軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第065話 坂が……

「確かに夕方はすごそうだが、そう何度も来られるところじゃないな」

かなり疲れた。

少なくとも、今日はもう登れない。

「まあ、そうですね。ここでちょっと説明します。町の東に農業地帯があると言いましたね? あっちになります」

ニーナがそう言って、右の方を指差すが、岩山があって見えなかった。

「下から行くのか?」

「そうなりますね。ただ、あっち方面は軍の基地もありますし、近づかない方が良いです」

そもそも農業地帯に用はないから行く気はないけどな。

「この町は農業従事者も多いのか?」

「いえ、この町は職人や船乗りの町です。あっち方面にはいくつもの農村があるんです。もちろん、人手はいくらあってもいいので常時、移住民を募集しています。ただ、店を開いても手伝いやら何やらで招集される可能性大なのでレスター先輩やエルシィにはおすすめしません」

嫌だな。

町内会ってやつだ。

「この国はあまり店を開くのに向いてないかもな」

「そうかもしれませんね。主要都市で新たに店を開くのは難しいです。この町にしても土地が余っていませんからね。余っているのは農村です。ですが、レスター先輩やエルシィはやめた方が良いでしょう。あと風土的に明るい人が多いんですが、逆を言えば距離感がおかしい人も多いです。私はイラドに行って冷たい人が多いなって思いましたが、帰ってみると、この国の人ってすごい距離の詰め方をしてくる人が多いなって思いました。主に男女間の話です」

そうなのか……

「独占欲の強いレスターさんは向いてないかもしれませんね」

「愛だよ、愛」

相変わらず、この話題になると、ウェンディとエルシィは楽しそうだ。

「ニーナ、森は西だったな? あっちか?」

左の方を指差す。

こちらも岩山があって先は見えない。

「そうですね。森の方も下から行けます。いつ行きます?」

うーん……

「明日か? 今日はさすがにないし」

時刻はすでに15時を過ぎている。

それに今から森まで歩くのはしんどい。

「わかりました。じゃあ、明日ですね」

「頼むわ」

俺達は予定を決めた後も眺めを見続ける。

風が気持ちいいし、何隻も船が行き来しており、いつまで見ても飽きない。

この風景をいつまでも見たいと思っていたが、徐々に人が増えだした。

「これから人が増えていく感じ?」

エルシィがニーナに聞く。

「そうね。夕方は特に人気だし。どうする? 夕方までいる? これから明日の相談をして、宿屋に案内しようかと思ってたけど」

ん? 相談?

「相談って?」

「たいしたことじゃないわ。おじさんも言っていたけど、オイルや防腐剤をどうするかね。ウチで買っても良いし、材料を買って夜にでも自分達で錬成しても良い」

それか……

「お値段は?」

「木1本分で考えると、オイルは5000ゼル、防腐剤は1万ゼルってところ。おじさんが木1本の木材を20万ゼルで買い取るって言ってたけど、加工せずに木だけを納めるなら7万ゼルってところかな?」

明らかに加工した方が良いな。

「オイルと防腐剤の材料は?」

「オイルはそういう木の実からオイルを抽出するだけ。木の実は1000ゼルってところ。防腐剤は銅とかクロムから錬成すればいいよ。レシピ本を貸してあげる。あ、銅もクロムもそんなに量がいらないからインゴットを1つ買っておけばいいかな。5000ゼルで売ってるから」

材料も安いな。

「先輩、どうします?」

エルシィが聞いてくる。

「せっかくだし、作ろうじゃないか。木の加工はできていて損はないし、これも勉強だ」

「それもそうですね」

「本当に真面目な人達ですね……」

ウェンディがちょっと呆れる。

「そういうのが好きで錬金術師になったんだよ。ニーナちゃん、材料を買って、夜のうちに作るね」

「わかった。それでどうする? 帰る? まだいる?」

「うーん……夕方の風景も見たいけど、またにするよ。ちょっと疲れたし、物を作らないといけないからね」

確かにそうだな。

まあ、すぐにこの町を出るわけでもないし、また来ればいい。

「じゃあ、ウチに戻りましょうか。ちなみにだけど、宿屋は超高級と普通があるけど、どっちがいい?」

「いくら?」

「超高級は一泊5万ゼル。普通は1万ゼル。どっちも朝夕の食事付き」

超高級高いな……

「超高級ってそんなに高いんだ……」

「観光地でもあり、避暑地でもあるからね。まあ、普通でいいよね?」

「うん」

「そうだな」

さすがに5万ゼルはちょっとな……

金を稼ごうとしているのに出費が多すぎる。

「じゃあ、ウチに寄ったらそこに案内するよ。安心して。同じ階層だから上り下りはないから」

それは良かった。

俺達はこの場をあとにすると、風景を見ながら坂を降りていく。

さすがに上りより下りの方が楽なので息が切れることはない。

そして、すいすいと下りていき、ニーナの店があった階層まで戻ってきた。

「なんか足が痛いですね」

「そうだな……」

やっぱり坂道は辛い。

「下りは疲れないけど、足にダメージがいくからね。寝る前でもお風呂でもいいからマッサージして、ポーションでも飲んだ方が良いよ」

「そうするー」

エリクサーでも飲むか。

「じゃあ、こっちね」

俺達は右に曲がり、ニーナの店に向かった。