軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第064話 苦労の果てに

「店主、加工というのは具体的に何だ?」

ウェンディを見て、固まっているおじさんに聞く。

「あ、ああ……乾燥と防腐処理だ。乾燥はそのままで切ったばかりの木は水分を多く含むからそれを除去する必要がある。防腐処理は専用のオイルや防腐剤の塗布だな。ウチでも売ってるが、錬金術師ならニーナの店で売っている材料から錬成した方が儲かる。そうやって処理した木材をウチが買い取るんだ。質や大きさにもよるが、木1本で20万ゼルと思ってくれていい」

ふむ……防腐処理は問題ないな。

似たようなものを作ったことがあるし、ニーナに聞けばレシピもわかるだろう。

「ウェンディ、乾燥は?」

乾燥はどう考えても魔法だろう。

自然乾燥なんて何ヶ月かかるかわからん。

「そういう魔法もあります。2種類あって、攻撃魔法と便利な生活魔法ですね」

攻撃魔法は聞きたくないな……

ミイラにでもなりそうだ。

「便利な方で良いな……店主、根本的なことを聞くんだが、どうやって木を町まで持って帰るんだ? 馬車か何かか?」

俺、馬車なんか動かしたことないぞ。

当然、エルシィも……あ、でも、エルシィは田舎の村出身だからあるかも。

「今時、馬車なんか使わねーよ。そういうのは全部、魔法のカバンだ」

魔法のカバン……まあ、今の時代、物の運搬はそれか。

「俺達も持っているが、木を収納できるほどの容量はないぞ」

「いや、個人で持っているのがすげーよ」

宮廷錬金術師は支給されるからな。

そのまま持ち逃げしたやつだけど。

「たまたまな。でも、どうするんだ?」

「そりゃウチが貸し出すんだよ」

魔法のカバンはものすごく貴重で高価なものなんだがな。

「いいのか? 持ち逃げした方が儲かるぞ?」

「当たり前だが、はいどうぞとは渡さねーよ。ウチの若い者に持たせて一緒に行ってもらう。もしくは、加工が終わったら呼べばいい」

そういうシステムなわけね。

「あれでしたら私が同行しても良いですよ。森に行くなら材料の採取にもなりますからね」

ニーナが立候補する。

「あー、それでもいいな。どうせだし、案内してやれよ」

カルロも親父さんもこのおじさんも案内してやれよって言う。

なんか血を感じるな。

「レスター先輩、どうですか?」

ニーナが聞いてきたのでエルシィを見ると、無言で頷いた。

「じゃあ、そうしようかな。こういうのも経験だし、やってみようと思う」

将来、店を出す時にこういう経験は必ず役に立つはずだ。

ポードでのイレナと一緒にした商売も勉強になったし。

「助かるぜ。木材なんかいくらあっても足りないからな。ニーナ、準備をしておくから夕方にでも取りに来てくれ」

「わかった。じゃあ、2人共、次に行こうか」

「ああ」

「わかったー」

俺達はニーナと一緒に店を出る。

その際にウェンディがおじさんに手を振ったのだが、おじさんはぽかんとした顔で手を振り返していた。

「ニーナ、次はどこだ?」

「上ですね。頑張りましょう」

ニーナがそう言って両方のこぶしを握ると、俺とエルシィが同時に上り坂を見る。

この位置はまだ三分の一くらいであり、上はまだまだある。

「エスカレーターとかないのか?」

「何ですか、それ?」

あるわけないわな。

「いや、なんでもない。行くか」

「はい。こっちです」

俺達はこの場をあとにし、坂道を登っていく。

ニーナは慣れているのかすいすい登っていっているのだが、俺とエルシィは若干、遅れだした。

「この町に住んだら体力が付きそうですね」

「もしくは、引きこもりになるかだな」

「あ、そっちっぽいです」

だよな……

「大丈夫です?」

待ってくれているニーナが心配そうに聞いてくる。

「お前はすごいな」

「ニーナちゃん、細いのにどこにそんな力があるの?」

ホント、ホント。

「慣れ? 坂道は登り方があるんだよ。軽く前かがみで歩幅を小さくする感じ。それでだいぶ違うよ」

ほうほう。

俺達は言われたとおりに坂を登っていく。

「何か変わったか?」

「全然」

だよな?

「すぐにはわからないよ。でも、やるのとやらないとでは今日の夜と明日の朝が違うからやっておいた方が良いよ。あと、寝る前にマッサージを忘れないでね」

「「はーい」」

俺達はその後も休憩しながら登っていく。

そして、ようやく頂上の広場に着いた際には息が切れていた。

「あー……疲れた」

「せんぱーい……帰りはお姫様抱っこしてー」

「お前を傷つけたくない」

「落とさないでくださいよ……」

そのまま坂道を転がっていき、大惨事になる気がする。

「お疲れ様。2人がそんなになってまで見せたかったのはこの風景。後ろを見てごらん」

ニーナに言われて後ろを振り向くと、そこには一面の海と町並みが一望できた。

中腹で見た時よりも圧倒される光景であり、海の偉大さをこれまでかというくらいに感じることができた。

「「「おー……」」」

俺達は声を揃えてその風景を見ていく。

疲れが消えるように感じるほどの絶景だ。

「ウチの町の最大の観光スポットね。たくさんの船が通るし、いつまでも見ていられると評判。特に夕方が綺麗でものすごくロマンチックになる。色々あって、ここはキス禁止になっている」

ニーナがそう言って指差した先には【公序良俗の維持のため、公共の場における接触的愛情表現はご遠慮いただきますようお願い申し上げます】と書かれた看板があった。

「何があったんだ……?」

絶対にキスで止まってないだろ。

「しっ、聞かない方が良いです」

それもそうか。