軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第081話 お仕事

「何だ? 明日ではダメな緊急か?」

「ちょっとな……実は軍から要請があった話なんだが、警備中の軍船が帰ってこなかったらしい。この雨で転覆か遭難でもしたのではと軍ではちょっと騒ぎがあったらしいんだ」

ふーん……風も波も強かったしな。

しかし、そんな中でも警備はするんだな。

さすがは重要な拠点と位置付けられているだけはある。

「過去形か?」

「ああ。船は無事に見つかった。近くの……近くって言ってもここから見える距離じゃないが、無人島に停泊しているのが見つかったんだよ」

ここから見えないってことは水平線の先ということになる。

高さにもよるが、数十キロは離れているな。

「船員は?」

「ケガをしている者もいるが、救護兵も向かっているし、そこは問題ない」

ふむふむ……

「何の仕事だ? 緊急性を感じないんだが……」

「仕事は船の修理だ。どうも船が壊れて浸水したことでその無人島に漂着したらしい。その状態で帰ってこられないから船の修理の依頼が来たんだよ。そこでお前達も手伝わないかという誘いだ」

そういう仕事ね。

俺達が舩の部材を作ってたからか。

「なんで俺達? お前、造船のプロだろ。それに同僚とかもいるだろうし、俺達を誘う理由は何だ?」

「1つはお前達が作った部材の評価がすごく高いことだ。親方が絶賛してたぜ」

あの店主、カルロのところに卸したわけか。

まあ、身内優先か。

「そりゃどうも」

「もう1つなんだが、これは軍の依頼になる。軍の依頼はかなり報酬が高いんだ。船の状況を見ないと何とも言えないが、軍ならかなりの報酬が見込める。お前達は店をやるために資金を集めているんだろ? ちょうどいいと思ってな」

あ、厚意で誘ってくれたわけだ。

「お前も行くのか?」

「俺とニーナも行く。こんな時間に来てしまったのは話を持ってきた軍の人に回答しないといけないからだ。軍もさっさとしたいから明日になったら別の職人に話を持っていく。だから先にやる意思があるかどうかの確認をしたくてな」

なるほど……

もう一仕事してから町を出ようと思っていたから渡りに船ではあるが……

「エルシィ、どう思う?」

「良いんじゃないでしょうか? せっかくですし、お手伝いしましょうよ」

エルシィは賛成か……

チラッとウェンディを見る。

すると、ウェンディが頷いた。

これはカルロの言葉に嘘がないということだ。

「わかった……カルロ、この話を進めてくれないか。お前が言うように資金を集めているからありがたい話だ」

「了解。じゃあ、明日、迎えに来るから8時には下にいてくれよ。詳細の話はその時に説明する」

8時ね。

ちょっと早いと思ってしまうが、イラドで働いていたころは普通の時間だ。

「わかった。下の受付な」

「ああ。じゃあ、俺達は帰る。こんな時間に悪かったな」

カルロとニーナが立ち上がる。

「いや、良い話だった」

「ありがとうございます」

エルシィも礼を言う。

「じゃあ、おやすみ」

「2人共、また明日ね」

2人はそう言って帰っていった。

「ウェンディ、問題ないな?」

2人がいなくなると、改めて、ウェンディに確認する。

「はい。カルロさんもニーナさんも悪い気のようなものは感じませんでした。善意でしたしね」

持つべきものは友ってことか。

「先輩、これがここでの最後の仕事ですかね?」

「そうだな。この仕事を終えたらルートなんかをチェックし、イパニーアに向かおう」

ポードでも思ったが、ちょっと名残惜しいと感じてしまう。

でもまあ、また来ればいいだけだ。

「よし、明日は早いし、準備をしたら風呂入って寝よう」

「はーい」

「海賊さんと遭遇しないかな……」

不吉なことを言うウェンディを無視して明日の準備をすると、順番に風呂に入り、この日は就寝した。

翌日、8時に集合ということなので早めに起きた俺達は朝食を食べ、着替える。

そして、すべての準備を終えたので1階に降りた。

受付の前にはすでにカルロとニーナがおり、女将さんと話をしていた。

「よう」

「おはよう」

2人が挨拶をしてくる。

こうやって並んでみると、やはりどこか似ている。

まあ、兄妹だから当たり前なんだけど。

「ああ」

「おはようございまーす」

俺達が挨拶を返すと、ウェンディがカウンターに降り立ち、女将さんを見上げながら手をもじもじさせる。

弁当を要求しているのだ。

「ちょっと待ってね」

ウェンディの仕草で察した女将さんは優しく微笑むと、奥の部屋に入った。

「カルロ、これからどこに行くんだ?」

「まずは西にある軍の駐屯地だな。そこで担当の人に話を聞く。それから軍船に乗って、例の無人島に行く流れになる」

「材料とかは?」

「ある程度は俺が持ってる。ただ木材は現地調達だな。木が多いらしいからそれで十分だろう」

なるほどね。

俺とカルロが予定を話していると、女将さんがバスケットを持って戻ってくる。

「はい、どうぞ」

「わーい」

女将さんが笑顔でバスケットをウェンディに渡す。

すると、ウェンディがバスケットを両手で持ちながらふよふよと浮いて、こちらにやってくる。

「お昼ご飯をもらいましたよー」

「お前、よく要求できるな……女将さん、申し訳ない」

ウチの食いしん坊が……

でも、安心してくれ。

多分、あなたの来世は良いとこの子に生まれると思う。

「いいの、いいの。余りものだしね。あ、カルロ君とニーナちゃんの分もあるから」

「おっ、悪いな」

「ありがとう」

できた人だわ。

「よし、じゃあ行くか」

「そうだな」

俺達は宿屋を出ると、坂を降りていった。