましたし、本当にすぐですよ」

俺達はテーブルにつき、出発を待つ。

俺とエルシィが隣同士で座り、カルロとニーナが対面に並んで座った。

「なあ、カルロ、ニーナ。俺達はこの仕事を終えたら出ようと思う」

「そうか? まあ、結構いたしな」

「寂しくなりますけど、仕方がないね。次はどこに行くんですか?」

ニーナが聞いてくる。

「イパニーアに行こうと思う。船で行けるんだよな?」

「ええ。行けますよ。私もイパニーアなら行ったことがあります。良い鉱石が採れるんですよ」

へー。

鉱石か。

「同じように港で受付をする感じか?」

「ええ。案内しますよ」

良い奴。

「外国に行くことになるんだが、何かあるか?」

「イパニーアは同盟国なんで何もないですよ。あっても作った冒険者カードで何とかなります」

あ、ターリーと同盟国なんだ。

それは知らなかった。

「いつ出るんだ?」

今度はカルロが聞いてくる。

「この仕事がいつ終わるかにもよるが、明日か明後日には出るかな」

「そうか……じゃあ、飯でも食いに行こうぜ」

「うん。行きましょうよ」

エルシィもそう言ってたな。

「そうだな。最後に海産物を食っていきたい」

「イパニーアも海に面している国だから普通にあるけどな」

カルロが笑う。

「白ワインはイパニーアにはないよ?」

「あ、それもそうだな。白ワインを飲んでけ」

そうするか。

「あ、動き出しましたよ」

エルシィが言うように船が動き出した。

「なあ、さっきの少佐は知り合いなんだよな?」

「ああ。そうだぞ。この町のほとんどの職業のお得意様が軍になるからな。俺だって子供の頃に店の手伝いで駐屯地に行ってたし、今となってもたまに行く。なんだかんだで付き合いも長いし、飲み屋や町で会えば普通に挨拶や雑談をする関係だ」

「私もそんな感じですね。少佐の奥さんが宿屋の女将さんの同級生なんですよ」

へー……

「なんか色々と近い町だな」

「町というか国だな。そういう人間関係の距離感が近い国なんだよ。だからイラドに行ってびっくりした」

「ねー」

そう言ってたな。

実際、森に行く東門でもニーナは軍の人と仲が良さそうだった。

「俺は合わんな」

馴染める自信がない。

「そんなことねーよ」

「ええ。むしろ、こっちの方が良いんじゃないですか? レスター先輩って自分から声をかけないだけで話しかけたら普通に話しますし、向こうから話しかけてくれる人が多い町の方が馴染みやすいと思いますよ」

あー、なるほど。

逆にそういう考え方もあるのか。

しかし、エルシィはなんでにやにやしているんだろう?